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むかーしむかし、そのまたむかし、越中二上山に『悪王子』と言う名の神様がおったそうな.
彼は天候を操り豊作の神として越中の人々に称えられておったそうな。
しかし、彼は非常に性格が悪く、
「オイ、愚民共、豊作にしてやるから、女をよこしせ!女はみんな俺のカ○タレになるのだ!!フハハハ」
と、貢物として若い女性をよこせと村人達に要求し、民を困らせておったそうな
このままでは、若い女性たちがいなくなってしまう・・・
困った村人は京へ、討伐の窺いを立てた。
時の帝は、藤原秀郷侯に討伐の勅命を下された。
「ほう、我を封印する倒すだと?笑わせてくれる。」
幾日の激しい戦いであったが、中々悪王子は強く藤原秀郷侯は敗北寸前まで追い詰められてしもうた。
「申し上げます!」
秀郷の陣中、良く訓練された伝令が必死の形相で入ってきた。
「どうした?」
「脱出口のつり橋が、切り落とされました!」
ざわめく兵士たち。既に連戦からの疲弊で、士気もカナリ下がってきている処へのとどめの一撃。
「もう、私達に奴を倒す事は恐らく叶わぬ。よってこれ以上の戦いは無理であろう。しかし、希望はある。」
鎧の裾から一体の像を取り出した。
「ここに、京よりの高尚な僧が彫ったと言われる霊像がある。この霊像は神々をも封印する力があるといい、何千年もの間、邪を清める効果があると聞く。これに封印し、二度と復活しないようするしかない。」
「殿、どうしました、そのような弱気でどうするのです?」
彼は紅坂藤次郎。普段は寡黙で滅多に言葉を発する男ではなかった。
「そうは言っても藤次郎よ。もうこの戦力差では・・・・」
「大丈夫ですって。それに殿にはこの戦の前に、ご子息が誕生されたとか。」
「うむ。実は、まだ顔も見ておらぬ。」
「ならば、是非この戦、勝って帰らないと。それに私も、この戦が終わったら、嫁を貰うつもりです。」
「なんと。そのような事、何故黙っておった。」
「いやね、ここが景気付けのときだと思いましてね。ここらで、めでたい事の一つくらい言っとかないと。それに、あの悪鬼、別に倒してしまってもかまわないんでしょう?」
「フフッ、たいした自信だ。いつもは寡黙なオマエがよく喋るなんて、明日は、本当に勝てるかもな!」
「ハイ!期待しておいてください!」
その時である。
プチッ
「おろ、鞘の束帯の紐が切れたな。最近戦続きだったから、切れても仕方がなかろう。ハッハッハ。」
「おっと、私の草鞋の鼻緒も切れてしまいました。長旅だった故、仕方がナイって奴です」
「そうだな、戦いも長かったからな、準備も万全にしていくとしよう。」
「では、明日の戦い、もうひと頑張りしますか」
「そうだな、明日は激しい戦いになるだろう。明日は勝つぞ!」
「オーッ!」
そして・・・。
「殿ぉぉぉ、ご無事ですかぁぁぁ」
「なんとかな。しかし、何故、何ゆえ、昨日の数段の強さではないか。」
「そりゃあれだ、うぬらが余りにも強くてしつこいからの、歯を磨くぐらいの本気を出してみたんじゃ。どうじゃ?昨日の2倍ぐらいは強くなってるであろ?」
小童が親に褒められた時ような満足げな顔をして答える悪鬼。
「仕方がございません。こうなったら、私がなんとか隙を作ります。その隙に奴を像に!」
「まて、藤次郎よ。早まるな、」
「殿、また、飲みにいきましょう。」
と、藤次郎は立ち上がりうぉぉぉぉと激しい叫びとともに、悪鬼に立ち向かって行った。最後藤次郎は
「死亡フラグ、立てすぎました・・・てへぺろ」
という遺言を残したか残してないとかと言う事が、言い伝えられているとかなんとか。
藤次郎の犠牲の下悪王子の封印は達せられ、北陸の平和は保たれたのであった。
そして封印されてから千年の月日が経とうとしていた・・・