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ヒャッハー!婚約破棄野郎は消毒だー! 婚約破棄系女子の生き様

作者: よっちゃん
掲載日:2026/02/15

――今北産業【婚約破棄の漢たち】

其ノ壱~弐

TS転生系悪役令嬢、覇姫エレクシア

醜い系女子、醜姫ブス・グロリア

美と醜、天を掴むのはどちらか

《 覇天軍軍歌 》

破約系女子の生き様は 退なし 媚なし 情あり

誓いを裂かれしその日より 涙は鋼の刃となれり

傲慢なる芽は断たれ 軽薄の証は灰と散る

愛を侮る者よ 貴様のソレはもう潰れている

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

【婚約破棄の漢たち 其ノ参】


 とある学園の卒業パーティー。

 燦然(さんぜん)と輝くシャンデリアの下――

 (きらび)びやかな会場の中央で、いつもの断罪が始まる。


「子爵令嬢シンシアよ!陰気な貴様との婚約を破棄し、俺はこの愛らしい男爵令嬢キャロラインと結ばれる!」


「そ、そんな……」

「ふふん」


 膝から崩れ落ちる、元婚約者の令嬢シンシア。

 大きな胸を張り、勝ち誇る泥棒猫の令嬢キャロライン。


 周囲の嘲笑(ちょうしょう)

 シンシアを見下ろし、(えつ)に浸る男。


 ここにまた一人、

 婚約破棄を宣告され、捨てられる女が誕生する。


 ――と、思われた、その時。



挿絵(By みてみん)


「ヒャッハー!婚約破棄野郎は消毒だ!」


 轟音(ごうおん)

 扉が吹き飛び、嘲笑が凍りつく。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 ――ある日を境に、

 婚約破棄の現場には“太陽”が昇るようになった。

 嘲笑が起これば、轟音が鳴る。

 断罪が始まれば、扉が砕ける。


 銀髪を揺らし、美の覇気を(まと)い、

 多くの婚約破棄男を(ほうむ)ってきた美しき覇者


 公爵令嬢――覇姫(はき)エレクシア。


 そしてその太陽に(つど)いし女たち。

 かつて捨てられ、かつて(わら)われ、絶望を味わった女たち。




 婚約破棄を狩る軍勢――


 ――覇天軍(はてんぐん)


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


挿絵(By みてみん)


「立てい、むすめよ!

 そのような凡愚(ぼんぐ)に膝を折るな!

 立ち上がり、そやつの一物を粉砕してみせよ!」


 その言葉に、子爵令嬢シンシアが涙を拭い、悪鬼のように立ち上がる。視線は、ただ一点(股間)を見つめていた――ニヤリと、口が歪む。


「ひいいい! は、覇姫エレクシア!覇天軍!!

 噂は、本当だったのか!」


 無様な悲鳴をあげ、股間を押さえて後退(あとずさ)る男。


 ここにまた一人、

 婚約破棄を宣告し、アレを粉砕される男が誕生する。

 まさに、その時。



「待てい!」



 静まり返る会場。



 そこに立っていたのは一人の(みにく)い女。醜女(しこめ)

 鼻は低く、頬は張り、肌は荒れ、

 祝福されぬ造形。

 選ばれぬ女。

 美の対極――醜。

 だが、その身に宿るは覇。


「捨てた男の一物(いちもつ)を潰したとて、その断罪劇(ざまあ)では、お前は救われぬ!」


 今まさに、元婚約者(うわきもの)陰嚢(いんのう)を消毒しようとしていた子爵令嬢シンシアに、迷いが生じた。


醜女(ぶす)よ、うぬは何者だ?」


 覇姫エレクシアが、その美眼で無礼者を睨みつける。


「我こそは……」


 (みにく)い女は外套(がいとう)を脱ぎ捨て、胸を張る。


貴女(覇者)(あお)ぎ見、覇道を(こころざ)し――

 その背を追い、なお並び立たんとする者!

 この風貌(ふうぼう)ゆえ醜を(まと)い、天に挑む――

 我が名は、醜姫(しゅうき)ブス・グロリア!」


 一瞬の沈黙。

 覇姫エレクシアの長き髪が、わずかに揺れた。


「ハハハハハハ!」


 天に挑む愚かさを(わら)うのではない。

 天に挑む“覚悟”を喜ぶ声。


「その容姿、貴様も男に捨てられたな。

 そして修羅の道を往く強者(つわもの)……


 この覇姫に挑むか!よかろう、その意気や良し!

