第187話 マルコの真面目な話
アモン
「ユウキ!大丈夫なのか!一体誰に襲撃された!?とんでもない魔力の爆発だったようだが 全員無事なのか!?」
ユウキ
「声がでかいぞ ってか さっきのさっきだぞ よく気付いたな…とにかく俺とサヤカ それにマルコさんガータさんも無事だ あ!そうだ 馬車を運転していた人は!?」
マルコ
「大丈夫ですよ 上手く緑馬竜にしがみつけたんで まあ…森に走って行っちゃいましたが…でも 落ち着いたら戻って来るはずです 安心してください」
ユウキは それを聞いてほっと胸を撫で下ろす
ユウキ
「アモン 今のところ全員無事だ」
アモン
「そうか 無事なんだな わかった それで?一体誰にやられたんだ?」
ユウキ
「え…いや…別に誰にやられたわけじゃなく…」
ユウキは 呆然と座り込んでいるサヤカを見つめながら 話す
アモン
「ん?歯切れの悪い言い方だな…どういうことだ?…まあ 帰って来てからでいいか……とにかく 早く帰ってこい 緑馬竜を走らせればすぐだろ」
ユウキ
「え?……あ…それが 馬車がさぁ…」
アモン
「馬車が壊れたのか?……あの馬車は 余程の事が無い限り 破損などしないはずなんだが……どうやっても走れないほどの破損なのか?」
ユウキ
「……いやぁ…破損とかそんな問題じゃないんだ……」
ユウキは 馬車があったであろう場所を見つめる
アモン
「……そうか わかった すぐに代わりの馬車を向かわせる そこから動くなよ それから警戒も怠るな」
ユウキ
「わかった すまないな」
ユウキとアモンの話が終わると すぐに マルコが声をかけてくる
マルコ
「どうでした?」
ユウキ
「代わりの馬車で 迎えにきてくれるそうです」
マルコ
「そうなんですか んー…この距離なら 全員移動させられるんですが…まぁ 迎えに来てくれるなら待ちましょうか それより ユウキさん」
マルコは サヤカをチラッと見ながら話す
ユウキ
「あ…はい 俺が話しますよ ……ところで やっぱりあの爆発は…」
マルコは ゆっくりと頷く
ユウキ
「…そうですか わかりました」
ユウキは 呆然としたまま地面に座っているサヤカに近づく
ユウキ
「……サヤカ 大丈夫か?」
サヤカ
「………ど…どうしよう…な…なんで…」
サヤカは 自分の震える手を見つめ 呟く
ユウキ
「……と…とにかく 誰も被害はなかったんだ そんなに落ち込まないでもいいんじゃないか?」
サヤカ
「そんなのたまたまでしょ!もし……もし…これが…お城で起きてたら!!」
ユウキ
「サ…サヤカ」
たしかに この爆発が帝都中心で起きていたら 大損害になるのは明白だ そして この規模の爆発は いつ 暴発してもおかしくない そのことをユウキもなんとなく分かってしまい サヤカに何も言えなくなっていた
マルコ
「なんだ サヤカさんの心配はそこでしたか」
マルコは ウンウンと頷きながら 近付く
マルコ
「なら 安心してください もし 帝都の町ごと吹っ飛ばしても サヤカさんにお咎めなどありませんよ むしろ 賞賛されるでしょうね!」
マルコは 満面の笑みで答える
サヤカ
「な!?そ…そんなわけ…」
マルコ
「あー…それと 一つ言えることは 先ほどの威力の爆発なら 帝都は吹っ飛んだりしませんよ 獄帝の保護がされてますからね それに もし 帝都を更地にしてしまう者がいるならば その者は 獄帝より はるかに能力が上ということです 誰もが ひれ伏し膝をつくだけですよ」
サヤカ
「そんなこと!…そんなこと…私はしたくありませんよ…」
マルコ
「……そうですか なら サヤカさんは 弱者は切り捨てるということですね まあ それも間違いではありませんが」
サヤカ
「は?なんでそんなことになるんですか?」
マルコ
「……んー…そうですね…例えば 先ほどの集落 鬼子たちの村 ありましたよね あの村が現存出来ているのは アモン王子がいるからなのですよ?」
サヤカ
「アモンさんが?」
マルコ
「そうです この世界は単純明快 強いか弱いか ただそれだけです サヤカさんも知っていると思いますが アモン王子は強い 一対一ならまず勝てる者はいないでしょう そんな方が あの鬼子の村を保護すると決めたのです そして 今 ユウキさんも関わり さらに あの鬼子の村の者は 帝都の民と同等となったのです これは 正直 僕もびっくりしましたよ」
ユウキ
「え!?お…俺??」
サヤカ
「……どういうこと?……なんでユウキが?」
マルコ
「ユウキさんとサヤカさんは 先ほどまで鬼子の村にいましたから 知らないでしょうが お二方は 今ではもう 帝都では知らない者など ほとんどいませんよ」
サヤカ
「え…なんで…」
マルコ
「今 帝都では 勅命で世界樹の実を持ち帰った話で持ち切りです まあ…これは アモン王子が意図的に広げたんですけどね ただ ここまで早く広がるとは アモン王子も思っていなかったはずです これは嬉しい誤算です そのおかげで アモン王子だけでは 鬼子の地位は かろうじて 民と認められていただけだったのですが ユウキさん あなたの名前も連ねた形をとれたので 鬼子の地位向上が出来たんです」
サヤカ
「…………」
マルコ
「あ!大分 話がそれちゃいましたね 簡単に言えば この世界では 弱者はあまり多く選択肢はありません 選択肢を増やすためには 強者に保護してもらうしかないのです だからといって 強者は弱者を守らないといけない訳ではありません 保護するのも 食い物にするのも 全く相手にしないのも自由 好きにすればいい 実際 元々そうでしたからね」
サヤカ
「……じゃあ 今はアモンさんが この秩序を作ったということ…」
マルコ
「そうです 弱者にとって今は最高でしょうね 毎日ビクビクする事がなくなりましたからね ですが 強者には面白く思っていない者が多いでしょう それに アモン王子は一対一なら無類の強さと言いましたが 裏を返せば 複数同時の戦いは不得手なのです もし 王クラスの者が 手を組み アモン王子に反旗を翻したなら さすがのアモン王子でも……ということなんです ですから 今は アモン王子は自分の考えに賛同してくれる強者が欲しい それも全面的に表に出てくれる者が」
サヤカ
「……アモンさんは…ユウキに…」
マルコ
「……ここだけの話ですが はっきり言ってアモン王子に賛同している者は 片手で数えれる程度しかいないのです…ですから…」
マルコが 話していると いきなり土ぼこりが舞った