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第二十二話 強力な守護者


「シルヴァード様……どうか、魔力を収めてください」


 多少の魔力を持っているわたしですら冷や汗が出てきそうな圧なので、他の人達はもっと苦しいのではないだろうか。この場には子どもたちもいるので、事はできるだけ穏便に済ませたい。


「ああ……ごめんね、セレフィア」


 シルヴァード様はそう言って、魔力を抑制してくれたのか圧力がなくなった。


「ふ、ふざけるなよ……」


 青年らが悪態をついているが、彼の魔力に恐怖を感じたのか強く出られないようだ。


「帰れ。これ以上煩くするのなら、容赦しない」


 シルヴァード様は感情の籠らない声で言った。フードを被っている彼の目は見ることができないが、きっととても冷たい目をしているのだろう。青年らは体を震わせて、「覚えてろよ!」と捨て台詞を言って食堂から出ていった。


「あ、ありがとうございます」


 食堂の従業員の一人が、ぺこりと頭を下げた。


「彼らは何度もこの食堂に来て、そのたびに飲酒をして問題を起こしていたのです」

「そうだったのですね……。何か対処法を考える必要がありそうですね」


 この診療所を作ったのは、わたしの実家エランディール家である。が、運営と管理は平民の人々に託している。あまり貴族という身分を利用したくはないが、警備員を増やしたり暴力沙汰が起こらないように結界魔法を張ったり、対処をしておきたい。


 わたしが考え込んでいると、シルヴァード様に腕を引かれた。


「あんな奴ら、いらないよね。僕が処分しておこうか?」

「お願いです、止めてください。わたしがなんとかします。シルヴァード様のお手を煩わせるわけにはいきません」


 人を殺すという行為に慣れてしまったシルヴァード様なら簡単にやりかねない。彼らだって何か問題を抱えているのかもしれないのだから、表面だけを見て悪い人達だったと判断するのは良くない。悪いことをしたことは間違いないけど。心を入れ替えてもらえることができたら、それが一番良い。


「セレフィアがあんな奴らに心を悩ませてほしくない。僕だけのことを考えておいて」


 シルヴァード様はそう言って、わたしの腰を抱き寄せた。突然だったので心臓が変な音を立てたが、気づかないふりをする。


「シルヴァード様だけのことを考えていたいのですが、そういうわけにもいきませんよ」

「僕はセレフィアだけのことを考えているよ」


 彼はわたしに顔を擦り寄せる。まるで飼い主に甘える犬のような行動で可愛らしいと思うが、人の目があるので気恥ずかしい。


「天使さま。その人は天使さまのこいびとなの?」


 いつの間にかわたしたちの近くにきていたハウロ君が、明るい声でそう問いかけてきた。


「そうだよ」

「違います」


 わたしとシルヴァード様は同時に答える。わたしは気にせずに微笑みながら、ハウロ君の頭を撫でた。


「怖いお兄さんたちはいなくなったから、安心してね」


 ゆっくりとハウロ君の頭を撫でていると、食事を終えたのか子どもたちを連れたルーミさんがやってきた。彼女は「先生」と呼ばれる女性である。


「本当にありがとうございます、セレフィア様。彼らは大きな音を鳴らしてくるので、子どもたちが怖がっていたので困っていたのです。日がありましたら、どうかまた、子どもたちに会いに来てください。みんな、天使様に会いたいと言っているのですよ」

「天使さま、一緒に遊ぼう!」

「天使様、大好き!」


 可愛らしい子どもたちに笑みを零していると、シルヴァード様に再び腕を引かれた。表情は見えないが、彼がむすっと不機嫌になっていることが伝わってくる。


 元気に手を振る子どもたちを見送って、シルヴァード様に向き直った。


「シルヴァード様。先程は助けてくださり、ありがとうございました」

「僕がセレフィアのこと、ずっと守ってあげる」


 色んな意味が含まれている気がしたが、これ以上彼の機嫌を下げたくはないので、微笑んで感謝の言葉を伝えておいた。

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