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第十五話 ヘルゲートに着きました。


「みんな、起きて」


 どれだけの時間バスに揺られていたのか分からない。

 僕は、何度もみんなの寝顔を見て寝そうになったが、麻衣ちゃんから託された係を全うするために全力で目を開け続けた。

 目を閉じれば死ぬ、と自分を奮い立たせて。

 後から考えれば、別にレイ先生が起こしてくれるのでそこまで頑張らなくてもよかったのかもしれない。

 しかし、僕は真面目なのだ。

 責任を果たすために、僕はバスの車内で喋っていたら消費していたであろう体力以上の体力を使って起き続けた。

 おかげでフラフラだ。


「ん・・・あれ?もう着いたの?」

「はわわ・・・おはよう・・・きゃはっ」

「む・・・ん・・・洋一、ありがとう」


 みんなをユサユサしながらフラフラする僕。


「雫、起きろよ」


 最後の力を振り絞って僕は雫をユサユサしようとした。


「ヨイチさん、わたくしは起きています。その、棹をシゴいた後の汚れた手でわたくしに触らないでください」


 雫は、ヘルゲートに着いたのでいつもの調子を取り戻していた。

 早速、非常に頭にくる発言をしてきたが、眠たいので言葉を返せない。

 ・・・少し寝かせてください。


「早く降りろー!さっさとわたしについて来い!」


 なんて思っていてもレイ先生は容赦がない。

 僕の眠気など構わず、バスからすぐ降りてくるようにと指示を出していた。

 まあ、指示というか、もはや命令ですが。


「んーん、思ってたより早かったね!」

「もうちょっと寝られると思ってたのにねー、きゃはっ」


 バスから降りた麻衣ちゃんとスミレちゃんは、伸びをしながら話をしていた。

 僕にとってはかなり長い時間だったのだが・・・。

 スヤスヤ眠りについていたみんなには全くもって苦ではなかったらしい。

 一人眠ることを許されなかった僕は、ムスッとした顔をしながらレイ先生の進む方向についていった。


「ヨイチさん、顔が歪んでますよ」

「歪んでるんじゃない、歪ませてるんだ」


 僕の不自然な表情に雫が気づく。


「なぜ歪ませる必要があるのでしょうか?」

「もう!いいよ!」


 しかし、僕の不満には気づいてくれそうになかったので、通常の顔に戻すことにした。


「あっ、戻った」

「戻った」

「戻った、きゃはっ」

「戻りましたね」


 ・・・みんな、顔の変化には気づいてたのですね。

 それなのに、僕の不満には気づいてくれないあたり、相変わらずでホッとします。


「ヨイチくんの顔も戻ったことやし、めでたしめでたしやね!」


 その発言、悪者に顔を濡らされて力が出なくなったヒーローが、顔を取り替えて元気百倍になったみたいな言い方ですよね。

 ・・・ヨイチパーンチ。


「諸君、ここがヘルゲートだ。ここからは班行動にするから、各班時間までに帰ってくるように。遅刻したら置いて帰るからなー」


 急にあんぱんが恋しくなってきていた僕であったが、先生の言葉と目の前の禍々しさに意識はすっかり引き戻されていた。

 目の前の世界は、完全にヘブンズシティとは別次元の世界だった。

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