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第1章22 予想外のやる気

 お疲れ~と労いを交わしてそれぞれ配信を閉じる。


 普段とはまた違う疲労感を感じるけど、たまにはこうしてTB以外のゲームをやって騒ぐのも悪くないな。


 あぁいうゲームを配信したのは初めてだったけど、リスナーも楽しんでくれてたみたいだ。


 もはや習慣になっているエイム練習などをざっとこなし、風呂から上がれば思いのほか疲労があったのか、瞼を閉じればすぐに意識が沈んでいった。


「H4Y4TO、ODはあと10%でたまるよ」

「おけ! Seto、左のピン刺したとこの奴ら絶対抑えて」

「任せろ」

「あたしはどこ見たらいい?」

「ひよりは俺と右。ポジション相手がきついから多分キル拾える」


「おっけ…あ、ノック!」

「ナイス…確殺入れた。あと5部隊!」

「こっちもノックした! 詰めるか?」

「ダメダメ! これで奥の部隊があいつらに詰めるだろから戦わせたい。ひよりもこっち来て! OD撃つ準備」

「わかった」


 今日も3人で配信しながらノンレートで戦闘に明け暮れている。


 あの料理のゲームからすっかり打ち解けた俺たちは、よりコミュニケーションが取りやすくなっていた。


 気遣いに割いていた思考のリソースを戦闘に注ぎ込むことができるので、結果にもいい影響が顕れている。


 あと、凄まじいのがひよりの成長だ。俺たちのコーチングもあるんだろうけど、とにかく動きが知り合ったときから比べたら全然違う。


 教え初めて今日でちょうど1週間。エイムは一朝一夕で劇的によくなるものではないけど、キャラコンの上達具合が凄まじいんだ。


 リダイレクトも既に実戦で組み込めているし、それ以外にも教えたキャラコンの精度が日ごとに高まっていた。


 俺たちとノンレートで潜っているときも、暇さえあればキャラコンの練習してるし、必死さが伝わってくる。


 正直、ここまでひよりが取り組むとは思っていなかった。


 俺たちとやっていないときでも、ほぼ俺たちがログインしている時間にはひよりもログインしていた。


 配信はついてなかったから完全な自主練だろう。


 別にやる気がないと思っていたわけじゃない。ただ、ひよりのやる気がこちらの想定を遥かに超えて高かったんだ。


 普通ならとっととノンレートやランクに行きたくなるところをぐっと堪えて、訓練場でひたすら同じ操作を繰り返したんだろう。


 そうじゃなきゃこんなに早く実戦で使えるレベルまでキャラコンが身につくわけがない。


 FPSはRPGのように始めたての人が道具やレベルを上げていけば誰でもそれなりに戦闘を行えるわけじゃない。


 最初は操作すらおぼつかず、銃を打っては狙いも定まらず明後日の方向に飛んで行ってしまう。


 地道に同じことをひたすら繰り返して、少しずつの進歩を積み重ねるしか上達の道はない。


 好きじゃなきゃできないんだ。オリハルコンで出来た剣も、アダマンタイトでできたフルプレートメイルもどこにも落ちちゃいない。


 使えるのは自分が培ってきた技術のみ。


 だから強くなるにはひたすら練習するしかない。当たり前だけど、誰でもできるわけじゃない。


 ひよりはそれを他の人よりも遥かに高いレベルで行えていた。


(これに応えないわけにはいかないよなぁ…)


「H4Y4T0! 左で戦闘始まった!」

「キルログ見て! ノック入ったら詰めるよ…いくぞ! ひよりOD撃って!」

「了解!」


 Setoがダウンを取って抑えていた左方でさらに奥にいた部隊が漁夫を狙って詰めてきた。


 そこにひよりの操るセイメイのODの式神爆符を打ち込み、ダメージを与えつつ動きを制限する。


 漁夫の漁夫が俺の狙いだった。元々いた部隊はすでに壊滅したけど、そこに詰めてきた奴らも一人ノック状態。


 追加のスキルやODは不要と判断した俺たちは、あっという間に残りも取りきって残るは3部隊。


 そこからも危なげなくTriumphを取り、マッチが終了。この日一番と言える危なげのないゲーム展開だった。


「ナイス、ひよりのキャラコンめっちゃ良くなってるね」

「ほんと!? やった! すごい嬉しい」

「まだ甘ぇけどな」

「そりゃあ、二人みたいにはまだ全然できないよ…」


 Setoの言葉にせっかく嬉しそうにしていたひよりがしょんぼりしてしまったようだ。Setoは言葉足らずな部分が結構あるからなぁ。


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