寒い冬には暖かいものを。
ある冬の日。
家でぬくぬくしていると、突然ベルが鳴った。
「あれ、宅急便なんて頼んだっけ」
そう思いながら、玄関から外を覗く。
そこから見えたのは、白い肌で、ベージュの帽子を被り、赤い手袋をつけた雪だるまだった。
「ああ、もうそんな時期か」
とりあえず扉を開ける。
「こんにちは、寒い中ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそわざわざ出てきて頂いてしまって」
凍えるような声だ。
「どうせならあったかい飲み物でも飲んで行かれますか、このままだと体が冷えてしまいますし」
そういいながら、家の中に入るよう手招きする。
「馬鹿言わないでくださいよ。こちとら雪で育ってきたんですから、体の出来が違います。余裕ですよ、このくらい」
「それはそれは。いらない気遣いだったかもしれませんね」
「まあまあ、お話はこのくらいにして、持ってきましたよ」
そう言うと、雪だるまは黄色い花のようなものをポシェットから取り出した。
「どうぞ、約束のものです」
「ありがとう。今の時期、君のような人がいないとまともにこれが手に入らないからね」
雪だるまからそれを受け取る。そのまま雪だるまは一礼して去っていった。
「さて、代わりも届いたしそろそろ寝るか」
届いたものを左胸のポケットに入れ、温めておいたベッドに入る。
「それにしても、今日は世界が一段と綺麗に見えるな」
枕の上から見える窓に月が見えた。
その光に包まれて、眠りについた。
朝の日差しが頬を照らす。
「ああ、よく寝た」
あくびをしながら布団をたたみ、寝巻きから着替える。
着替えの途中で、突然ベルがなった。
「あれ、宅急便なんて頼んだっけ」
そう思いながら、玄関から外を覗く。
そこから見えたのは、白い肌で、ベージュの帽子を被り、赤い手袋をつけた男性だった。
「宅急便でーす」
「ああ、どうも」
どうやら自分宛ての荷物だったので、とりあえず受け取る。
「ありがとうございました」
「だれからか書いてないな、なんでだろう」
疑問に思いつつも、包みを開ける。
中には、黄色い花のようなものが入っていた。
「なんだこれ、花?」
よく分からないまま、花のようなものを手に持つ。
なぜか、懐かしさを感じた。
「そういや、最近帰ってなかったな」
「仕事ももうすぐ区切りがつくし、そろそろ顔くらい見に行くか」
「よし、今日も頑張ろう」
仕事の準備を終え、玄関から出る。
「あれ、何か落ちてるぞ」
そこには、ベージュの帽子と赤い手袋が片方落ちていた。
読んでくださってありがとうございます。