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第九話 幕転化、幸福は続かないもの

「さ、次はあの店に行くわよ、ちゃんと付いてきなさい荷物持ち」


「はいはい、わかりましたよお嬢様」


「何それ、馬鹿にしてるの」



 俺はただ今、町中でディアナの命令により買い物の荷物持ちをしている。

 何でも言うことを聞くと言ってしまったからには、どんな非道な命令を下してくるかと思ったがこんなんでいいのか、まあ、本人が満足しているのなら問題は無いんだけど。



「こんなに色々服とか買ってるけど着る機会はあるのか、休暇は一週間だけなんだろ」


「別に買ってすぐに着なきゃいけない決まりは無いでしょうが、私はこれを戦場から無事に戻ってくるための活力にしてるのよ」


「活力ね、服がか? 」


「服自体じゃないわ、まあこんなかわいい服着てみたいって気持ちもあるけど、それだけじゃなくて、たとえば今度の休暇にはこの服を着てフローラとピクニックに行こう、とかこっちの服を着てショッピングに行こうとかよ」


「へー、ってそこに俺は含まれないんだな」


「なに、入りたいの? まぁ、どうしてもって言うんならつれてってあげないことも無いけど」



 いつもどうりの日常、ほんとにくだらなくて、それでも俺の悩みなんて忘れるくらいに楽しくて、それが……





「……うそ……どうして」



 目の前が真っ白になる。

 今は突っ立ってるべ時じゃない、行動を起すべきなんだ。

 そういう簡単なことに気づくのに時間がかかった。

 大量の汗が流れ出す。

 これは俺の不安からなのだろうか、それともただ熱さから出ている汗なのだろうか。

 俺はいそいで家の中へと入った。

 這い居てすぐに玄関で倒れているフローラさんを見つけることが出来た。

 頭からはバケツの中身でもひっくり返したのかと言うほどの出出血が見て取れる。

 俺は服を脱ぐとそれでフローラさんの後頭部を押さえ急いで家から出て病院へと向かった。





 今回の事件はディアナを狙った敵国の工作員による攻撃だったらしい。

 犯人はすぐに捕まったがその場で自害し詳しくは分からないままだ。

 前例の無いことらしい、内部からの裏切りでもなく工作員は明らかに他国の人間だとの事だ。

 大陸の周囲には死角が出来ないよう大量の見張りを置いてある。

 何らかの進入経路があったのだろうがそれも分からないままだ。

 そしてこの事件により、フローラさんは帰らぬ人となった。





 葬儀も終わり本来の予定より早いがディアナは軍に帰ることになった。

 あんなことがあれば当たり前なのだろう、葬儀を行うための時間だって無理に作ったのだろうし。



「なあ、ディアナ頼みがあるんだが」


「無理よ、諦めなさい」


「……まだ何も言ってないんだが」


「どうせ、『俺を海軍に入れてくれ』とでも言うつもりなんでしょ、無理よ」


「んなっ……用はそのとうりなんだが何で無理なんだよ、海軍だって人手不足なんだろ」


「戦争は遊びじゃないのよ、入れてくれなんていわれて簡単にはいどうぞなんていうわけ無いでしょ」



 ディアナは急に語調を荒げる。



「遊びなつもりは無い、こっちだって真剣なんだ」


「あんたまで……あんたまで死ぬつもりなの……」



 ディアナはそういうと俯いてしまう。

 いくら人が死ぬのは見慣れているからといって親友の死をそう簡単に割り切れるものでもないだろう。

 きっと俺より傷は深いはずだ。



「俺はこんなこと繰り返してほしくないんだ、戦争が終ればこんな悲しみも二度と起きない」


「……なんで……なんで…………かってにしなさいよ」



 ディアナはそういうとついて来るよう促しそのまま歩いていった。

 それから海軍の本部に付くまでの間、言葉を交わすことは一切無かった。

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