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第1章53 事件発生

「各部隊が移動していくなか、”おひるね日和”が確保した建物の隣に飛び込んできたのはG1N率いる”世界の〇〇”。神田 アキがリーダーの”TBアカデミー賞”はそれを見て接近を取り止めました」


「さすがはゴクウのODですね。ランドマークも近かったし、ひとっ飛びで到達しました。しかしこれより”おひるね日和”が早いってのが異常なんですよね」

「仰る通り。そういえばレインさん、H4Y4T0から話を聞いた時に序盤の込み合ってないときに神視点で映しといてくれってって言われたんですよ」


「へぇ~、そうなんですか。何か思惑があるんでしょうけど何ですかねぇ」

「はい、恐らく今がそのタイミングかと思われるんですが…注目しましょう」


 まだ周囲にいるのは俺らを含めて3部隊。神田さんのとこは隣が取られたのを見て接近を辞めた。仕掛けるならここだな。


「二人とも、やるよ」

「しゃあ、キターーー。お前らクリップの用意しとけよぉ」

「ドキドキしてきた」

「Seto、ODは?」


「あと20秒」

「OK。発動と同時に仕掛けるから。二人ともマウスカーソルを合わせといてね」

「「ラジャ」」


 俺はスキルを発動してシルフィを隣の家の屋根付近に降り立たせる。


「溜まった。使ったぞ。いつでもいける」

「いくぞぉ!」


 アルセーヌのOD発動とほぼ同時に、ロビンフッドのOD、”霊鳥爆散《シルフィ・エラプション”を発動。屋根に配置していたシルフィがその姿を散らせると同時に、球状の衝撃波が広がる。


 これを食らうとバリアに50ダメージが入るし、防壁などを破壊することができたりもする。バリアへのダメージであって肉体へのダメージはないんだけどね。


 この衝撃波で与えたバリアへのダメージは、通常の戦闘での与ダメージと同様に自分が身に纏っているバリアの進化に計算される。ただし、それは敵が《《着用している》》バリアに限りだ。


 つまり、この衝撃波が来ると分かった瞬間に着ているバリアを脱ぐと、バリアは削れるけど与ダメージとして計算されないから、相手のロビンフッドのバリアが進化するのを防げるってこと。


 OD発動から衝撃波が放たれるまでには1.5秒かかるので、余裕で着脱は可能だ。


 ある程度TBをやり込んだプレイヤーならほぼ反射的にこの着脱を行うし、それが常識。わざわざ相手のバリアの進化に付き合う必要ないからね。


 ただし、その一瞬が狙われてるとしたら?


「だらぁぁぁ! 紫2つ盗ったどぉぉ! 」

「あたしも抜いた! 青取れたよ」

「ここ、全員裸だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 これが俺がロビンフッドを採用したもう一つの理由。こいつはアルセーヌとのシナジーがめちゃくちゃ高い。


 ロビンフッドのODで着ているバリアを脱がなければこちらのバリアの進化ダメージが貯まる。脱げばアルセーヌのODで掠め盗る。どっちに転ぼうがおいしくなるわけだ。


 本番で度肝を抜けるように、カスタム期間中はこのコンボを《《わざと》》使わなかった。お陰でみんなホイホイ脱いでくれたよ。


神視点、きっちり映してくれたよな?


「H4Y4T0がスキルを飛ばしてとG1Nたちが籠る建物の屋上に設置しました」

「あぁ、これでバリアを進化させようってことですか。でもこれ普通ですけどね」

「ですねぇ。あ、ちょうどODを起動しました。H4Y4T0が着ているのは白バリアですから3人全員のバリアに50ダメージが入れば丁度青に進化できます」


「ただ、当然脱ぎますよね」

「はい、やはりH4Y4T0のバリアは白のまま…あれ? Setoと楠のバリアって白でしたよね?」

「えっ? なんで? 紫と青になってる…ちょっと待ってください…G1Nの部隊に切り替えて!」


「は、はい…えっ、全員バリアを着なおしてない…あぁっ!」

「アルセーヌのODで一瞬で全部盗んだんだ! いやガチか! こんな組み合わせあるんだ!」

「…いやちょっと鳥肌立ってます今。初見殺しもいいとこですよこれ」


「しかもこのコンボの凶悪なとこって、バリア脱がなかったとしても進化ダメージが入るから別にいいんです。出来ることといえば回復しないってことですけど、リスク考えたらなかなか出来るかどうか…」


「”世界の〇〇”は何が起きたか分からないでしょうねぇ」

「逆に”おひるね日和”は大盛り上がりでしょうね。ほら、コメントで大爆笑してるって」

「おまわりさ~ん、こいつらで~す」



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