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異世界の有資格者  作者: ごまだんご
1章 ドラッグストアと街の騒動
9/16

9話 艶髪鑑定士 1


 Side リュート


 「さて、それじゃお腹も膨れたし午後の営業始めるか。」


 入り口に【OPEN】の札を吊るしてわが店の看板娘達を振り返ると「はーっい!」と元気に返事をするバレッタ、コクコクと頷くレンと返事が返ってくる。


 二人の頭をひと撫でしてから、売場を二人に任せて午前中に売れた薬の補充をするために裏にある調合室に向かう。


 調合室の中には色とりどりの薬草や何かを粉末状にしたものをいれている小瓶。フラスコやすり鉢などが所狭しと置いてある。


 「んー、今日は腹痛薬がよく出たし多めに作っておくか。」


 そういってリュートは部屋の中を物色し、紫色のギザギザな葉っぱやレモンのような果物、すり鉢を持ってくると、部屋の隅にある小さな引き出しに向かう。


 1番上の棚を開けると、皆さんも1度は見たことがあるであろう、【ラッパのマークの~~~】や【胃痛、胸焼けに~~~】などのキャッチコピーが有名な市販の医薬品がしまってあった。


 リュートはその中から【ラッパのマークの~~~】を取りだし数粒をすり鉢にいれゴリゴリと砕いていく。糖衣錠タイプではないため独特の匂いが充満しているが我慢我慢。


 だいぶ砕けたら用意していた葉っぱや果物を入れてさらに砕いていく。


 次第に爽やかな香りに変わっていくと急にすり鉢が光だす。


 リュートは慌てた様子もなく「クリエイト」と唱えると光が収まり、すり鉢の中には30錠の錠剤が出来上がっていた。


 それを3錠づつ包装して10個の腹痛薬を造ると店内へと向かい、売り場に並べていく。


 「次は鎮痛薬でも造るか。」


 売り場を見渡して在庫が少なくなっているものをリストにまとめていると。


 「こんにちは、リュートさん。」


 声をかけてきたのは、黒髪パッツンおかっぱヘアーの笑顔の可愛らしい少女。ロングスカートのメイド服を着た年の頃は二十歳くらいで、うちの店の常連である【テリア・カーティス】さんだ。


 「いらっしゃい、テリアさん。今日は何をお求めですか?」


 「えぇ、今日は入浴セットを買いにきたのと」


 「貴様の秘密を暴きにきたのじゃ!」


 テリアさんとの会話に横から割り込んできて物騒な事をのたまったのは、テリアさんの足下で腕を組んでふんぞり返っている5歳児。


 「おぉ、今日はイリスも来てたのか。」


 「まったく。わらわを呼び捨てにするなどお主くらいのものだぞ、無礼者め。って、こら持ち上げるでない!頭をなでるな!抱きしめるなぁ!!」


 俺の腕の中でバタバタしている5歳児は【イリス・フィアメント】。名前からもわかるようにフィアメント王国の第8位王位継承権を持つお姫様だ。


 「うぅ・・・」


 一通り暴れても抱きしめるのをやめないと、観念したイリスもキュッと抱きついてくる。その顔は恥ずかしさに赤くなりながらも笑顔になっている。


 甘えん坊の癖に高圧的な態度をよくとるイリスには、強気にでたほうがいいと最近知ったのだ。


 「王族が頻繁にこんなところに来ていいのか?」


 「ふん、此処はわらわの別宅じゃ。いつきてもわらわの勝手じゃ。」


 フィアメント王国は中心にある王都とそこを囲むように8つの地域に別れており、王都には王と第2位王位継承権の長女、北方との国境地域には戦上手で有名な第3位の次男。大陸の中心に近い東側には知将として期待される第1位の長男と王族が配属されている。


 第8王位継承権をもつイリスが配属されたのは国の南南西に当たる【ヘヴィドー地域】。南部の豊かな自然と西部の技術力が合わさって医薬品や化粧品の製造販売が主な産業である。


 「ほぉ、じゃあ今日は泊まっていくか?夜も抱きしめながら寝てやるぞ。」


 「んなぁ!?貴様はなんというハレンチなことを!」


 「ほぇ?私もレンちゃんも毎日ご主人様と一緒に寝てるよ。」


 いつの間にかバレッタが俺の股の間から顔をニョキっとだしていた。こらこら変な所に潜るんじゃありません。


 「な、なんと羨まし、い、いや、お主らももう少し羞じらいを持つのじゃ!」


 俺に抱かれたままのイリスと、俺の股の間に潜ったままのバレッタがキャーキャーワーワーと騒ぎ出す。


 テリアさんは、楽しそうにイリスを見守っている。本当にテリアさんはイリスの事が好きなんだなと再認識する。


 こんな平和な時間にふと思った。


 イリスはこんなにも愛らしいのに、こいつの姉はあんなにクソだったんだろうと。


 あれは、この世界に初めて落ちてきた時のこと・・・。





 バシンッ!!


 ビクッ!?


 回想に入ろうとしたところで店のカウンターから大きな音が響いた。


 カウンターにはお客さんによる長蛇の列が出来ており、涙眼のレンが1人で対応していた。


 大きな音はレンがカウンターに帳簿を叩きつけた音だったようだ。


 「おにぃも、バレッタちゃんも・・・、ちゃんと働いて(ギンッ)」


 物凄い眼力で睨まれました。


 「「はい、ごめんなさい。」」





 

 

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