第二十二話 レイ先生に怒られました。
「遅いぞ、西洋倶楽部!十分も遅刻じゃないか!」
怒られたー!
まさかレイ先生、事件のことを知らないんじゃ・・・。
「先生!僕たち、事件に巻き込まれてたんですよ!麻衣ちゃんは脱獄犯に人質にされてしまうし、大変だったんですから!」
僕の話を聞いてざわつくA組の生徒たち。
そんなことが僕たちの身に起こっていたなんて誰も知らなかったのだろう。
「そんなことは知っている!それを込みでの時間配分だろ!それを怠ったお前たちが悪い!」
でも先生は知ってたにも関わらず怒ってくるー!
それに、なんか僕たちが悪いみたいな感じになってるし!
「脱獄犯の気持ちにもなってみろ!こんな、なんの武装もしていないただの学生が、ヘルゲートに毎年この時期に来るなら、狙って当然だろ!みんなそれを想定してプランを立てたよな?」
レイ先生は、既に集合していたA組の生徒に聞いた。
「想定してたよな?」
黙り込む生徒たち。
「想定してたよ・・・な!」
レイ先生のあまりのすごみに怖気づいた生徒たちは、パラパラと頷き始める。
いやいや、想定できるわけないでしょ!
「ほら、見てみろ!全員想定済みじゃないか!」
あんたが無理矢理頷かせたんだろ!
「なんだ、山田洋一。文句でもあるのか?」
「僕たち、あんなひどい目にあっ」
「まあ、言い訳は聞かんがな」
最後まで喋らせろ!
「とにかく、遅刻は遅刻だ。実際、みんなに迷惑をかけている。それに対して反省し、一週間の学院内の掃除でもって許してやるから、ありがたく思え」
「納得がいきません・・・」
「なんだと?」
「ヨイチくん、もうやめようよ。先生、うちが捕まってしまったのが悪かったんです。すいませんでした」
一番大変な思いをした麻衣ちゃんが、先生に謝った。
「真嶋麻衣はよく分かってるじゃないか。それに比べて山田洋一、貴様は何もできなかった上に口ごたえまでするつもりか?」
先生の言っていることは間違ってはいない。
実際、僕は何もできなかった。
「そうだぞ洋一、もうやめよう」
「レイ先生に殺されないで済んでいるだけ良いではありませんか」
あの事件を共にしたみんなにこれだけ言われてしまっては引き下がらないわけにはいかない。
「先生・・・僕が悪かったです。すいませんでした」
「理解したならそれでいい。さ、帰るぞ」
バスに乗り込んでいくレイ先生と生徒たち。
全くもって納得はできなかったが、しょうがないとしか言い様がない。
色々あった僕のヘルゲート見学は、こんな感じで終わった。