 ならばまずは、その生き様、試してやろう!」


 エレクシアは、ただ一歩、踏み出した。

 それだけで空気が裂ける。


「受けてみろ、このエレクシアの無敵の一撃」


挿絵(By みてみん)



輝天(こうてん)覇断掌(はだんしょう)


 両掌(りょうしょう)から放たれた光は、奔流(ほんりゅう)となって一直線に駆けた。

 それは、祝福され、選ばれし美の、絶対の一撃。


 光が醜を呑み込む。

 轟音(ごうおん)が響き、床石が砕け、壁が(きし)み、

 ()ぜた衝撃が会場を揺らす。


 醜姫(しゅうき)ブス・グロリアの身体は、光に()まれたまま吹き飛んだ。


 赤き絨毯(じゅうたん)を転がり、柱に叩きつけられる。


「誇れ、そして眠れい、覇姫(はき)に挑みし醜姫(しゅうひ)よ」


 身を(ひるがえ)すエレクシア。


 誰もが確信した。


 終わった、と。


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 光の中で、意識が沈む。


 ――終わりか。

 覇姫エレクシア……やはり、強すぎた。


 闇が迫る、その時。


 知らぬ記憶が、溢れ出す。

 (ページ)をめくる指。

 夜更けの部屋。

 光る画面。

 恋愛譚(婚約破棄)

 転生譚(ハイストーリー)

 華やかな逆転劇ざまあ

 笑い、泣き、読み(あさ)る“わたし”。


 でも最後まで心に残ったのは――

 祝福されぬ女。

 選ばれぬ女。

 (むく)われぬ女。


 それでも。

 背を向けられても。

 (わら)われても。

 愛を捨てなかった、あの醜い女。

 救いのない物語。


 だけど私は――

 あの生き様に、憧れた。

 今度は……


「わたしの……なまえ……さ、と……み……」


 だが。


「否!」


 闇を裂くように、声が響く。


「オレの名は――ブス・グロリア!」



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「馬鹿な……肉体は砕けたはず!」


「貴女は太陽。すべてを照らす。

 だが、その輝きは強すぎる……」


 醜姫ブスが、一歩、踏み出す。


「オレは背負う。(むく)われぬ想いを。

 喰らい尽くす、すべての(あざけ)りを!」


「うぬごときの醜など、我が拳の前に無力のはず。

 ならば、貴様の()り所は――(むく)われぬ愛か!」


 エレクシアの拳が、赤く燃え上がる。


「馬鹿めが。愛ゆえに人は苦しむ。

 太陽は焦がすのみ。抱きはせぬ。

 滅びよ――醜き愛と共に!」


挿絵(By みてみん)



『受けよ!日輪(にちりん)覇滅掌(はめつしょう)!』


 灼光(しゃっこう)奔流(ほんりゅう)となって(ほとばし)る。



「愛ゆえに人は悲しみ、愛ゆえに人は醜くもなる!

 だが、その醜愛(しゅうあい)を背負う覚悟こそが――オレの覇道!」


『喰らい尽くせ――冥覇(めいは)喰尽(くいじん)!』


 黒き覇が広がり、太陽を呑まんとする。



 光と闇が衝突した。

 瞬間――

 世界が、白に染まる。

 爆音。

 床が裂け、天井のシャンデリアが砕け散る。


 冥の覇は日輪に呑み込まれ、

 醜姫ブス・グロリアの身体が宙を舞った。

 赤き絨毯を裂き、壁に叩きつけられる。


 だが――

 日輪の奔流(ほんりゅう)もまた、無傷ではなかった。

 エレクシアの赤きドレスが、衝撃に裂ける。


 (ひるがえ)った(すそ)が焼け落ち、

 白磁(はくじ)のように(なめ)らかな美脚が、(あらわ)になる。


 静寂。


 粉塵(ふんじん)の中、立つのは覇姫のみ。

 だがその足元には、


 わずかに焦げた裂布(れっぷ)が揺れていた。

 エレクシアはゆっくりと視線を上げる。


「見事だ、醜姫ブス・グロリア。

 そして感謝しよう。このエレクシアをここまで本気にさせたこと。

 もはや貴様を(あなど)らぬ」


 血が石畳に落ちる。

 それでも倒れぬ醜姫を前に、

 エレクシアはわずかに顎を引いた。


「次の一撃が貴様の最後になる。

 我が最強の技にて貴様を(ほうむ)り送ろう」


 エレクシアが静かに構える。

 赤き覇気が収束し、

 その背後に、巨大な光輪(こうりん)が浮かび上がる。


「天を裂き、地を断つ。

 これぞ我が究極の奥義――」


 一方。

 醜姫は膝を震わせながらも両腕を広げる。

 闇が足元から広がり、

 会場の光を呑み始める。


「退かぬ。

 折れぬ。

 この無様な愛も捨てぬ!


