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1.会いたいけど会いたくない

とりあえず、こう言う場合は籠城してみる。

それがツレくおりてぃ。

「おい、何で隠れてるんだ」

「となりのたけによくたけたてたたった……から隠れてます」

「ったく……意味が分からない上に言えてないぞ」

 なんですかその態度は。

 溜息ですか、そーですか。何だよ、文句あっかこの野郎。

 やれやれ、って顔で肩を竦めたツレを上から見下ろして、オレはチッと舌打ちする。

 ちなみに、上からってのは今ツレが居る位置が一階の廊下で、オレが二階への階段の踊り場に居るからオレの方が上なのだ。

 流石に奴が無駄に身長があって足が長くても、階段の高さの差を超える程でかくは無い。

 じとーっと上から見下ろしてると、ツレがまた溜息を吐いて「お前なぁ……もう良い年なんだから、もうちょっと意味を考えて行動してくれよ」と肩を落とした。

 そりゃー、オレだって今やってる行動が大人げないのは自覚してますよ?

 てか意味も殆どねぇですよそのとーりでございますよ。はいはい。

 でも、理屈でかんじょーは割りきれんのです。

 人間はかんじょーの生き物なんです。

 自由に心のままに生きていけたらいいなー、ってどっかの歌手もそれっぽいの歌ってるんです。

 そんなことを力説してみたら、疲れた風なツレと視線が合った。

「……おう。で?」

「いや、「で?」って言われましても」

「それで、お前はいつまで階段に籠城しているつもりなんだ?」

「とりあえず、テコでもヤリでも降ってこようが、今日一日ココがオレのテリトリーです」

 動くもんか。

 そう言う意味を込めて歯を剥いて唸って見せたら、ツレの顔が更に呆れた感じになった。

「何で野生化してるんだよ……大体そんな寒いところに居たら体壊すぞ」

「……気合いで」

「気合いでどうにかなるお前じゃないだろう」

 はーっと溜息を吐きだして、ツレがオレの居る踊り場の傍まですたすたと登ってきやがった。

 なんだよっ、と身構えるオレの脇の下にひょいっと大きい手が入る。

 そのままぐいーっとりふとあーっぷ。

「ぎゃー!」

「はいはい」

「ぎゃーすぎゃあぶげほごふぉっ」

「だから風邪引くって言っただろう……」

「がぜじゃないです。ただ噎せたんですよこのやろー」

「そうかそうか」

 あっさり陣地からひっぺがされたオレを見上げて、ツレが笑う。

 今年も嫌みなぐらいのイイ男っぷりだ。若水でも浴びて滴ってしまえ。

 手を伸ばして頬を引っ張ってみると、思ったよりも硬かった。何か前より硬くなってない? ひっぱりすぎた?

「なあ、奥さん」

「何ですか旦那さん」

「子供達もお前に会いたがっているんだから、意地悪してやるなよ」

「……」

「俺も折角の正月休みに、お前と離れて過ごすなんて御免だぞ」

「……ちっ」

「そこで舌打ちですか、奥さん」

「そうですよ旦那さん」

 ケッと横を向いて、オレは「下ろせよ」と言う。

「もう逃げんし」

「そうか」

「……いや、だから逃げないから下ろして欲しいんですけど」

 なんで持ちあげる姿勢から、前に抱え込む姿勢に移行しようとしてるんでしょうか。てか、下ろせ、歩けるから下ろせ。

 微妙にあばれるには狭いうちの階段で、どうやって脱出するか悩んでるオレの横で無駄に整ってるツレの顔がニヤリと笑う。

「折角だからこのまま行こうか」

「はーぁ? 何言ってんですか、アホですか。なんで赤ん坊でも要介護でもないのにお前に運ばれなきゃなんねぇわけ?」

「俺がそうしたいから」

「てっめぇ……顔が良いからってそういう寒いセリフで全部がごまかせると思うなよ」

「危ないから暴れるなよ」

「聞いてます? てかついに脳みそとろけたんですか? てかマジで下ろせ、マジで下ろせ」

「はいはい」

「はいはいじゃなくて下ろしてくれつってんの!」

「はいはい」

 こうなったらもうどうしようもねぇな。

 オレは諦めて、取り合えず落ちにくいようにツレにしっかりつかまる。コツは重心をなるべく合わせる事です。

 ……てか、もしかしてオレこの格好のまんま連行されんの? マジで?

 オレは首を回して、何やらご機嫌なツレを見てみる。

 耳元で揺れる銀色の輪っか。

 そう言えばこいつ、例の耳輪ならぬ指輪を買う時も、仕事帰りでボロッボロのオレを平気で拉致って、その格好のまま連行しやがったんでしたっけ。

 ……おけ、連行コース直行ですね理解しました。

 オレは溜息をついて、とりあえず八つ当たりっぽくあごをごつんと奴の胸にぶつけてみる。

 なんで新年早々の登場がこんな風になるんですかね?


 久しぶりの対面は、しょっぱなから呆れられる予感がします。はい。


 

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