第222話 偽った罪
ヒガン
「これはこれはゴムド様」
ゴムド
「おう ヒガン こんなところでなにをしておる?」
ヒガン
「どれだけ遠くにいても ゴムド様は目立ちますゆえ」
ゴムド
「そうか 今は大丈夫か?大丈夫なら ちと 付き合え」
ヒガン
「ええ 構いませんが……どうかしましたか?」
ゴムド
「………すぐに着く ところでひとつ聞いてもよいか?近衛兵にセダーと言う者を知っておるか?」
ヒガン
「セダー?………うーん…副長 知ってるか?」
副長
「名前だけでは……なかなか難しいですね 同じ名前もたくさんありますし それにころころ名前変える者もいますし……」
ヒガン
「だな 配属先とかもう少し絞ることが出来れば 分かるかもしれませんが」
ゴムド
「そうか オロス殿 他になにか知ってはおらんか?」
オロス村長
「いえ 御勇退したとしか聞いてはおりません」
ヒガン
「勇退…だ…と…」
ヒガンの顔が 恐ろしく冷たい目に変わっていく
副長
「……近衛兵が 出兵すること自体そうあることではない……ましてや 勇退者が出る事など…」
ゴムド
「そうか そういった事例はないということか」
副長
「いえ 全くなかった訳ではありません 私の知る限りは一度だけ……全部隊……勇退となった……ことだけです……」
ゴムド
「……全部隊 壊滅したのだな」
副長
「帰路した者は わずか数名……その者たちも 朽ちた樹木のようになったと…」
アルマ
「……樹木!?……生態系を変えられたんか……呪いの一種やな……それに全部隊壊滅したのなら 一発で遠距離から超広範囲にぶちかました……そんな芸当出来るやつなんて 聞いたことないわ…」
ゴムド
「……だが セダーの言っていることと一致しておるな……もしや その部隊にいたのか?」
ヒガン
「そんなことはありえない!あの部隊は 最も秩序と規律 そして誇りを持った最強の部隊です!もしその中をかいくぐり生存した者がいたなら 必ず 部隊の末路を知らせに!!」
ゴムド
「そうか……まあ よい 会えば分かる事だ」
こうして 一行は セダーの家に着く
世話人
「………あ!村長!」
オロス村長
「セダー様は 家の中か?」
世話人
「はい…多分…」
オロス村長
「……多分?」
世話人
「……その…帝都から来た連中が帰るまで 入って来るなと言われまして…」
アルマ
「ああ!?なんや その言い方は!?」
アルマは 眼光が鋭くなり 玄関のドアの前に行く
世話人
「あ!玄関のドアは 鍵がかかってて………え…」
だが アルマは簡単に鍵を解除する
アルマ
「こんな魔力もなしの施錠なんて 全くの無意味や」
アルマは バンッと音を立て わざと聞こえる様に 扉を開けた
セダー
「………ん?……そうか……あいつらようやく帰ったか……全く…面倒くさ…ん?…」
玄関の開いた音が聞こえたセダーが 奥の扉から ダルそうに出て来る そして 玄関を開けたアルマと目が合う
セダー
「……い!?……だ!誰だ!?ここは 俺の家だぞ!何勝手に入ってきてんだ!」
アルマ
「……誰に…言ってるんや…」
アルマから 邪悪なオーラが沸々と足元から出てくる
ゴムド
「これ アルマ 村長の約束があるのだぞ」
アルマ
「……わかっとるわ……よかったなぁ…おまえ……もし聞いてなかったら……永遠に苦しみ続けるとこやで……」
セダー
「ひ…ひぃ……」
セダーは 腰が抜けたらしく へたり込み 後退りしていた
アルマ
「……え…そんなにビビらんでも……」
アルマは思っていた以上に恐れているセダーに声をかける だが セダーの目線はアルマとは合っておらず どうやらアルマの後ろを見ていたことに気付く
アルマ
「………ん?……いっ!?」
アルマが ゆっくり後ろを振り返ると ヒガンが 大剣を上段に構え いまにも振り下ろしそうになっていた
ヒガン
「そこをどいてください!!アルマ様!!」
セダー
「な!なんなんだ!お!お前は!?一体誰なんだよ!?」
ヒガン
「俺は 東軍第3近衛猟歩兵 ヒガンだ!!お前は 元近衛兵だそうだな どこに所属していた!言え!」
セダー
「!!!な!なんで!?こんなところに近衛兵が!?」
こうして アルマがなんとかヒガンを止め セダーを外に連れ出し その後 ヒガンがガンガンにセダーを詰めていく
そして やはり 近衛兵だった事はデタラメであり 噂で近衛兵が呪いで壊滅したと聞いただけで なんの関りもなかった
ゴムド
「……さてと……では お前は近衛兵だった訳でもなく 一般兵でもないのだな」
セダー
「………は…はい…」
セダーは正座し 項垂れながら ボソッと返事をする
ゴムド
「……ふぅ…一般兵ならまだしも……近衛兵と偽るとは……まあ…しかし…やはり ファーレンアントとは 無関係…か……とにかく 一度 剣を下ろせ ヒガン」
ヒガンは セダーが言葉を発する度に 剣を何度も振り下ろしそうになっていた
ヒガン
「いえ!もう良いでしょう!近衛兵と偽った罪 これは 重罪です!そして 各将には 帝都からの沙汰がなくとも その場で処罰できる権限があるのです!」
ゴムド
「わかっておる お主が誰を切り捨てようと 関わるつもりはない だが この村で起きた事に関しては別 好きにさせることは出来ん」
ヒガン
「…………」
ゴムド
「お主も知っての通り この村は 急遽 帝都の管轄となった そして 今 この村の全ての権限を持つユウキ殿が不在 こんな状況の中で いくら罪を犯したとはいえ 勝手に処罰したとなれば いくら権限を持つと言っても 安易すぎるのではないか?」
ヒガン
「……くっ…」
確かに ヒガンの言うように 各将には その場で処罰出来る権限はある だが それは あくまで統率が取れなくなるような支障がでる場合のみだ
そして ゴムドの言葉を聞いたヒガンは ようやく剣を納める
その姿を見たセダーは ホッと安堵の息を吐いた
ゴムド
「……なにをホッとしておるのだ?お前の罪が消えたわけではないんだぞ それに もしかしたら この場で ヒガンに切り捨てられたほうが良かったかもしれんぞ」
セダー
「……え?」
そして……