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第1章18 俺、言ったよな?

「楠さん、だめ戻って!」

「え、でもあの二人もバリア割れてるよ!? 倒せる倒せる!」

「いいから! そこは城から…」


 俺が言い終わるのを待たず、俺たちの頭上から銃声が弾けた。背後に聳え立つ江戸城の天守閣からだ。

 

 これがあるから俺とSetoは即座に追撃に移らなかった。天守閣から今の楠さんの位置は狙い放題。


 バラララッという連続した銃撃音に交じり、ズガンッと低音の響くような音が混じっていた。


SR(スナイパーライフル)。連射性能が低い代わりに、遠距離からの一撃に特化した狙撃銃だ。


 胴体でもスナイパーで打たれたら大体のバリアは1,2発で消し飛んでしまうし、ヘッショならさらに大ダメージだ。


 ちょうど今、楠さんが一発もらって青バリアが剝がされた。事態に気づいて慌てて取って返そうとするけど、逃すまいと銃弾が降り注ぐ。


「Seto、カバー!」

「やってる!」


さすがSeto。俺が言い終わる前にすでに天守閣に向けて発砲して楠さんのカバーに入っていた。俺も言いながら狙いを定めて応戦する。


 ノンレートなので実力差は歴然。高所と低所の有利不利を覆して、エイムでのごり押しで敵二人のバリアを剥がした。たまらず体を引っ込めて回復に回ったが、残る一人がまだ楠さんを狙っている。


「楠さん、結界張って!」

「うん...あっ」


 俺とSetoのいる遮蔽まであとほんの僅かのところで楠さんがノックダウンされてしまった。セイメイのスキルである結界を張るのもギリギリ間に合わなかった。


 地面に這いつくばった状態で、ノロノロとこちらになんとか寄ってくる楠さん。Setoが残る一人のバリアも剥がし、天守閣の敵がすべて身を隠したところで、俺が格闘キーでセイメイを殴って無理やり遮蔽まで移動させた。


「ごめん、ありがとう」

「大丈夫。こっちは安全だから回復してね」

「うん…」


 俺から蘇生され、申し訳なさそうに謝罪する楠さんをフォローし、ようやく態勢が整った。


 ただ、楠さんはさきほどのミスを引きずっているのか、かなり声が小さくなってしまっている。


「ははっ、切り替えな。今のトロールの説教は終わってからH4Y4T0からたっぷりしてもらえよ」

「うっ...。お手柔らかにお願いします」

「OK。じゃあお説教は後の楽しみにとっといて、この試合は勝つよ」

「っしゃあ!」


 Setoが笑いながら説教確定宣告をしたことで、とりあえず楠さんも気持ちを切り替えられたみたいだ。


 その後俺たちは戦闘を繰り返してこのマッチで無事Triumphを獲得し、ロビー画面に戻ってきた。


 あの後の展開としては、確保したポジションを守り切り、最終的に安地から外れて天守閣から飛び降りた連中を倒して勝利って感じだ。


 終盤までは天守閣という一番の高台をキープしていたチームが優位に試合を運んだけど、最終の安地収縮では俺たちのポジションの方が中心に近かったことで、天守閣から飛び降りざるを得なくなった。


 そこを俺たちが刈り取る。安地読みの精度がそのまま結果に結びついたって感じだな。


「さて、楠さん。お説教のお時間です」

「はい…。その節は申し訳ありませんでした…」

「おぉ怖ぇ。俺は静かにしとくわ」


 楠さんはシュンとした様子で俺の言葉を待つ。まぁ別に怒鳴ったりはしないけど、こればっかりははっきりさせとかないといけない。


「えっと、まず先に言っとくけど、別に飛び出しすぎて狙われたことはぶっちゃけ気にしてないです」

「えっ?」


 楠さんはノックダウンされたことを指摘されると思っていたらしく、意外そうなリアクションだ。


「まぁ射線管理は簡単なようで難しいし。最初に言ったけどミスやトロールは百も承知で、そういったとこの指導も含めてのコーチングだと思ってます」

「じゃあ…お説教っていうのは」

「俺、《《戻れ》》って言ったよな?」

「……!」

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