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「それでね、保健のよしこちゃん、タニセンと付き合ってるんだって~」
広場のベンチに座ってクレープを食べながら話を進める珠希。
ちなみによしこちゃんとは保健教諭の長谷川先生で、タニセンとは、彼女たちの担任の谷口先生である。
「へ~、タニセンのどこがいいんだろうね~」
「ホントにそうだよね~宿題鬼ほど出して来るしさ~、ホント周りの事もうちょっと考えて欲しいよ。」
「そうだよね~。」
まぁ自分たちの将来のことを考えてるからこそ、宿題を鬼のように出してるとも言えるのだが。生徒には苦痛で仕方が無いのは最もであろう。
「ホンット。あ、そうだ。それよりさ、アカネちゃん、こんな噂知ってるぅ?」
「噂?」
噂話。大抵は与太話のことが多いのだが、それでも聞き入ってしまうのが、子の手の多い話である。
「そそ!『幸福を呼ぶ猫』って言うの、聞いた事ある?」
「『幸福を呼ぶ猫』?」
「そう!なんでもさ、なんかさ、頼めば何でも願いをすぐに叶えてくれるネコちゃんなんだって!なんかさ、二組の女子がそれを使って願いを叶えたらしいんだよ。」
へ~、隣のクラスの女子が噂話に出くわした・・・か。まぁ良くある噂話だわ・・・・。あ~、でも、うちの神の例もあるし、調べてみるのは面白いかも。
「何か面白そうね。」
「おぉ、同士よ。アカネ君、キミも好きだったのかい?こういうオカルトについて。」
「へ?いや~ちょっとね・・・」
「意外だったな~、たまは、アカネがこういうオカルト系統は軽く受け流すタイプだと思ってたよ。」
まぁその通りだろう。珠希の読みは正しい。
「そっかな~、気分転換にはいいじゃん。」
「そうだな。我もそう思う。たまには、羽を伸ばしてみるのもいいぞ、朱音。」
ふっと振り返ってみると、見覚えのある趣味の悪いTシャツを着た神がアイスを食べながら腕組をしてこちらに相槌を付いている。
「あああ、アンタ!」
「どうした?朱音。アイスはやらんぞ?このバリバリ君サイダー味は、先程朱音の母君から貰った生活費で買ったものだ。貴様にくれてやる物ではない。」
「そうじゃなくて、いつからいたの?」
「ふむ、『クレープってやっぱり、イチゴフレーバーだよね』からだ。詳しい内容は興味が無いから忘れたし、覚えていても、他言などせんから、気にはするな。おっ当たった!やはり、神だと当たり付の食べ物は良くないのぉ。必ず当たってしまう。」
最初からかい!この神は。乙女のガールズトークを気配を消してずっと聴いてたってことかい。今は、珠希の目もあるし、とりあえず帰ったら2~3発殴ろう。と心に誓うのであった。それよりもだ。
「どうしてここが分かったの?」
「我神だからのぉ・・・朝起きて布団から這い出す位本気になれば、気配を辿れば誰が何処に居るか位、一瞬でわかるんでな。普段は面倒でそこまで頑張らんが。」
普段どれだけやる気ないんだよ、と突っ込みを入れたくなるのを我慢しつつ。
「で、何か用?」
「ふむ。先程気になるネタを話しておったのでな。」
「気になるネタ?」
「幸せを呼ぶ猫。」
やはり、そういうところにはキチンと食いつくんだ。
「幸せを呼ぶ猫なんぞ、我は聞いた事がない。とうとう、この星の科学はそこまできたのか?」
「んなわけあるかぁぁ!喰いつくとこそっち?」
ホント、コイツは予想の右斜め上の発想をいくなぁ・・・
「ねぇねぇ、アカネちゃん。この人、知り合い?」
「ぅん?あぁ、コイツは居候の・・・」
「赤穂寺と申す、令嬢、とんだ横からの無礼、申し訳ない。良ければこれからお茶でもウグッ」
どさくさにまぎれてナンパをしだす
「ちょぉぉっと待てぃコラァ!あたしの時と、エラく態度が違うんだが?」
「そんな事ないぞ?我はいつも紳士の対応をだなグハッ・・・」
ドスッ
「セイ!」
朱音の正拳が赤穂寺の鳩尾に突き刺さる。
「・・・痛いではないか・・・朱音」
「だぁーっしゃい!・・・ホンと、腹立つなぁ!」
「ふふ、仲良いんだね、お二人」
「「どこが!」」
二人の声がハモる。
「ま、まぁそれは良いとして、令嬢、先程の幸せを呼ぶ猫について、2~3聞かせていただけないだろうか?」
「先程の事って、あぁ猫のことね?いいけど。」
「ありがたい。では。一つに、その猫とやら、願いを叶える前に、何か要求してこなかったか?」
「えっ、いや~、そこまではちょっと・・・、あ、そうだ。その
願いを叶えたっていう子なら知ってるから、その子の直接聞いてみると言うのは?」
「承知した。で、その者は?」
「えっ、イヤ、それはちょっと・・・」
「ふむ、いや、言わなくて良い。ふむ。理解した。成程。」
「えっと、朱音、この人、電波?」
「いや、ちょっと変わったところがあるっていうか・・・」
「朱音、探索は明後日でいいか?」
話をぶった切って赤穂寺は話す。
「解った・・・けど、全く話が見えないんだけど?」
「あぁ、気にするな。明後日全て話してやる。あ、そうだ、晩飯までには帰れよ!」
といってその場から離れようと、2~3歩いたところで不意に足を止めて、
「朱音!」
「な、何よ、用が終わったんならさっさと帰りなさいよ。」
「お前、失恋したんだってな!誰に振られた?」
「誰だって良いでしょ?そういうこと、普通聞く?デリカシー無さ過ぎでしょ!」
「あ、あぁスマン!まぁ飯までに帰れよ!」
と、神と名乗る男(電波男)は急用を思い出したかのようにドロンと消えた。




