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「えっ、この像に?」
「いや、実はわからんのだが、しかし、我が何度やっても戻せんし・・・。」
「それは、アンタの力不足なんじゃ・・・?」
「や、やはり、そ、そうなのか?」
「いや、質問返されても、アンタ、今日あったばっかりだし、そんな元通りの魔法なんて、産まれてこのかた、見たことないし・・・」
「そ、そうだわな・・・普通、そうだわな~。こんなうちゅうの ほうそくが みだれる ような事、見たこと無いわな~。ハ、ハハ」
「じゃぁ、何で、この木像に封印されたと思ったの?」
「そりゃ、アレだ。相手が木像持ってたからだ。」
「石像の間違い・・・とかは?」
「ん~、それはない。何故なら・・・」
男はそこまで言うとブツブツ念じながら呪文を唱えだした。
「な、何よ!イキナリブツブツ言い出して!」
若干気味悪がる朱音を余所に、ブツブツ呪文を唱える男。
そして、静かに「祓!」と唱えると、さっきまでお茶を飲んでいた湯飲みから光りがあふれ出し、光柱となり、ボウッと映像が映し出された。
「な、何をしたの?」
「いや、単に封印された当時の記憶を投影しただけだ。ほら、こやつが俺を封印した奴だよ。」
投影された映像で二人の男が対峙している。一人は目の前にいる男。もう一人は、時代錯誤の甲冑を着た、鎧武者だった。
「えーっと、アンタ、ホントに神様だったのね・・・」
「さっきから、そうだって言っているではないか。で、コヤツ、このいけ好けないクソ餓鬼がホラ、手に持ってるものを見てくれ。コイツをどう思う?」
男が指を指した先には今、手元で真っ二つに折れていた木像があった。
「すごく・・・木像です・・・」
「だろ?ほれみい。」
男は自分は間違っていなかった!とでも言うように満足気に語った。
あまりに満足気に言う男に、少しムッとした話し方で
「じ、じゃあ、その木像、作ってくれた人に頼めばいいじゃない!」
「その手があったか!」
「そうよ!それで万々歳!良かったわね」
朱音は、やっと開放される。意味の分からない男に付き合わされるのは御免だと、少し安堵する
「で、いつの記憶なの?これ。」
「たったの千年前だが。」
たったと言う数字ではないだろ、と思いながらも、話を進める朱音。
「じゃあ、千年前に行く方法は?」
「なにを言っておる? 我にこやつを持って過去に戻る方法なんてある訳ないだろうに。」
当然のようにそう答える赤穂寺。
「へ?んじゃ、何を根拠に過去に戻れると?
策なしにも拘らず、自信に満溢れた表情をする男に、朱音は質問を投げかけた。
「全く、これだからゆとりは。何を言っておる?この時代には、『猫型ロボット』が『たいむましん』とやらを出してくれるんじゃないのかの?」
頓珍漢な事を言い出した、この男にとうとう、朱音の中のツッコミ遺伝子が爆発した。
「アンタねぇ・・・まじめに言ってんの」
「我はいつも大真面目だが?」
「あるわけないでしょ?」
「バカな・・・万国共通、机の引き出しを開いたら、移動空間に繋がっているのではないのか?」
「・・・んなもんあるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」