第190話 アモンのフォロー
アモン
「……で もう一度聞くが その爆発は サヤカの意図ではなく暴発で間違いないんだな?」
マルコ
「はい どうやら手のひらをかざすだけで 魔力を放出し続けるようです そして サヤカさんは 放出し続けている事に 気付いていませんでした」
アモン
「……そうか ではサヤカは相当参っているな…しかし……その割には あまりショックを受けている感じはしない…少し開き直っているような?」
マルコ
「初めは 立つこともままならない程 ショックを受けていましたので 僕なりにフォローは入れておきました ただ あまりフォローになっていないかもしれませんが…」
アモン
「いや 充分だ」
アモンは そう言うと サヤカの元に行く
アモン
「よう ユウキ 随分と羽根を伸ばしてたみたいだな」
ユウキ
「お?アモン しかし 本当にすごいな!この馬車!」
アモン
「当たり前だ 帝都にある馬車の中で 最高級の馬車なんだからな そんなことより お前たちに行動制限をかけるつもりはないが せめて 何かする時は 一言だけでいいから言ってくれ」
ユウキ
「わかった 色々心配かけちゃったな すまん 反省してる」
アモン
「後 サヤカ」
サヤカ
「…ご…ごめんなさい…馬車を…粉々にしちゃって…」
アモン
「ん? いやそれは別に構わんぞ 逆に勉強になったと感謝してる」
ユウキ
「は?どういうこと?」
アモン
「あの馬車は 外からの攻撃には 防御壁を全面張っているから よほどの事が無い限り損傷することがないんだが 内からの攻撃は想定していなかった まさか 内からの攻撃で木っ端微塵になるなんて想像もしていなかったんだよ 誰もな おかげで 馬車の設計を見直す事ができた」
ユウキ
「おー…そういうことか」
アモン
「この馬車は すでに内からの攻撃も想定し 防御壁を施しているから もし またサヤカが暴発しても 問題ないはずだ」
アモンは 少し意地悪く言う
サヤカ
「………ごめんなさい」
アモン
「ハハッ!冗談だよ ただ サヤカ お前の持つその力は オレやマルコ ここ地獄にいる全ての者の力とは 根本が違う だから オレにはその力のコントロールを教えることが出来ない レミュが 過去のデータをひっくり返して調べてもらっているが まあ……残念だが望み薄だ だから サヤカ お前のその力は お前自身が手探りで探していくしかないんだ」
サヤカ
「…………」
アモン
「…どうして私が…って顔だな ……だがな 考えてみろ それは どいつにも言えることなんだぜ どうして自分には力がない どうして自分だけこんなに不幸なんだ どうして自分がこんな運命を背負わなきゃならないとかな…」
サヤカ
「あ……そっか…そうだよね…」
アモン
「ああ でも サヤカ お前の悩みはかなり贅沢なんだぜ? 大体は自分の能力の無さに嘆くもんだ」
ユウキ
「言われてみればそうだよなぁ……能力の無さで嘆く気持ちわかる…俺は魔力が無いからさぁ…ハァー…こんなに魔法がバンバン飛び交っている世界で魔法が使えないなんて……あれだろ?ここ地獄で魔力が無い奴なんて ほとんどいないんだろ?」
アモン
「ほとんどどころか 魔力が全くない奴なんて オレが知る限りいない」
ユウキ
「うわ…マジか…くそ…なんで俺には魔力がないんだよ……はぁー…」
アモン
「ハッハハハ!なんでお前が落ち込んでんだよ!まあ ユウキ サヤカ 恨むなら運命ってやつを恨むしかないな!!………まっ……そ………な…あ…き…」
サヤカ
「……え?今…なんて?」
アモン
「ん?いや なんでもない さて!そろそろ 帝都に着くぞ……おっと!おい!マルコ!」
マルコ
「はい?何でしょう?」
アモン
「そろそろ帝都に着くから ガータに声をかけてこい」
マルコ
「…えー…ぼ…僕がですか?」
アモン
「あ?なんか言ったか?」
マルコ
「いえいえ 何も言ってませんよ……ふぅー…苦手なんですよね…ガータさん…」
アモン
「ブツブツ言ってないで早く行け 着いてから 言いに行ったら何言われるかわからんぞ」
マルコ
「わかりましたよ 行きますよ 行けばいいんでしょ…」
マルコは 足取り重くガータのいる2階に上がる
マルコ
「……えっと…ここだな」
マルコは そっと扉をノックする しかし 部屋から何も反応がない
マルコ
「…………反応がないな…仕方ないか…」
マルコは そーっと扉に手をかけようとすると 勢いよく扉が開く
マルコ
「わぁ!!」
流石はマルコである 完全に不意をつかれた形で 扉が開いたのに サッと避ける
ガータ
「まだ帝都に着かないのですか!!……あら? マルコさん 何をしているのです?」
ガータは たくさんの書類を手に部屋から出てくる
マルコ
「…え?あ…いやぁ…そろそろ帝都に着くから知らせに…」
ガータ
「そうですか なら そこをどきなさい 帝都に着いたら すぐに ユウキさんとサヤカさんの指導を開始しなければならないのです」
ガータは マルコがどく前に グイッとマルコを押しのけ スタスタと階段を降りていった