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第1章38 ひよりからの回答

「あ~、あいつかぁ。たしかにそれなら物資に関しちゃ解決するな」


 アルセーヌは最近追加された英霊で、俺が注目したのはそのODである”簒奪さんだつ紳士帽シルクハット”だ。


 このODを起動すると、周囲の半径120m以内に存在する物資を2種類自由に選んで掠め取ることができる。銃弾は別枠で取り放題だ。


 こいつの能力があれば、物資不足なんてないのと同じになる。武器と最低限の回復さえ拾ってしまえばあとは移動の途中でODで補充すればいい。


 終盤には近くに倒された敵のボックスもたくさん落ちるから戦闘しなくてもどんどん装備は強化されていく。生存ムーブにはぴったりの能力だ。


 戦闘に関与できる能力ではないので、競技シーンで採用率が高くなる感じはしないけど、このルールなら刺さる可能性が十分にあると感じている。


「追加されてちょっとの間はみんな触れてたけど、もうすっかり見なくなったよね」

「だな。物資が豊富なとこに降りるならそもそもOD腐りやすいし。でも確かに生存ムーブ主体になると刺さりそうだな。面白そうだ。多分使うの俺だろ?」

「さすがよく分かってるね。頼んだよ」

「任せろ」


 頼もしい限りだ。ODがシンプルで場面を選ばないので、溜まれば使うって感じで脳死で回せる。


 アルセーヌのスキルは”エスケープガン”で、先端に鉤爪のついたワイヤーガンを使って高所を取ったり高速移動を可能にするものなので、火力枠のプレイヤーと相性がいい。Setoが使うのがこのチームではベストだろう。


「あと、さっきセイメイ固定っていったけど、場合によってはひよりも最初の2戦は別キャラになるかもしれない。まずはセイメイでいってもらうけど一応頭に入れといて」

「うん、わかった! なんでもやるから!」

「ありがと。じゃあいつもどおりやっていきますかね。ノンレートはマップが違うから大会想定の練習はできないし、いつもどおりやっていこう」

「うっし、んじゃいつもどおり訓練場行くかぁ」


 カスタムが始まるまでは特にやることは変わらない。ノンレートに潜るときに俺とSetoが構成を変えてみるくらいだ。


 今日も今日とて訓練場でひよりとSetoのタイマンから始まると思っていると、


「あ、あのね!」


ひよりが何やら緊張した様子で俺たちを呼び止めた。いつもと明らかに様子が違う。


「どうしたの?」

「何だぁ? 大会が近づいて緊張してんの?」

「そりゃ緊張はするよ。でも違くて、2人に見てほしいの。前にH4Y4T0から出された課題へのあたしの答えを」

「…へぇ」


 俺がひよりに出した課題。”俺やSetoに負けない何か”を見つけること。



 俺たちのコーチングが終わっても、ひよりが自信をもってTBをプレイできるようにって考えて課したものだけど、こんなに早く答えを持ってきただって?



 特に期限を設けたりはせず、このコーチング期間中になにかきっかけやヒントを掴めればいいかと思って出していたものだ。


 あの課題を出して2週間くらいか? ひよりのことだ、冗談でこんなこと言ったりしない。


 つまり、ひよりは2週間で俺やSetoよりも自分のほうが上手いと思えるだけの技術を身に着けたってことになる。


ほんと、俺の予想をどんどんいい意味で裏切ってくれるよ。


「正直、きっかけ掴めたら御の字と思ってたんだけど、まさかホントに自分だけで見つけたんだ」

「自分だけっていうのは違うかな。きっかけをくれたのはH4Y4T0だから」

「あれ、俺なにかこの課題に関してアドバイスしたっけ?」

「H4Y4T0は何の気なしに言ってたからね。覚えてなくて当然かな。でも、これから見せたら思い出すかも」

「そっか。じゃあ見せてもらうよ。俺やSeto、つまりプロにも負けないひよりの強みを」


 この1か月、コーチングを始める前と今でひよりは本当に強くなったと思う。Setoとのタイマンも、悲願の初めて勝ってから更に伸びが加速して、今では10先で2勝はコンスタントに挙げるようになった。


 たまに3勝することがあってSetoも目の色を変えて練習に打ち込んでいる。


 ただ、それも当然勝ち越したことは1度もない。まだエイムやフィジカルではSetoはおろか俺にも及ばない。てことはそれ以外ってことになる。


 俺とSetoから離れ、訓練場の中央に移動したひより。


 これから何を見せてくれるのか、ひよりの出す”答え”が気になってわくわくしている自分がいた。


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