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 翌日の放課後、珠希の友達に猫の話を聞きにファミレスの前で待っていると、ふと、朱音にゾクと迫る視線を感じた。しかし、辺りを見ても誰も居ない。

「ん?何?」

まさか・・・ストーカー?と、身を構える朱音。こういう時の直感は如何せん働くものがある。

「気のせい・・・か。」

時に自意識過剰なのかと自分でも思えてしまうが、それ位しておかないと、自分の身なんぞ、守れないものだ、と親達は言う。

だが、それにしても少し、自分に力が入りすぎているのではないか、こういう時こそリラックスだ。リラックスリラックス。

「あ、おーい、アッカネェ、待ったぁ?」

珠希が元気な声に呼びかけられ、ハッと自分の世界から戻る。横には大人しそうな女の子を連れていた。

「え、あっ、ううん、今来たとこ。」

「よかったぁ。じゃ、一応紹介するね、こっちは二組のアオイちゃん。新聞部の部長やってて、例のヤツの事詳しいんだよぉ!こっちはたまのクラスメイトアカネちゃん。」

「よろしく、アオイちゃん」

「宜しく。最近猫伝説、叶えてる人多いから、ちょっとでも力になれたらと思って。」

「えっ、増えてるの?」

「まーまーお二人さん、話は中に入ってから。ささ、入って入って!!」

 珠希に押されるがまま、ファミレスに入る二人。そして、何名様ですか?と結構イケメンのウェイターに案内されるがままに窓際の席に座り、「では、ごゆっくり」と立ち去るウェイター。

「えっと、じゃぁなんか注文する?」

「じゃぁ、たまは、クリームたっぷりチョコブラウニーかな?」

「私はビターショコラで。」

「じゃ、あたしは、ティラミスで。じゃ珠希、店員呼ぶからボタン押して」

ほーいといいながら珠希はボタンを押す.まもなく聞き覚えのある声のウェイターが注文を取りにきた。

「ご注文をお聞きしますが」

「クリームたっぷりチョコブラウニーと、ビターショコラ、ティラミスで」

「では繰り返します。宇治たっぷり宇治金時に、ビター宇治金時、宇治金時、以上でよろしかったでしょうか?」

「ちょ、まてぃ!一つも合ってねぇだろうが!それに宇治たっぷりってどういうことだよオイ!」

 と猛烈な突っ込みを入れた先には・・・

「あ、あっ、赤穂寺ぃ!!」

「よっ!」

 (ニート)がいた。

「『よっ!』じゃないわよ!アンタ、なんでここにいんのよ!」

「いやー、折角娑婆に出たんだ。この夏コミケに行くための軍資金を貯めないと、と主ってな。ながもんのフィギュア買いたいし、薄い本も結構欲しいんで。」

「ハ、ハハ。左様ですか。とりあえず、後で父さんに報告しとくから。」

「ちょ、ちょいと。そいつは勘弁してくだせぇ。お代官様ァァ」

「えぇい、だまれだまれぃ、勘弁して欲しくば、今すぐこの場をたちされぃ」

赤穂寺は「ハハァ!」と言いながら、少し寂しそうな背中でトボトボと立ち去る。

そして、代わりのウェイターが注文を取りに来て、無事、頼んでいた甘菓子が出てきた。

「さっきの人、アカネさんの知り合い?」

「ま、まぁ、そんなとこかな、あは、あはは。」

顔を引きつらせながら苦笑いで答える。後でコロス、そう心に誓うのは場他別として。

そして、他愛ない世間話を長々と話す。学校の事、ファッションの事、友達の恋愛の事。ここに男性が居たら半泣きになるであろう事。

そのような会話を行ったところで、本題を切り出した。

「ところで、幸せの猫の話なんだけど、増えてるってどういうこと?」

「いや、文字通りなんだけど」

「そういう系の話って、誰かのネタ話だから、増えるってあんましなくない?」

「だから、生きてる確かな伝説なのよ。半分以上真実なの。」

 与太話が真実だなんて。

「詳しく、教えてもらえるかな?」

「えぇ。まず、時系列的に一番最初にこの現象に遭遇したのはうちのクラスの守屋さん。願いを叶えてもらったって本人から聞いたから。願いの内容までは聞いてないから、わからないけど。次はうちの男子の里中。失くしていた財布が見つかったそうよ。次に春菜と晴香。二人はテニスのダブルスで初の県予選突破。そして、明石。彼はペットの病気が治ったそうよ。まだまだ沢山あるみたいなんだけど。こういった例が後うちのクラスだけで10人くらいね。」

