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第八話 睡眠障害の治療法


 別の日。わたしはとても動揺していた。


(これは……どういう状況でしょうか。わたしの心臓が、持ちそうにありません……!)


 膝の上に、初恋の人の頭が乗せられている。できるだけ意識を向けないようにしていたが、膝にかかる髪がそれを忘れさせてくれない。

 どうしてわたしが、シルヴァード様を膝枕することになったのか。




 遡ること一時間程前——。


「シルヴァード様。昨晩は、よく眠れましたか?」

「うーん。二時間くらい?」

「……あなたは昔から、眠りが浅いのですか?」

「昔から寝る時間は短いけど、極端に短くなったのは戦争が始まってからだった気がする。少しでも物音が聞こえたり魔力の動きを感知したりしたら、すぐ目が覚めちゃうんだ」


 シルヴァード様の顔色が悪く見えて、わたしは彼に尋ねていた。彼の話を聞いていると、周囲の環境に加え、悪夢も見ている可能性があるなら、睡眠障害はかなり重症なようだ。


「そうなのですね……」


 わたしはそう呟いて、どう治療していくかを考えた。睡眠障害は、彼の健康に直結してくるので、早めに治しておかないと……。


 シルヴァード様はそんなわたしを見つめて、笑みを深めた。


「僕は寝なくても大丈夫だよ」

「寝なくても大丈夫な人はいますが、あなたはそうではないのですよ。このまま睡眠時間が短くなってしまうと、体調が悪くなってしまいます。皆さんが心配しますよ」

「セレフィアも心配?」

「もちろんです」


 そっか、とシルヴァード様は嬉しそうに笑う。いつも感情の籠っていない空虚な笑みを浮かべている彼の、「嬉しそうな笑顔」だけは見分けがつくようになってきた。


「心を落ち着かせる魔法や夢に干渉する魔法、周囲の物音が気になるのでしたら、音を遮断する魔法などはありますが……」

「僕、他人の魔力に敏感なんだよねぇ。自分に魔法がかけられると、落ち着いていられなくなる」


 魔法をかけるという手段はなくなった。魔法が気になる人に魔法をかけると、余計に睡眠が嫌になる危険がある。


「魔法が駄目なのでしたら、薬もありますよ」

「僕、薬が効きにくい体質で。そのお陰で毒も効かないんだけど、代わりに治療薬とかも効果が出ないんだ」


 薬も難しいとしたら……絶対に物音が鳴らない部屋を整える必要があるだろうか。魔法で音が遮断できないとなると、どの場所がいいだろう……。


 考えていると、シルヴァード様がわたしの顔を覗き込んだ。綺麗な紅い瞳が目の前にあって、小さく悲鳴を上げそうになったが必死に抑え込む。


「ねえ、セレフィア。僕、一つ考えがあるんだ」

「なんでしょうか? なんでも言ってください」


 不意打ちで心臓が大きく音を立てているが、わたしは平静を装って笑みを浮かべる。


「セレフィアが傍にいてくれたら、寝られる気がする!」


 流石に彼の言葉を聞いて、平静のままでいられることはできなかった。

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