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第1章45 決意

 あの後、軽く1時間程配信してから早めに切り上げることにした。今日は色々気疲れもしただろうし、これまでの練習の疲れも溜まってるだろう。


「えぇ~、でも習慣になってるっていうか」

「まぁやらなきゃ気持ち悪いとこだけにしときなよ」

「じゃあ2人も休むんだよね?」

「ん~、まぁ?」

「それなりには」

「……抜け駆けしようとしてるでしょ」


 抜け駆けってなんだよ。どんだけ俺らに差をつけられたくないんだ。俺たちに疑いを向けるひよりに思わず苦笑が漏れた。


「わかったから、俺らも今日は公式配信やらもあったし、早めに切り上げるよ」

「ほんとお前も大概負けず嫌いだな」

「だってせっかく縮めた距離がまた開いちゃうのやだし」

「おいなんかこいつ前より火がついてねぇか?」

「だよね。獰猛な犬みたいな」

「違うよ? あたしはかわいいチワワだよ?」


 なんか普段よりもトーンを上げて可愛こぶった声が聞こえた。なんか媚びに媚びた感じで背筋がゾワッとする。


「うわ」

「キッツ~~」

「なっ!……」


ドオォォン!


 響く重低音。いやマジで机大丈夫か? 割れてない?


「ほら、出たぞ本性」

「はっは~、な~にがチワワだよ。土佐犬の間違いだろ」

「Setoおぉぉ! かよわい女子に向かって土佐犬ってなによ土佐犬ってぇ!」

「じゃあかわいい土佐犬ってことで」

「見たことないわ!」


「聞きましたか配信をご覧の全国の土佐犬を愛する皆様! こちらの楠 日和さんが今、かわいい土佐犬なんていない! 漏れなく不細工だと言いましたぁ!」

「ちょっ、人聞きの悪いこと言わないでよ! そこまで言ってないでしょ!」

「じゃあなんですか? かわいくないってことは不細工ってことじゃないんですか? そう捉えられても仕方がないですよねぇ?」


「うっ…H4Y4T0も黙ってないで助けてよ」

「ごめん、俺のじいちゃん土佐犬飼ってるから」

「あ~もう! すみませんでしたぁぁぁ」


 しばらくわちゃわちゃとして配信が終わる。今日は盛沢山の一日だった。けど、これまでで一番得たものが多かった一日でもある。


 ひよりは多分もう大丈夫だ。大会が終わっても前みたいになることはないだろう。


 数日後には大会前のカスタムが始まる。ひよりはあまり経験がないだろうからここは俺とSetoがしっかり引っ張らないとな。


 カスタムはあくまで本番の予行演習であって色々なことを試す場だ。本番に向けてもちろん本気で挑むけど、その結果に一喜一憂する必要はあまりない。


 カスタムで全く結果が振るわなくても本番で優勝するかもしれないし逆もまた然りだ。


 どのチームも試行錯誤しながら勝ちに来る。構成をいじらずにひたすら練度を上げるチームがあれば、様々な構成を試して一番上手くいったものを採用するチームもいる。


 20チームが構成やムーブを考えながら変えてくるから、昨日上手くいったやり方が明日も、本番も上手くいくとは限らない。常に情報を更新して最新の環境に適応させる必要がある。ここまで含めて考えるのが俺の仕事だ。


 久しぶりの大会、名を売る絶好の機会、ここまで手塩にかけて育てた弟子の晴れ舞台。


 万が一にも不甲斐ない結果なんてあっちゃならない。


 負けられない。絶対勝つ。いいな、このプレッシャーだ。この重圧がたまんねぇ。


 これがあるからIGLは最高なんだ。カスタムが始まるのを待ち遠しく感じながら、俺は思考に耽った。

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