第194話 バロンとシオン
「はぁ…」
上空を 格式の高い馬車が ゆっくりと飛んでいる
その中で 大きなため息をつく男
この男の名は バロン
アモンの命により 使者として任務を遂行し 今 帝都に帰還している
付き人
「どうしたんです?バロン様 そんな馬鹿でかいため息なんかついて?無事任務成功したというのに?」
この付き人の名はシオン
バロンの警護及び補佐役として 今回の任務に就いている 見た目は 華奢な女性そのものだが 警護を任命されているだけあって 実力は相当な者である
バロン
「………嫌味かよ?結局 何も出来なかったようなものなのに…」
シオン
「でも ネド士師もそう言っていたじゃないですか?会える確率は ほぼないって とにかく 使者として行ったという名目が欲しいって だから私たちは1年以上もかけて根回しとか色々してきたんですよ?会えなかったとしても これは任務成功じゃないですか」
バロン
「……ああ…分かっている…けどなぁ…城にも入れず 門前払いとは思わなかったし……結局 兵の規模やらも全然わからなかったし…」
シオン
「そのことも重要な情報ですよ 帝都の使者のも関わらず 門前払いしたという事は」
バロン
「……そういうものか?……まあ…役目は果たしたと言っていいのかな?」
シオン
「はい もちろんです 胸を張ってありのまま報告しましょう そろそろ 帝都が見えてきますよ」
バロンは 馬車の窓から 顔を出し外を見る
バロン
「……本当だ……随分久しぶりだな…帝都に戻って来るのは…ちょっと懐かし……は?……お…おい…な…なんだ?あれ?」
シオン
「???どうされたのです?」
シオンも窓から外を見る
シオン
「え………な…なんでお祭りみたいに?」
バロン
「……!!ま…まさか…ちょ…ちょっと待って…も…もしかして…俺たちが 帝都の使者としての任務が 成果を上げたと勘違いしているのか?」
シオン
「うーん…例え望む以上の成果を上げたとしても こんな大規模なお祭りなんかしないでしょ?それに 任務は 事前に謁見失敗と先に報告していますよ…多分…」
バロン
「だったらなんでこんなお祭りになってんの!?本当にちゃんと報告してあるのか!?」
シオン
「そんなのわかりませんよ だって先に報告した者は 帝都にいるんですから」
シオンは あきれ顔でバロンに言う
バロン
「…………戻ろう」
シオン
「はあ!?」
シオンは耳を疑う
バロン
「戻って もう一度 謁見を申し込む!!」
シオン
「な!?何を言ってるんですか!!帰還だけは守れって言われていたでしょ!?戻る時間なんてある訳ないでしょ!!」
バロン
「嫌だ!戻る!おい!すぐに戻ってくれ!!」
バロンは ドラゴンを操作している者に 大声で叫ぶ
運転手
「へ?戻るんですか?」
シオン
「違います!違います!そのまま帝都に向かって下さい!!」
シオンも 負けじと大声で叫ぶ
バロン
「だったら シオン!!お前が説明しろよ!」
シオン
「なんで 私が説明しなきゃならないんですか?ちゃんと 最後まで責任を持って下さい」
バロン
「いやだ!いやだ……うう…どんな顔で アモン王子に報告しろというんだ…」
シオン
「その顔で報告するんですよ あきらめて下さい まぁ…もし 本当に勘違いでお祭りになっていたとしても 正々堂々とアモン王子に報告しましょう フォローはしますから」
バロン
「……本当だな……ちゃんとフォローしてくれよ?」
シオン
「はい だから ちゃんと報告しましょう」
バロン
「………よし…ここまで来たら 腹をくくるしかないよな…よっしゃあ!開き直ってやる!!」
こうして バロン一行は 自分たちが 思わぬ成果を上げたことにより お祭り状態になっていると 勘違いしたまま 帝都に向かって行った