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第1章80 歓喜

「「しゃああぁぁぁああぁぁぁ!!!!!!!」」

「やったああぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!」


 雄叫びと金切声が響き渡る。ノイキャン? 知るかぁ!


「レッツゴォベイビィーーーー!!!!!!」

「ナイス! ガッチッで、ナイスゥゥゥゥゥ!!!!!」

「うわぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!!!!」


 あかん、集中切れた途端に頭のネジがはじけ飛んでどっか行った。

 しばらく防音室がなければ通報確定の大絶叫で健闘を称え合った。

 ひよりはひたすら大号泣だ。そりゃそうだ。嬉しいよな。安心したよな。


 最後の戦闘で、俺たちはAceのチーム相手に3キル、あとひよりのODでも2キル入ってたから計11キル。


 あのときの残存数の残りを全てAceのチームが取ったとしても、それまでの6キルと合わせて13キルだから、順位ポイントの差で届かない。


 あとはキルログの数え間違いがないことを天に祈るしかない。


 気づけば運営の人から通話に来てくださいって言う要請が何度も入っていた。やべぇ、興奮のあまり全然気づかなかった。


「やべぇ、2人とも、インタビュー」

「あっ、忘れてた」

「うぅぅううぅううぅ、むりぃぃいっ」


 確かにひよりは無理そうだ。とりあえず俺とSetoで急いで通話を繋げる。


「あっ、なんとか繋がったみたいです。”おひるね日和”の皆さん、聞こえますか~?」

「はい、聞こえます。すみません、遅くなりました」

「申し訳ないです」


「いえいえ、大興奮してらっしゃるのはそちらの配信から伝わってましたので。あれ、楠さんは」

「あ~ひよりはちょっと、まだ泣き止めてないので」


「そうでしたか。まぁでも仕方ないですね。ここまで本当に頑張ってきましたし、色んな感情が爆発しちゃったんでしょうね」

「そうですね。落ち着いたら来れるかもなのでお許しください」


「お気になさらず。さて、H4Y4T0さん、最終戦も魅せてくれましたねぇ。あのハイドは大笑いしましたよ」

「あぁそうですか? 安地が寄ったらやろうって言ってたんですよ。終盤なんでタイミングも最高でしたし。上手くいってよかったです」


「はい、そして最後の組み立ても素晴らしかったですね。セイメイのODを撃ってセイメイの結界を張らせてからロビンフッドのOD。今大会何度も魅せてくれた美しい戦略が最後も見事に決まりました」


「そうですね。セイメイ環境の1つのメタになると思ったので、今後の大会でもロビンフッドは採用を検討しようと思ってます」

「たしかに。レインさん、今回はアルセーヌとのシナジーも合わせて、ロビンフッドという存在がかなり際立つ結果になりましたね」


「そうですね。新しい英霊の追加や様々な修正で、その時々のメタ構成っていうのが回っていくのが健全だと思います。そういう意味では、今回H4Y4T0君が示したロビンフッドという英霊は、今後の環境で大きな役割を持つことになるんじゃないかと思いますね」


「若干19歳にしてプレイ環境に影響ですか。恐ろしいですねぇ。それでは続いてSetoさんにお聞きします…」



インタビューが終わり、待機所に戻る。


「ごめん、2人とも、落ち着いたけど入るタイミング逃しちゃって」

「大丈夫だよ。多分もう1回順位でインタビューあるだろうから、そんときに話しな」

「まだワンチャン2位かもしれねぇしな」

「ほんとそれだよ。頼むから数え間違いとかなしでいてくれぇ」


 どうしても拭いきれない不安に胸を潰されそうになりながら、下位からのランキング発表を待つ。


 3位からインタビューがあるみたいで、”暴君Nero”がそのまま入ったみたいだ。インタビューが終わり、いよいよ最後の2組。頼む…。


「それでは最後の発表となります。この画面に表示されたチームが、栄えある第3回Ragnarok Cupの優勝チームです。優勝は…」


 画面が高速で20チームの画像を転換し、最後に重低音とともに映し出されたのは、


「トータルポイント80ポイント、H4Y4T0率いる”おひるね日和”が優勝です!!」


「「「よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」


 3人とも最終戦で喜びすぎて事ここに至っては安堵のため息しか出てこなかった。数え間違えてなくてよかったぁ。


「第2位は”魔王と忠実な下僕”となったわけですが、その差はわずか1ポイントでした」

「ほんとに僅差でしたねぇ。あっ、やっぱり自殺で守った3ポイントあったらひっくり返ってるじゃないですか!」

「うわ~、また鳥肌です。今日は温かいお風呂にゆっくり浸かろうと思います。それではまず、準優勝の”魔王と忠実な下僕”にお話伺いましょう…」


 Aceのチームインタビューの最後に、俺たちにメッセージが送られた。


「つぎはあじあたいかいでたたきつぶすからな。くびあらってまってろこのやろう」


「だってさ、Seto」

「おう、負けねぇさ。今回の屈辱は忘れねぇ」

「Aceさんに悪い日本語教えてる人誰なんだろう」


 Setoの言う屈辱ってのは、最後1on2で粘られたことだろう。見返したら俺の介入がなくてもダメージトレードは優勢だった。ただ、もっと早く倒さないとプライドが許さないんだろう。


