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「やはり、玉露が一番だな。おっ、茶柱が立っていやがる。」

 社の奥のこざっぱりした茶室に案内された

「何を言うか、うぬは腐っても神ではないか。しかも、豊穣、富、幸福の。茶柱なんぞ、いつも立っておるであろうに。」

「いや、まぁこういうものはだ。どんな時でも喜ぶ事を忘れないようにしないとだな。ありがたみが無くなるって言うか。」

 とお茶を啜りながら、

「ところで、最近、人喰い(・・・)が頻繁に発生しているようだが、犯人はオマエさんかい?」

人喰い。文字通り人を捕食すると言う行為。

妖魔は太古の昔より皆、人を捕食する事で力をつけている。妖魔はまた、基本的に不死の生物なのだが、自身の能力をを強化したり、能力を追加したりする為に他の生き物を捕食する。

中でも、人間の想像力と言うものが、他の生物を凌駕している部分があり、そこを奪うために人を捕食する。

「何を言う?我々妖魔が現在人間に対して不可侵で協力的な立場をとっているのを知らんとは言わせぬが。」

 現在、生身の人間を喰すという行為を禁じている。概念生物として、現在の世での目立った行動はなるべく控えたいと言う本音なのである。

「いや、お前たちの自主的な方ではない。」

「とすると?」

「副次的、いや根源の方だ。」

 概念生物である龍聖、妖魔、それぞれには発生の原因と言うものがある。

龍聖は生き物の極限を越えた先の超常を基にしているのに対し、妖魔は欲、願望を基にしている。

よって、妖魔は生き物の欲、願望に敏感に反応し、そのねぎを叶えようとしてくる、叶欲という物がある。妖魔の欲望は凄まじく、理屈理念、概念諸々、全てをひっくり返してでもその願いを叶えてしまう。

だから、それによって、様々な弊害が起こる事が多いのだ。

「副次的な方か。それ厄介ではあるな。」

「そう。オマエさん方の叶欲は色々なものを捻じ曲げて成り立たせてしまうのだからな。」

「確かにな。じゃから、現在は大分活動を控えておるではないか。リスクが多すぎる。」

 そう。この力を使う事はかなりのリスクがある。

「第一に、我らの力は願いだけが叶った状態になってしまうと言う事である。そうなるまでの過程、理屈、諸々を全て無視した形で、その欲望が達成された結果だけ残ると言う、世にも奇妙な現象が起きてしまう。例えば、明日の試合、野球で勝つという望みであった場合、例え、20対0で負けていようが、その試合は勝ったことになってしまう。更にそれで成り立ってしまうのであるから余計におかしい。そこで因果律が始めて作動する。例えば20点入れていたのはなぜか不正なバット、グローブを使っていた、と言ったことが出てきて、失格勝ちである、といった無茶苦茶ではあるが、それに則した後付理由が発生する、と言ったものである。

 なので、時として猛烈に不自然な状態で成功するので、その後、何が起こるか分からない点。

 もう一つ、これは我らが最も嫌う点じゃが、その欲望を叶えるだけの力が我らに無かった場合、その場合、我らは願望機として叶える事が出来るだけの能力があったとして願いを叶えてしまう。

ということは、我ら自身がキャパシティオーバーで自壊し死んでしまうか、もしくはその願望を願ったものがその願望を叶える事が実現可能になるだけの代償が支払われる。それも、その願望者の周囲にまで及んででじゃ。進んでやる訳が無かろう。」

 あたりまえであろう、とでも言うかのように、呆れた物言いで答える朝顔。

だが、赤穂寺は更に話を進める。

「では、幸せを呼ぶ猫って知ってるか?」

「そりゃ知っておるに決まっておろう。こう見えてもコスプレ喫茶の店長じゃぞ?

それにしても、乙女チックな事に首を突っ込むようになったのう。」

 赤穂寺に対し、真面目な話をしろとでも言いたげに

「では、その噂の出所で、誠に願いが叶った場合、どうする?しかも、人の思考を捻じ曲げる形で。」

「まさか・・・、いや、ありえん。まず私はやらん。」

「だろ?だから、問題なんだ。今回の幸せを呼ぶ猫、発生源で、恋愛成就が出来ておる。」

それを聞いて、少し朝顔は青ざめた。

「お主、まさか・・・強制思考改竄が行われた可能性を示唆しておるのか?」


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