 喰ろうてやる……すべてを。

 世の(あざけ)りも醜も、全てを焦がす貴女の光も――」



 両者が踏み出す。



『滅せよ!天煌(てんこう)覇皇断(はこうだん)!』

『纏う!冥府(めいふ)喰界(くいかい)!』


 ――その刹那。


 天が裂けた。


 ズガガガガガーーン!!


 二人の間に、雷光が落ちる。


 光が、闇が掻き消え、衝撃波が吹き荒れる。


 醜姫(しゅうき)ブスは再び地に叩き伏せられ、

 覇姫(はき)エレクシアもまた、数歩よろめいた。


「……ば、馬鹿な!」


 覇姫が天を睨む。


「天よ、貴様、なぜ邪魔をする!」


 ただ静寂だけが答える。


 やがて。


「……ハハ」


 紅き唇が弧を描く。


「ハハハハハ!」


 凛然(りんぜん)たる哄笑(こうしょう)が、広間に木霊(こだま)する。

 それは(あざけ)りではなく歓喜。


「天よ、この醜姫に何を見た!?

 よかろう、貴様が止めるというのなら――

 この戦い、預けようではないか」


 エレクシアは一歩退き、

 赤きドレスの裾をつまみ上げる。


 完璧なる角度、完璧なる静止。

 それは宮廷礼法の極致――

 真の淑女にのみ許される優雅なるカーテシー。


「次は天すら裁こう」


 覇姫の赤き背が闇に溶ける。

 残された空間には、

 まだ熱を帯びた沈黙だけが横たわっていた。


 誰も動けない。

 誰も息を整えられない。


「あの醜女(しこめ)が……」


 震える声が、ようやく(こぼ)れる。


「無敵無敗の美の覇者を……止めた……?」


 地に伏した醜姫。

 その唇に、確かに浮かんだのは――

 敗者の笑みではなかった。



 ―――続く



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


輝天覇断掌(こうてんはだんしょう)


 輝天覇断掌――

 太古、南方光覇宗(なんぽうこうはしゅう)に伝わりし最終殲滅掌(せんめつしょう)

 両掌の間に極輝覇核(きょっきはかく)を生じ、敵の存在そのものを断つ。

 一度放てば大地は裂け、天井は崩れ、敵は血に染まる。


「達人と言えど二度は撃てぬ。

 使えば、(おの)が拳、先に砕ける」


 成楼(なろう)書房「実在した!世界滅殺拳法列伝」より


挿絵(By みてみん)



日輪覇滅掌(にちりんはめつしょう)


 日輪覇滅掌――

 その名の通り、太陽(日輪)の力を(てのひら)に収束させ、

 敵を滅する究極掌撃である。


 その起源は、

 遠く古代――インド・ガンジス河畔(かはん)にて修行を積んだ

 伝説の武僧・バラモン=ドヴァが編み出したとされ、

 太陽礼拝の秘儀にその源流を見ることができる。


 彼らは真昼の太陽を直視し、

 眼球を焼きながらも精神を鍛えたという。

 やがてその修行法はシルクロードを経て西方へ伝播。

 中世ヨーロッパにおいては

 十字軍騎士団の中に密かに受け継がれた。


 そして掌打へと昇華されたのが

 現在の形――

 日輪覇滅掌である。


「太陽は万人を照らすが、

 等しく救わぬ。

 耐えられぬ者は焼かれ、

 立ち続ける者のみが天の覇に並び立つ」


 成楼(なろう)書房「実在した!世界滅殺拳法列伝」


挿絵(By みてみん)


短編シリーズ【婚約破棄の漢たち】

其ノ壱 《 覇姫エレクシア 》 投稿済。

其ノ弐 《 醜姫ブス・グロリア 》 投稿済。

其ノ参 《 覇姫 vs 醜姫 》投稿済。

其ノ四 《 愛羅武勇をよこせ 》投稿済。


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