第十八話 ヘルゲートはすごいところでした。
「なんだ・・・ここ・・・」
「まるで・・・」
「うちが絵本で見た・・・」
「きゃ・・・きゃはっ」
「地獄・・・ですね」
見学フロアは完全にガラス張りになっており、作業場の中の音や声は聞こえない。
しかし、表情ははっきりと確認することができた。
そして、工場内の姿も。
「外見が突飛で、玄関が豪華だっただけに、このフロアがより異様に見える・・・」
「わたくしが想像していたヘルゲートの姿よりも数倍ひどいです」
「うち・・・こんなん耐えられへん」
「力自慢のおれでも、一週間生き残れる気がしないぞ・・・」
「麻衣、スミレ怖い、きゃはっ」
みんなが口を揃えて各々の視点から見た過酷さを言葉で表現した。
「あの真ん中にあるのが天使結晶を生成する機械かな」
僕たちは今、上から作業を見下ろしている。
そのため、作業ラインが一望できるようになっているのだ。
「おそらくはそうだと思います。あちらから天使結晶が出てきていますので」
その機械は、表現するならば悪魔。
大きな口を開けて、魂を貪り続けている悪魔ように見えた。
「あの機械に魂を入れれば、勝手に生成されていくようです。中身は完全にブラックボックスですね」
「そうみたいだね」
あの機械の仕組みは全くもって分からない。
しかし、少なくとも機械の生成は魔女見習いの仕事なのだ。
ということは、あれを作った魔女見習いがいる。
「このフロアで働かされている人たちはきっと、現世で犯した罪以上の苦しみを与えられている」
「うちにもそう見える」
「これは・・・相当ひどい環境だ」
魂を運んでいる人が進む足元には、何人もの人が倒れている。
しかし、それに構うことなく、悪魔のような機械に向けて最短距離で進んでいく人の姿がそこにはあった。
「そして、あの天使・・・」
「スミレは、あれが怖いの、きゃはっ」
あれは一体なんなんだ。
倒れた人たちを回収していくあの・・・天使。
羽が生えていて、ラッパを持っている。
僕が想像していた通りの天使がそこにいるのだから、それを天使と表現する以外に表現の仕方が見つからない。
満面の笑みで倒れた人たちを回収していくので、ただただ気味が悪い。
それに、そのような状況があちこちで広がっている。
これがヘルゲートの本来の姿ということだ。