第191話 帝都に着く
ユウキ
「………あ…やべ…ガ…ガータさんだ…」
ユウキとサヤカは 条件反射でサッとガータの死角になる柱に隠れる
サヤカ
「……え…何…あの書類の山…ま…まさか あの短時間でまとめちゃったの…」
ユウキ
「…ああ 間違いない… だって この馬車に乗り込む時は 何も持っていなかったんだからな… 書類が吹っ飛んでいったって聞いてたから 流石にそれをまとめ直すには時間がかかると思っていたのに…」
サヤカ
「……うう…いろんなことがたくさんあったから…少し…休ませてもらいたいんだけど…」
ユウキ
「たしかに…俺もだ……だが 見て見ろよ…馬車の入口に立っている…帝都に着いた瞬間 多分 俺たち…連れていかれるな……な…なあ…アモン…」
アモン
「無理だ 諦めろ」
ユウキ
「何も言ってないだろ…」
アモン
「どうせオレに ガータに休憩を与えてくれって言えってことだろ・……無理に決まってんだろ 見ろよ あの顔…」
ユウキとサヤカは 物陰からチラッとガータを見る
ガータは 目が血走り 周りをキョロキョロと見渡していた
アモン
「……おい ユウキ お前たち2人を探しているぞ もう諦めろ」
ユウキ
「わ…わかってる…わかってるけど…ハァー…」
ユウキが物陰で大きなため息をついている時 ガータがアモンに気付く
ガータ
「………どこに?……あ!アモン王子!ユウキさんとサヤカさんはどちらに?」
アモン
「ああ……ここにいる」
アモンは 即答し ユウキとサヤカはトボトボと物陰から出てくる
ガータ
「……そんなところにいたのですか?………もしや…隠れていた…訳ではないですよね?」
ユウキ
「え?も…もちろんです たまたまです たまたまですよ?」
ガータ
「……そうですか まあ 良いでしょう そんなところにいないで こちらに来なさい スケジュールは 秒単位で組んでいるのですから!」
ユウキ
「…び…秒単位!?マ…マジか…」
ユウキとサヤカは ゆっくりとガータの隣に行く
ガータは すぐさま纏めていた書類を腕輪にしまい ユウキとサヤカの手をムギュと掴む
ガータ
「いいですか?着いたらすぐにわたくしの私室に向かいます いいですね?」
サヤカ
「は…はい わかりました…」
ユウキ
「……あ…あの…ガータさん?着いたらすぐですか?……ちょっと色々ありまして…ハハハ…いやぁ…少し…少しだけ…休憩が欲しいなぁって…ハハハ…」
ガータ
「……まずは…私室に向かう時間が……ぐらいかかりますね…早歩きで向かえば…うん 15秒は短縮…短縮できる時間はもう移動時間ぐらいしかないですから……ん?何か言いましたか?」
ユウキ
「………あ…いえ…なんでもありません…」
結局 ユウキは何も言えなかった……
そして 帝都に無事に着く
帝都に着くと ガータは振り返らず アモンに叫ぶ
ガータ
「アモン王子!ユウキさんとサヤカさんを そのまま連れて行きますよ!よろしいですね!」
アモン
「あ…ああ もちろんだ」
ガータ
「では 行きますよ!!」
ユウキとサヤカ
「わわっ!」
ガータは ユウキとサヤカの手を握ったまま バババッと階段を降り 私室に向かって行った
マルコ
「………ふぅ…任務完了ですね…」
アモン
「……いや お前はまだだ」
マルコ
「……え?…何か他ありましたっけ?」
アモン
「レミュが ずっと探しているそうだ…」
マルコ
「………え…」
マルコは 顔面蒼白になる
アモン
「……随分 機嫌が悪いそうだぞ 兵士みな 誰も近づけないと 嘆いているそうだ…」
マルコは それを聞くと 慌てて馬車の出口に向かう しかし 出口付近で震えながらアモンに振り返る
マルコ
「………あ…あの アモン王子?…ぼ…僕に 何か言いつけ有りましたよね?ね?」
アモン
「ない 早く行け」
マルコ
「そ…そんなぁ…」
アモン
「無駄に延命するな 覚悟を決めろ」
マルコ
「………うう…」
マルコは 半べそをかきながら レミュの元に向かって行った
アモン
「………ふぅ…休憩…か…そういえば…ここ最近 心休まる時…なかったな…」
アモンは 一度深くソファーに座り直す
アモン
「………ほんの少し…ほんの少しでいい……ゆっくり…したいな…」
アモンは ゆっくりと目を閉じる
しかし ものの数秒で外から声が聞こえてくる
兵士
「……モン王子!アモン王子!どこにおられますか!!」
アモン
「………まだ…心休める事は…出来ない…か…」
アモンは ゆっくりと目を開け ソファーから立ち上がる
アモン
「ここにいる!なんだ!何があった?」
兵士
「あ!アモン王子 ここにおられましたか 先ほど かの国に向かっていた者の使いが 来られました!」
アモン
「そうか わかった すぐに謁見の間に行けと伝えろ オレもすぐに向かう」
兵士
「はい かしこまりました」
兵士は 一度敬礼し 馬車を後にする
アモン
……さてと ユウキもサヤカも無理してもらっているんだ オレが弱ってどうする」
アモンは 自分に気合を入れ直し 馬車から降りる その後 一度グッと背伸びをし謁見の間に向かった