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Entrance to the extraordinary

この世界には、表裏一体という言葉がある。


我々人間は、いつもすぐ目に入る表舞台の事ばかりを見ていて、裏の世界にはまるで興味を持とうとしない。


平和に日常を過ごすだけなら、それだけで十分だからだ。


朝当たり前のように目覚め、朝食を取り、身支度をして仕事や学校へ行く。


昼、会社の同期や学校の同級生と一緒に過ごし、午後も当たり前のように日常を送っていく。


夜、当たり前に家に着き、夕食を取り入浴をして当たり前のように眠る。


そうやって当たり前の日常を当たり前のように繰り返すのが普通なのだ。


だが、ふと気になったことはないだろうか?


我々のこの当たり前と思っている日常が、何かの上に成り立っているのだとしたら。


我々がいるのが表舞台なのだとしたら、舞台裏はどのような世界なのか。


では、今からお見せするとしよう。


この世界で、表舞台が平和に過ごせる当たり前を作っている、舞台裏がどのようなものなのかを……。











『今回のターゲットはこの先にいる。油断するなよ』


夜間、薄暗い路地裏といえば何かが起こりがちではあるが、その定番は今もまた形になっていた。


路地裏を猛スピードで走り、黒いフードを被っている人間が無線機から伝えられる指示を耳にしながらターゲットを追いかけていた。


ターゲットは必死に逃げるあまり、路地裏にあるゴミ箱を倒す音や焦るあまり大きな足音を立てる一方、フードの人間は闇の中を泳ぐかのように気配を感じさせずターゲットの背後を追っていた。


「わかっています。この程度、遅れを取るつもりはありません」


フードの人物はそう短く答えると、路地裏の曲がり角を曲がる。


曲がり角を曲がった先には、こちらにナイフを向け身体を震わせる男が路地裏の行き止まりに立っていた。


「くっ、来るんじゃねえ……!!それ以上俺に近づくな!!」


男はかなり興奮した様子でこちらにナイフを向けたまま、肩を震わせながら脅してくる。


すると、フードの人物は静かに視線を向けながら口を開いた。


「……あなたには、二つの選択肢が与えられます」


フードの人物は男に向けて人差し指と中指を立て、見せつけるようにした。


「一つ、このまま武器を捨て大人しく投降する」


中指を折り、フードの人物は淡々と告げるように続ける。


「二つ、この場で貴方の腐った未来のために、処刑をされる」


そう男に言うと、フードの人物は自分が被っていたフードを脱ぐ。


すると、そこには白髪で短髪の少女が、夜の裏路地に光らせるように己の青眼を男に向けていた。


「ふざけんなっ……!!女の分際で、調子に乗ってんじゃねえぞ……!!」


男はそれでもなおナイフを捨てる様子は無く、先端を少女に向けていた。


「……警告はしました。それでもなお武器を捨てないというのであれば、それは貴方が選んだ未来です。指令に則り、貴方を処刑します」


そう短く告げると、少女は男に向けて左手を伸ばした。


その瞬間、男は一切喋らなくなり口から血を吐き出していた。


「……哀れなものです。大人しく投降していれば、命だけは助かったというのに」


少女は淡々といい、己の左腕が刀身に変化しており男の腹を貫いているのと憐れむように見ていた。


「任務、完了しました。死者一名、回収をお願いします」


少女は無線に向けて報告をすると同時に、男を貫いていた左腕の刀身を引き抜くと腕が元に戻った。


無線の先からは、司令官と思われる男性の声が聞こえてきた。


「処刑については?」


「確実にとどめをさしています」


無線からの問いかけに対しても、少女は淡々と答える。


「了解だ。回収班と共に車を回す。それに乗って戻ってくるといい」


「わかった」


短く返すと無線から意識を戻し、二度と動かなくなった男の死体に視線を向けた。


その目は恐ろしくも、どこか悲し気なように感じられた。


(……ガタッ)


