4話 ヒーローポージングライセンス
衝撃&笑撃の藁人形木っ端微塵映像から早3ヶ月。
あの映像がCGだったのか本物だったかの真偽については一切わからなかったが、結論からいえば試験は合格し、先程書類とカードが送られてきた。
試験の内容についてはあまり思い出したくない。3級は普通の筆記だったのだが2級は完全なる羞恥プレイだった。
よく晴れたの休日の正午。駅前の広場では、カップルや家族連れなどで混雑を見せていた。その広場には誰が立てたのか大きなモアイ像が鎮座している。そのモアイ像の頭の上には卵形のカメラを装着したノートパソコンが置いてあり、モアイ像の前には青年、神高龍斗がたっている。
龍斗は目を瞑り集中したような感じで右手をモアイ像に向けている。周りで待ち合わせをしていたりタバコを吸っている人々が何とはなしに龍斗を見ているが龍斗は微動だにしない。
3分程経ち、周りも全然動かない龍斗から興味を外し始めた頃に、唐突に龍斗が右手を空へと高々と挙げた。
「青の理を持って我が命じる!」
右足を引き、右手を腰横に勢いよく戻す。
「威厳高き氷の牙狼よ、優雅に舞う嵐の妖精よ!」
左手で右手の拳を包むように握る。
「縛れる息吹きとなりかのものの時を止めろ!」
右手で左手の手のひらを撃ち抜くように右ストレートを放つ。
「フィンべリオ・エイジ!!」
青属性最強の呪文は暴れる吹雪となって目の前のモアイ像を凍らせる・・・訳もなかった。何も右ストレートから出てなかったし。
はっと、我に帰った龍斗は周りからの変人を見る目に耐え兼ねパソコンを持って逃げ出した。
龍斗は元来目立つのは得意ではない。ゲームや読書が大好きだし、ひっそりと日陰に隠れているほうが好きである。そんな彼がこんな蛮勇を発揮できたのは1つの黒歴史的な資格によるものだ。
昨年、とあるヒーロー戦隊物にハマった龍斗は登場時のビシッと決めるポーズに興味を持った。(○○レンジャー ○○って名乗るシーンね。)
ちょうどイケメンや美少女の出演者で人気をはくしており、放送しているテレビ局がそれに乗っかったのだろう、【ヒーローポージングライセンス】なる資格を発行した。
受験内容は歴代のヒーローの決めポーズを10連発(セリフ付き)で某遊園地の劇場にて披露させられるというものであったのだが、マイブームとは恐ろしいもので、羞恥心を上回る資格取得への渇望が強くたくさんの練習量をこなした結果、一度演技を始めると終わるまでは周りにどれだけ近くに人がいようが交通事故がおきようが爆発がおきようが止まらないという体質が身に付いてしまったのだ。(ちねみにこの資格は予算の都合で試験が最初の一回しか開催されず、龍斗を含む4人しか資格者がいないレア資格である。)
ヒーローポージングライセンスのお陰で試験を突破できた龍斗の手には1通の手紙。
差出人は【エリカ】と書かれ、内容は秋葉原で【異世界冒険者1級】の試験が来週開催されるので都合が付けば参加しませんかということであった。
もちろん資格フリークの龍斗がせっかくのチャンスを逃すはずもなく、参加の旨を返信すると準備に取り掛かった。
「って、この回誰の視点で話してるの!?俺のセリフが全然無いんだけど(泣)」(by龍斗)
次回はやっと異世界です。