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第1章26 Setoのプライド

 4月も半ばを過ぎた。


 3人での配信もすっかり板につき、ひよりへのコーチングは回を追うごとにより実践的で細かいものになっていた。


「ひより、結界を使って詰めるときは体が結界からはみ出る瞬間にジャンプするかスライディングした方がいいよ」

「どうして?」


「結界って四角錐でしょ? だから、ただ走って結界を通りぬけようとするとまず頭が結界からはみ出るんだよ。狙いやすいから被弾するにしてもヘッショを食らわない動きを意識して」

「うん、わかった」


 俺とSetoが本気でひよりを強くすると決めたあの日以来、2人はひよりへ教える内容を引き上げた。


 具体的に言えば、競技シーンを基準にした。つまり、俺たちと同等の水準を求めることにしたわけだ。


 始めたてのころよりも指摘されることは増えるし、求められるレベルも高くなる。やらないといけないことが多すぎて、頭のなかがごっちゃごちゃになっておかしくない。


 でも、ひよりは食らいついてきていた。これまで無理とか出来ないって言葉を使ってこない。モチベに一切の陰りはないみたいだ。


 ただ、指摘するだけじゃ気が滅入るってのもまた事実。俺自身、褒められて伸びるタイプだし、伸びているところもしっかり伝える必要がある。


「結界の張り方はだいぶ上手くなってるよ。だいぶセイメイ使いが板についてきたね」

「ならよかったぁ。でもまだタイミングが早かったりするから気を付けないと」

「かといってケチりすぎるのもダメってのが難しいんだけどね」

「ほんとそう! でもおかげで最近はセイメイに愛着湧いてきたし」


 分かる。セイメイって使いこなすのが難しくて奥が深い分、慣れてくると結構クセになるんだよな。あと、その難易度の高さゆえにセイメイが使えるっていう意味合いは重い。


 ピック率が高いけど上手いプレイヤーが少ないから、《《ちゃんと》》使える人の需要が常にめちゃめちゃ高い。


ひよりが俺たちの教えたことをマスターできれば、今後大会とかに参加するときに強みになる。俺がひよりにセイメイを勧めた理由の1つでもある。


「うし、じゃあまたタイマンやるぞ。結界張っての近距離での撃ち合いな。さっきのH4Y4T0のアドバイスの練習にもなるし」

「オッケー、今日こそは!」

「今日《《も》》の間違いだろ」


 お~、やってるやってる。この光景ももはやお馴染みだな。これまでのような撃ち合いに、セイメイの結界を挟んでのインファイトも新たにメニューに加えた。


 セイメイを使う以上避けて通れない戦い方だし、リダイレクトやこれまで教えてきたキャラコンの練習にもなるからおすすめ。


 ちなみに、キャラコンお化けのSetoが一番強くなる戦い方でもあるんだけど。


「おらおらどしたぁ。当たんねぇよ」

「くっそ…、相変わらずキモイ挙動して!」


 セイメイの結界はその内側と外側を遮断するから、お互い中にいれば当たるけど、中から外、外から中には銃弾が通らない。


 だからこそ、結界を出たり入ったりしながらの駆け引きが生まれてくる。


 ひよりも必死だけど、さすがに踏んできた場数が違うな。こればっかりはそう簡単に埋まるもんでもないしね。


 俺から見てもキモいって感じるぐらい空中でぐいぐい動きがねじ曲がってる。あんなに動きながらエイムもえぐいから手が付けられない。


 あいつとのインファイはほんとに視界から消えるからなぁ。気づいたときにはダウンさせられるし。味方でよかったわマジで。


 こうして眺めると、煽ったりするからつい忘れがちになるけど、Setoもちゃんと本気なんだってのが分かる。一戦一戦手を抜かずに全力でひよりを捻じ伏せにいってる。それがあいつなりのひよりへの誠意であって、プライドなんだろう。


 あ、またフィニキャンしてる。

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