「ずいぶんラッキーな事が立て続けに・・・でも、それが、猫のことと関係があるの?いい事が立て続けに起こっているだけなんじゃないの?」

「そう。その通り。確かにこれだけじゃ不完全。幸せの猫との関わりは薄いわ。ただ・・・」

「ただ?全員猫を飼ってるとか?」

既に彼女が把握しているだけで15名前後の人間が願いを叶えている。クラスの半数弱が叶えていると言うのは、最早、偶然の域を超えている。

「フフフ、そうだったら、それはそれでニュースよね。半数以上が猫を飼っているクラスなんて、先生方の陰謀を感じるわ。でも残念、そうじゃないの。1つはここひと月の間に全員、自身の友人の一人と喧嘩、もしくは何かしらの理由で疎遠になっているの。あなたを含めてね、朱音さん。」

えっ・・・。どうして私のこと・・・。

「ちょっとまって、何で私の事知ってるの?」

「私は新聞部の部長、紺藤葵よ?生徒全員の身長体重、趣味特技、スリーサイズから性癖、プライベートだろうが、なんだって知ってて当然でしょ?」

 朱音は思った、この子には逆らうのは絶対よそう。と

「いかなる偶然も2つ以上の異なる事象が交われば必然とまでは行かなくても最早作為的な何かとなる。さらに、もう一つ。全員が猫に出会っていて、言った猫の柄が同じとくれば、ね!」

「はひ?」

 ぽかーん。勝ち誇ったように言う葵に対し、あっけに取られる朱音。

「だから、同じ、黒ブチ猫を目撃してるのよ。」

「へ、へぇ・・・」

「何か不満でも?」

 何か言いたげな朱音を

「い、いやね、決め手としてはバッチシと思うんだけどね。猫を見たなんて、ねぇ、珠希」

「う、うん。同じ家の猫見ただけかもしれないし、ねぇ・・・」

「疑ってるって訳ね、まぁ、仕方ないわよね、自分で言うのもなんだけど、私もこの解答、決め手に欠くと思ってんのよね~。」

意外にも、あっさり負けを認める葵。

「猫なんて同じ場所にいつも居るなんてことないしねぇ。私もこの程度しか共通項見つけられないなんてガッカリしてたとこなのよ。これじゃ、私のジャーナリズム魂の渇きを満たせないわ。実は私、この件に関しての新たな手がかりを捜していたところでね、今回、守屋さんの友達で疎遠被害にあったリストにあった朱音さんに会えるって聞いたから、なんか見落としているヒントとか、新たな情報とか期待してたんだけど、この様子じゃ、それも望み薄そうね。ハァ・・・」

 肩を落として言う

「アハハ、ごめんね」

「いや、あなたが悪いんじゃないもの。謝ることないわ。でも、何故かしら、確実に奇妙な事が起きていて、確実に嫌な予感がするんだけど・・・どうしてこうも、決定打に辿り着けないのかしら。」

それもそうである。自分以外にもこれだけ疎遠になっている人間が出ているのだ。何かしらの手掛りが掴めても言い筈なのだ。皆、う~んと腕を組んでしまう。

「あっ」

突然珠希が思い出したように声を上げた。

「どうしたの?珠希。」

「えっとね、さっきから思ってたんだけどね、どうやって願いを叶えてるのかなって。」

「えっ?どういうこと?勝手に叶ってるんじゃないの?運気が上がったとかでさ」

 珠希が言った意味が分からず、問い返す朱音に対し、

「成程。確かにそうよね」

「えっと、どういうことかな?」

「こういうことよ。第一のこの現象の体験者の守屋さん、『叶えてもらった』って言っていたのよ。普通だったら、『叶った』じゃない?そういえば今回の現象、感想が全員受動的なのよ。」

「え、本当?」

「例えば、お調子者の田村の場合とか、彼はロトで2等が当たったんだけど、当てて貰ったって言ってたのよ。変でしょ?『宝くじが当たった』が普通の表現でそんな変な表現をする?普通。」

 確かに。宝くじを当ててもらう、だなんて、他人依存な買い方をしたとしても、なかなかそうは言わない台詞である。

そもそも、ラックが関係ある事に関して、~してもらったなどという表現自体、使う事は稀であろう。本当に神頼みのような現象以外。


・・・神?


「それ、ちょっとさ、あたしに持ち帰らせてくれない?」

「いいけど、何か手がかりになるような事、あったの?」

「うん。うまく言えないけどさ、そのことに関して少し詳しそうな人、知ってるからさ」

「詳しい人?よくわかんないけど、何かの糸口にはなりそうなのね?」

「う、うん。ごめん。うまく言えないけどさ。そういうことにしといて。明日、結果はなすからさ。」

「解った。じゃ、朱音の報告、楽しみにしてるから。」

「ありがと、葵。いい報告期待してて!」


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