 また練習しまくって化け物度合いに拍車がかかりそうだ。俺としては頼もしい限り。


「それでは最後に、優勝となった”おひるね日和”にインタビューしていきましょう。聞こえますか~」

「「は~い」」

「は~い、さっきはすみませんでした」


開口一番にひよりが先ほどの不在を詫びる。


「いえいえ気にしないでください。それでは今回は楠さんにたくさん質問させていただきましょう。今のお気持ちはいかがですか?」

「本当に…本当に嬉しいです。H4Y4T0とSetoに、少しは恩返し…できたかなぁって…グスッ、あはは、ごめんなさい。また泣いちゃう」


「大丈夫ですよ。今大会、楠さんは本当に素晴らしい活躍を見せてくれました。特にグレネードの扱いにはたくさんの方が驚かされたと思います。あれも特訓の賜物ですか?」


「はい…。H4Y4T0が、あたしが自信を持てるように…2人よりも上手いと思えることを見つけるっていう課題をくれて…それで、頑張りました」


「そうでしたか。この大会、本当にあなたの投げ物がチームを救った場面は多かったと思います。最終戦の初動ファイト、あれには実況席も観戦も大盛り上がりでしたよ」


「あはは、親友の美月が相手だったので。最終戦だし、絶対負けられないって気持ちで戦いました」


「あとは何と言ってもセイメイの扱いですね。全キャラで屈指の難易度と言われるセイメイを、本当に上手く使いこなされていました」


「全部H4Y4T0のお陰です。セイメイ最初は難しくて何度もくじけそうになったんですけど、今では一番好きになりました」


「そうですか。この大会、その前から3人はコーチングを続けてきましたよね。それを見てファンになったという方もすごくたくさんいると思います。応援してくれた方々に何か伝えたいことはありますか」


「はい。本当に応援してくださった皆さん、ありがとうございました。これまで、H4Y4T0とSetoと出会うまでは、TBするのが辛くて…。何度も…何度も辞めようと思ったけど、ずっと応援してくれたみんな、2人と出会ってから応援してくれるようになった人たちのお陰で、これからも楽しくTBの配信が出来ます。本当に、ありがとうございました」


「はい、ありがとうございます…あはは、聞いてるこっちもちょっと涙ぐんじゃいました」

「いや~あの頑張りを見てきたらねぇ。込み上げてきますよねぇ」


「では最後、H4Y4T0さんとSetoさんにお聞きします。お二人にとってこの大会、そして教え子との日々はどういったものでしたか?」


「そうですねぇ。まず、ひよりには本当に感謝しかないです。コーチの経験がなくて未熟な僕たちに必死でついてきてくれましたし。とにかくやる気と根性がすごいんですよ。


僕らもそれに当てられてどんどん教える内容が濃くなっていって。気づけば競技シーンの基準でしか話さなくなってて。でも、今回見てくれた人なら分かりますよね。ひよりがどれだけ頑張ったか。どれだけ強くなったか。断言します。楠 日和は強いです。最高の弟子を持てたことを誇りに思います」


「ありがとうございます。続いてSetoさん、お願いします」


「はい、そうっすね。大体H4Y4T0が言ってくれましたね。すごい奴です。マジで。こんなに負けん気が強くて、倒しても倒しても向かってくる根性があって、努力も手を抜かない。


成長の速度が尋常じゃないんですよ。1ヶ月前までダイヤの底舐めてた奴が、今では俺から3割取るんすよ? 俺が弱ぇみたいになるから止めてほしいんですけど。追いかけられる恐怖を教えてもらって、タイマンを繰り返すなかで俺自身も強くなれたんで。感謝してます」


「はい、ありがとうございます。楠さん、師匠たちからのお褒めの言葉、いかがでしたか」

「…………うっ………本当に……グスっ、ありがどうございまじだぁ」


「はい、これ以上は我々の涙腺も持たないのでこの辺にさせていただきます。以上、第3回 Ragnarok Cup ver Triumph Bullet ”本気ガチ”、優勝を果たしました、”おひるね日和”の皆さんでした。ありがとうございました」

「「ありがとうございました~」」


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