少女が迎えを待っていると、不意に何かが動く物音が聞こえてきた。


少女は物音が聞こえた方向を驚いたように見ると、そこには路地裏にあったドラム型のごみ箱が倒れており隣には同い年くらいの男子が驚いた眼を向けていた。











(おいおいおいおい……なんだあれ……)


俺は目の前で起きた惨状に驚きを隠せず、また動くこともできなくなっていた。


もともと、俺は今日推しのCDの発売日であり、学校に居残りをさせられていたがために買いに行くのが遅くなり無事CDを買うことはできたが、一刻も早く帰りたいがために路地裏を通って帰ろうとしていた。


すると、どこからか怒鳴り声が聞こえてきて、逃げるようにその場を去ろうと思ったがやはりどうしても気になってしまったというのもあり、少し様子を伺おうと思って声のする方へ向かっていった。


すると、そこにはナイフを持った男がフードの少女に向けて脅している現場を見てしまったのだ。


ドラマ的な展開だと思いつつも事件なのかと思い、警察に通報しようとしていたが目の前で事件が起こって適切な行動を取れる人間はそういるだろうか。


少なくとも、日頃からそういう想像をしていないと大人でもパニックになってしまうのは当然だろう。


俺はただ、物陰に息をひそめて現場の成り行きを見ていただけった。


少女も男に向けて何か話しているようだったが、距離が離れていた為会話の内容まで聞き取ることができなかった。


その後、「ジャキッ」という肉が切断されるような音が聞こえ、その音が人体に対し刺さった音だということを理解するのにそう時間はかからなかった。


俺は脳裏に、先ほどのフードを被っていた少女が刺された光景が描かれ、恐怖に身を縮ませてぎゅっと目をつむった。


そして、数分が経ったであろう頃合いにうっすらと目を開けると、そこには自分の想像していた光景とは反対の光景が広がっていた。


少女が左腕を男に向けて伸ばしていると思うと、その腕が刀のようなものに変化しており、それが男の腹部に刺さっていたのだ。


男は少女を怯えるような眼を向けており、口から血を吐き出しているように見えたが既に息は無いようなった。


(……ガタッ)


俺は少女が男を殺した現場を目の当たりにして、無意識に身体を動かしてしまった。


その時に、足元にあったゴミ箱を蹴り倒してしまい、物音を立ててしまったのだ。


そして、しっかりとその音を少女は聞いていたらしく、少女は驚いた視線を俺に向けてきていた。











(一般人……?この場を見られた……?)


私は今、凄く焦っている。


私たちの組織は、一般社会とは隔離された裏世界において、この活動が誰かに見られてはいけないというのが絶対条件だった。


だけど、この絶対条件を破りかねない状況になってしまった。


私は自分が焦っているのを悟られないように視線を外さないように彼をずっと見ていた。


しかし、内心はかなり焦っており背中には冷や汗が伝うのを感じる。


私は必死に思考を巡らせ、この場を切り抜ける案を絞り出した。


「……見た?」


それは、「敢えてそのまま何か見たかを聞いてみる」ことだった。











(今、何て言ったんだ……?)


俺は必死に言われたことの意味を考えていた。


少女は「見た?」と聞いてきた。


この場において少女が聞いてきたのは、少女が男を殺したのを見たかという意味で間違いないのだろう。


だが、ここで正直に見たと答えればどうだろうか?


男を躊躇いなく殺した少女だ。


次は俺の命が散ることになるかもしれないのだ。


ここは相手の意図しない回答を、だがYESの意味として取られないようにしなければならない。


任せろ、俺はこういう状況でのコミュニケーションの力はある方だと思っている。


「いいや、俺は君の下着なんて見てない」


その瞬間、「カチッ」と実際に踏んでいないはずの地雷を踏んだような感覚に陥った。











正直に言おう。


私は彼が言っている意味が全く分からなかった。


私は私がしたことに関して何かを見たかという風に問いかけた。


すると、彼は下着を見ていないと言ってきた。


彼はこれから下着を盗もうとどこかの家に忍び込もうとしていたのだろうか?


