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「おーい、久しぶりに豊穣の神様が来てやったぞ。ここの主はどこにいる?さっさと出て来い」
替わって、場所は猫又山頂。日は既に堕ち、既に本日の営業時間は終了しましたとでも山側から訴えて来そうな時刻。無論、この時間帯に二千メートル級の山頂に居る物好きなどおらず、普段ならば誰も居ないはずの猫又山山頂。そんな中、地蔵の前で叫ぶ変人、もとい赤穂寺がいた。
「ふぁあぁああ。なんじゃ、一体。ここ猫又山にうつけ者の来客予定なんぞ入ってはおらぬわ。アポなしのセールスは社会的ルール違反だと学校で習わなかったのかえ?」
何処からともなく声が聞こえてくる。
「言うようになったな、小童。生憎、我は学校などと言うものに行った事がないもんでなぁ。それに、そのような事、学校で教えるとは思わんが。学業の祖とは酒友達ではあったがなぉ。まぁいいから、さっさと門を開けやがれ。」
すると、残っていた雪渓が割れ、虹色の光が周りの背景を吹き飛ばしていく。そして、甘猫庵と書かれた立派な社が現れた。
「幾ら、汝の方が万年ほど長生きしているとて、ここ千年引き籠っておった神に童呼ばわりされる筋合いは無いがの。」
「ほう、言うようになったじゃねぇか、朝顔。」
社から一人の女が顔を出した。
「いつまでも千年前では生きておらんからの。」
髪は小麦と茶の斑、紅白の袴姿をしている。
しかし頭からは獣の耳がピンと立っており、尾が2本出ている。
この辺りの山を治める妖魔族の妖仙、猫又の朝顔である。
「スケコマシが、何のようじゃ?」
「おいおい、いつの時代の話をしているんだ?、ところで・・・」
「まぁ、何にせよ、少しあがっていけ。茶ぐらい出してやる。」
「おっ、そいつはありがたい。玉露でお願いしたい。」




