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「良くないってもんじゃない。そもそも入らない小さな風船に蛇口から全開で水を入れるような状態だからな。人知を超えた力で暴れ狂う。それはもう、目も当てられない状態で。そうなると・・・下手をすると町一つがなくなる。古代よりそうなった妖魔を討伐、封印する為に、数多くの人が問う抜群に駆り出されたものなのだ。無論人だけじゃなく、他の妖魔、龍聖も・・・。末路は・・・言わなくてもわかると思うが・・・目もあてられない状態だな。だから、幼い妖魔は親妖魔から願いを叶えるのを禁じられている。代わりに、親が子妖魔でも出来ると思った易しい夢を与え、それをかなえさせることで妖魔の夢を叶える力叶力を養っていく。」
ひと個人の夢を叶える為に自分の身一つを滅ぼす、なんて切ない生き物なんだろうと、朱音は思う。
「で、最後の3パターンの場合なんだが、もし、願いがベンツが欲しいという願いに対して予算を提示しなかった場合、どうなる?」
「そんなの、予算を聞くしかないじゃない。」
「そうだな、人ならそうなる。だが妖魔の場合は異なる。妖魔のさじ加減で決まる事になる。」
「勝手に決めてしまうってこと?」
「そういう風にも取れるが、どちらかと言うと上限が取っぱらわれると行った方がいいかな。そもそも、対価なんざ、妖魔が勝手に奪っていくのだから、対価の支払いの取立てなんてない。だからその妖魔の性格、気分によって変わってくる事になる。その妖魔の限界を超えたレベルでやろうとする奴もいれば、めんどくさがってミニカーレベルでしか叶えて貰えない事もある。親切にも心を読んで、その通りの願いをかなえる奴もいれば、その妖魔がやりたいように湯水の如く贄を奪っていく奴もいる。様々だ。よって、願いを要求する側からすると非常に危険な行為であると言う事はわかって貰えたかな?」
「うん。アンタの理屈は何となくわかった。」
「でだ、こっからが本題。今回のケースなのだが、まず15~20人位が、願いを既に叶えているのだが、全員ケース3のタイプで願いをかなえている。となると、願いをかなえる側に深刻な被害が出てもおかしくない。さらに、まだ幼い猫又の夕顔が叶えているという点でも、いつキャパシティを超える願いを叶えてもおかしくない。さらに、かなえている人数が現在も増え続けている、と言う事は、夕顔のキャパシティを後数人で超える事になる、若しくは既に超えている危険性がある。」
「それはどういうこと?既に超えてるって・・・」
「単純なこった。人間でも回転寿司一皿だったら楽々食べる事ができても、何十皿と食べる事になると、下手したらリバースしてしまうだろ? アレと一緒。夕顔自体、一月に5人も願いをかなえたら満腹になるはずなんだ。それを既に3~4倍叶えている。これはもういつゲロっちまってもおかしくない量な訳だ。なら・・・いつ暴走をしてもおかしくない。恐らく、既に立っているっだけでフラフラな状態の筈だ。だからいち早く保護してやらないと、人、妖魔、どちらにも被害が出てしまうに違いない。」
本当は、もう一つ、何をそんなにあせって願いを叶えようとしているのか、という疑問もあるのだが。これは言わないでおこうと赤穂寺は言葉を飲み込んだ。なぜなら、下手したら夕顔の後ろに何かしらわからない黒幕がいる可能性が出てきてしまうからだ。まずは夕顔の保護。これを先決しなければならない。」
「ちなみに、さ。赤穂寺。その夕顔って子、捕まえたら、みんな、元に戻るの?」
「それはない。起こってしまった事を元に戻すことはほぼ不可能だ。コーヒーにミルクを入れてカフェオレを作る事ができても、カフェオレから牛乳とコーヒーを分ける事がほぼ不可能なのと同じようにな。もし苦くしたかったら、更にコーヒーを注ぎ足す事は出来るし、薄くしたかったらミルクを入れることは出来るが、それは濃い味のカフェオレ、薄い味のカフェオレ、その差でしかない。どちみちカフェオレなんだよ。だから、現在ギクシャクしているであろう人間関係も元には戻らんが、本人たちの努力しだいでそれ以上にもそれ以下にもなる。だから、過去を変えようとするな。どうせなら未来を変えようとしろ。」