私には全く理解ができていなかった。


「あなた、本当に何も見ていないのね……?」


私は再度、回答の意味を認識する意味も兼ねて彼に問いかけてみた。


明らかに彼は何かを隠している様子でもあったし、私も警戒をしつつ彼のことを観察していた。


その時、路地裏に黒い車が三台入ってきて、路地裏の退路を塞ぐかのように車を停車させ中からスーツを着た人間がゾロゾロと降りてきた。


中でも真ん中に立っているガタイのいい男が大声で周りの部下たちに指示を出した。


「回収班は遺体の回収、及び現場の復旧作業を急げ!!」


指示を出すと、今度は私の方に視線を向けた。


「して、彼は誰だ?」


私を見ながら彼のことを指差し、問いかけてきた。


「彼は恐らく処刑の現場を目撃した一般人です。言質はまだ取れていませんが……」


彼はよくわからないが見ていないという発言をしていた。


だが、流石に私もそう簡単に騙されない。


少なくとも、私にこの現場を見たということを悟らせないための嘘であることは確信を得ていた。


「なるほど……目撃者か」


そう呟くと、彼の方にゆっくりと近づいていった。











(遺体の回収?現場の復旧??こいつらは、この女の子の仲間なのか……?)


俺は頭の中を必死にフル稼働させ思考を巡らせていた。


(そもそもこいつらはなんなんだ……?)


まず、少女を含め彼女達が何者なのかも全くわからない。


その状況で思考を巡らせたところで、何もわかるはずはなかったのだ。


すると、彼らの中からでも上の者のような男が俺の近くにやってきた。


俺は少し身構えながらも、様子を見ることにした。


「突然このようなものを見せてしまってすまない。大丈夫か?」


男は俺に心配するような様子で問いかけてきた。


「正直、何が起きているのかまったくわかりません。とりあえず、彼女が無事だったようでよかったです」


俺は白髪の少女に視線を向けながら、なるべく平然を装うようにして話した。


すると、こちらをじっと見ていた少女と視線がぱっちり合ってしまった。


どうやら少女は驚いたような様子だった。


「はっはっはっ!!無事でよかった、か!!」


男は路地裏に響くような大きな声で笑い始め、俺の背中をバシバシと叩きながら愉快そうにしていた。


「確かに、こんな路地裏にこんな現場で少女がいたら心配はするな?」


男はひとしきり笑った所で落ち着くと、俺に向かって真剣な表情で話しだした。


「だが、現実はそう甘くない。今回はこの現場に君も居合わせて、たまたま無事で済んだが、もし次同じような状況になった時。君が無事であるという保証はないというものだ」


急に怖いことを言いだす男に対し若干の恐怖心を抱きつつも、それを悟られないようになるべく平然を装って話を聞いていた。


「君には少しついてきてほしい所がある。今晩、君がここで見たことについても私から説明をしよう」


そういうと、男は俺に「ガチャッ」と重い音を立てながら拘束具で腕の自由を奪うと、乗ってきた車に押し込んだ。


右後部座席に少女が乗っており、左後部座席に男が乗り真ん中に俺が乗せられた形だ。


「なに、手荒なことはしない。肩の力を抜いて構わない」


そういうと、俺たちを乗せた車が動き出す。


ふと気が付くと、隣に座っていた少女は最初に見た時のようにフードをすっぽりかぶっていた。


そして俺たちを乗せた車は、俺の意思など関係なく発進していったのだ……。

初めましての方ははじめまして、昔知っていてくれた方はお久しぶりです。

ヤイハです。


三年程失踪をしていてすいません。

今回、「日常を守るため、殺し屋として非日常を戦い抜いてます」をリメイク、続投をするべく頑張っていこうと舞い戻ってきました。


とりあえずは一定のペースで進行していけるよう『毎週金曜日13時更新』を目指していきますので、これからよろしくお願いします。


感想やレビュー、ブックマークなどもお待ちしております。

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