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第1章41 衝突

「気にしなきゃいいって言ってもひよりは多分気にしちゃうんだよな」

「うん、応援してくれてるみんなのコメントも見たいから。でも、どうしてもネガティブなコメント見るとそっちにばっかり気を取られちゃうから…」


「コメント見るなってのも違うしね」

「うん、それじゃあなんのために配信してるのか分かんない。でも消して効いてるって思われるのも悔しいからほんとにひどい暴言みたいなのしか消さないようにしてる」


「でもさ、それをみて悲しい気持ちになるのってひよりだけじゃなくて、日和を応援してくれてるリスナーの人たちもじゃない?」

「……うん。そうだと思う」


「そういう人たちのためにもコメントは消した方がいいと思うけど。そういう荒らしをリスナーが叩き出したら収拾つかなくなるし」

「だな。大会のコメ欄みたいな地獄絵図になる。癪なのは分かるけど、その意地は捨てたがいいと思う」


「2人の言うことも分かるけど、なかにはアンチじゃなくて善意でコメントしてる人もいるから…。今日こっちの武器にしたら、とか。そういうのって荒そうと思って書いてるわけじゃないんだろうし」


「だけどそれで実際ひよりが不快になってるなら荒らしと同じでしょ」

「ひよりの配信なんだから、ひよりと応援してくれるリスナーが楽しく過ごせないようにする奴らはいらなくねぇか?」

「そんな簡単に言わないでよ!」


 初めて聞くひよりの張り上げた声。今まで耐えてきた感情がここにきて俺たちと話しているうちに爆発してしまったみたいだ。


「あたしだって…あたしだって楽しく配信したいし、見てくれるリスナーのみんなにも楽しんでもらいたい! でも言われっぱなしが悔しいから見返したいって思うのは間違ってることなの?」


「そう思うのは間違ってねぇよ。そういうコメントを拾うのが間違ってるって言ってんだ! 癖になってんだよ、嫌なコメント拾うのが」

「目立つからしょうがないじゃん」


「だから俺もH4Y4T0も消せって言ってるだろ? 自分で楽しくなくしてるって分かんねぇのか?」

「強い2人には分かんないよ! 弱いとか雑魚とか言われる気持ちなんて」


「分かんねぇよ。俺らはめちゃくちゃ強ぇからなぁ。弱くて叩かれた経験は確かにねぇわ」

「この…また馬鹿にして」


 気づけばひよりは涙声になっている。悲しいってよりもSetoに本気で怒ってるって感じだ。感情が昂ってるし、言いたいことは分かるけどSetoの口調を柔らかくしないと引っ込みがつかなくなるかもしれない。


「Seto、もうちょい…」

「悪ぃH4Y4T0、ここは喋らせてくれ」

「…分かったよ。ただ言いすぎるなよ?」


「あぁ。で? お前はその意地のために一体いつまで自分と見てる奴らを不快にするんだよ」

「……」

「見返したいって思うのはいいさ。それもモチベーションになんだろ。だけど、お前がネガティブなコメントを拾う限り、消さずにおく限り終わんねぇだろ」


「でも気に入らないの何でも消すとか言われちゃったことあるし…」

「それも消せばいいんだよ」

「でもそしたら誰もいなくなるかもしれないじゃん!」


「はぁ? 馬鹿かお前は。何言ってんだ、今すぐコメ欄見てみろよ。お前のリスナーはそんな狂った連中しかいねぇのか?」

「ごめん、今のはちがっ…」

「いいから黙って見てこいよ。そんで自分がどんだけ馬鹿なこと言ったのか思い知れ」


 ひよりはコメントを見始めたのかしばらく沈黙が流れる。まぁ見なくても分かるけどね。


 ひよりも思わず口から突いて出たんだろうけど、嫌なコメントを消したら誰も残らないなんてある訳がない。そんなの大会のコメント欄よりもよっぽど世紀末だ。


 自分で言った瞬間に分かるようなことが、一瞬でも分からなくなってしまうくらいひよりは追い込まれていた。そう思うとこの子がどれだけ今まで壊れそうな心をギリギリのところで繋ぎとめていたのかがわかる。


 手遅れになる前に、俺たちで何とか出来ることがあるなら力になりたい。この時俺は決意を新たにしていた。


 誰も言葉を発することのないまま数分が過ぎる。


「……2人とも、ごめんなさい」

「お前の思ったとおりのコメ欄だったか? 寄ってたかってフルボッコにするようなカスで埋め尽くされてたか?」

「ううん…みんな…みんな励ましてくれた」

「たりめぇだろ。そいつらを楽しませるために配信やってきたんだろぉが。目ぇ曇らせてんじゃねぇよ」

「うん…やっと目が覚めた」

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