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第1章39 爆弾

 ひよりは銃を構えることなく佇んでいる。気持ちを落ち着けているんだろう。しばらくの静寂ののち、意を決したひよりが行動を開始する。その手に持っているのは…グレか!


「おぉ!」

「へぇ、なるほどなぁ」


 俺とSetoは見た瞬間にひよりの答えを理解した。そして同時に喜色の浮かんだ声が自然と漏れ出ていた。


 そうきたか! ひよりの言ってたきっかけってのは俺がひよりにグレ上手いねって褒めたときのことだろう。


 ひよりが手に持つのは壁やオブジェクトに張り付いてから爆発するスティッキー。それを眼前に立つデコイ目掛けて続けざまに投げつけた。


 デコイに次々とスティッキーが張り付いていく。近くのデコイが消し飛ぶと次第に狙うデコイの位置が遠く離れていった。


 百発百中とはさすがにいかないけど、少なくとも爆発の余波が届く範囲に着弾してる。


 俺が驚いたのはひよりが狙いをつけて投げるまでの《《間隔の短さ》》だ。


 グレは投げるモーションに入り腕を振りかぶると放物線が表示され、投げると大体どのあたりに着弾するか分かるようになっている。


 ただ、遠くに投げようとすると視点を上に向けないといけないので、放物線が描かれても、地面のどのあたりに着弾するかは見えない。


 放物線は着弾点まで描かれることはなく、途中で切れてしまうからだ。


 遠くに投げようとすればするだけ、慣れが必要になってくる。ひよりは狙う的が遠くなっても、投擲までの間隔がほとんど変わっていない。


 放物線のアシストに頼らず、ほとんど感覚で距離感を掴んでいる証拠だ。


 俺もSetoも当然グレの投擲は練習してるし、狙いも正確だ。ただ、ひよりと同じクオリティを出せるかと言えば否だ。


 狙いに関しては差はほとんどないけど、狙いをつけるまでの時間がコンマ数秒ひよりの方が確実に早い。


 今ひよりが狙っているデコイは限界飛距離の95m付近。最後に投げたスティッキーがデコイに深々と突き刺さり、粉々に吹き飛ばした。


「「……」」

「次いくね」


 黙っている俺とSetoに一言告げ、ひよりは集中した様子で今度はグレネードを手に取った。復活したデコイに再び投擲を始めるんだけど、今度は軌道が変わっている。


 さっきのスティッキーは直線的な軌道で投げてたけど、グレネードは空高くに投げて放物線を描くように投げてる。


 スティッキーは張り付いてから3.5秒後に爆発し、グレは投擲してから4秒後に爆発する。


 直線的に投げるよりも空高く投げるほうが、滞空時間が長くなるから着弾と爆発のタイムラグが少なくなる。


 爆弾は近くに投げられると危機を知らせる表示が出たり英霊が


「気をつけろ、爆弾だ!」


 といった感じで台詞を喋るので回避行動に移れるんだけど、どれだけ察知できても着弾と爆発の時間差がなければ間に合わなくなってしまう。


 当然、直線的に投げるより射程は短くなるし、放物線が表示されても視線が完全に上を向いているからあまり意味がない。避けさせないために必須のテクニックだけど、難易度が跳ね上がるんだよね。


 ひよりが空高く投げたグレは着弾からほとんど時間差なくデコイを吹き飛ばしていく。さっきより難易度が増しているのに、その投擲には迷いがなく、構えて投げるまでの動作が流れるように繋がっていた。


 俺が出した課題への回答を提示し終えて、ひよりがこっちに戻ってくる。

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