第180話 シェルの本当の姿
マルコ
「あ!アルマさん!」
マルコたちに先に着いたアルマに マルコは 手を振り声をかける しかし…
アルマは マルコを鋭く睨みつけていた
マルコ
「……ア…アルマさん?」
マルコには アルマに睨まれることに見当もつかなかった それもそのはず ついさきほど初対面とは思えない程 和気あいあいと話せていたとおもっていたからだ
アルマ
「なんや?手合わせとはいえ うちはじじぃ側や 敵と慣れ慣れしくするつもりはないで」
マルコ
「そ…そんなぁ…敵って…」
マルコは今にも飛びかかってきそうなアルマにたじろぎ 後ろに一歩下がる その様子を見ていたシェルが そっとマルコに近づき耳元で囁く
シェル
「……マルコ君…あなた…一体何をしたんです?」
マルコ
「ぼ…僕は 何もしていないですよ?…ってか ずっと一緒にいたじゃないですか」
シェル
「…それもそうですね……一体何があったのでしょうか…」
マルコとシェルが こそこそと話している姿を見たアルマは マルコだけでなくシェルにも当たりだす
アルマ
「なんや!銀髪の兄ちゃん!あんたはそっち側か!」
シェル
「え?私ですか?いえいえ 私は中間 私はどっちでもなく中間です 真ん中です」
アルマ
「まんなかぁ?うそつけ!どう見てもそっちに肩入れしと!…ムギュ」
アルマは さらにシェルに食って掛かろうとするが ゴムドが大きな手をアルマの頭の上に乗せ止める
ゴムド
「いい加減にせい アルマ シェルにまで牙を向けてどうする」
アルマ
「うるさい!」
アルマは ゴムドの手を乱暴に払い除け そっぽを向く
ゴムド
「……やれやれ おう 待たせたなマルコ ただ一つ言っておかねばならん事がある 此度の手合わせだが 戦う相手はわしであって わしではない」
マルコ
「……え?」
首を傾げるマルコに ゴムドは簡単に説明をする
ゴムド
「……ということじゃ」
マルコ
「あ…そうなんですか じゃあ 僕が戦う相手は ゴムドさんではなく ゴムドさんを動かしているアルマさんということなんですね」
ゴムド
「うむ 簡単に言えばそういうことじゃ」
マルコ
「………そっか…」
マルコは 少し残念そうに答えた その様子を流し目で見ていたアルマが また 喰ってかかる
アルマ
「なんや!その顔は!」
マルコ
「あ!いえいえ……そうか…そういう事だったんだ……だから…」
マルコは そっとゴムドを見る
ゴムド
「そういうことじゃ だから言ったであろう」
マルコは ここでようやくゴムドが 実りが無いと言った意味がわかる
ゴムド
「どうする?結果は お前ならば なんとなく予想がつくであろう?やめておくか?」
マルコ
「いえ そんな特殊な戦いなんて見たこともないです 勉強させてください!」
ゴムド
「……なにが 勉強させて下さいじゃ…全く…」
シェル
「……ん?…で?結局どうするんです?手合わせするのですか?」
マルコ
「もちろんです!」
シェル
「…なーんだ もしかして なくなると思ったのですが…」
ゴムド
「なにをブツブツ言っておる シェル お前待ちなのじゃぞ」
シェル
「……あ…そうなのですね……やれやれ…しかし あの結界を作るとなると…この姿では…難しいですね」
マルコ
「わ!もしかして 元に戻るのですか!?」
シェル
「ええ 元に戻らなければ あの結界作れませんからね」
シェルは そう言うと上空を見つめブツブツと唱える すると シェルの身体が白く輝きだした
マルコ
「………き……きたー!!」
マルコは 待ってましたと言わんばかりに シェルに飛びつき抱きついた
シェル
「な!?この!だ!抱きつくなと言ってるでしょ!マルコ君!!」
マルコ
「うわぁ…ひさしぶり…このモフモフ…さいこー!!」
シェル
「離れなさい!!マルコ君!!」
シェルは 前足でグイッと押す
そう シェルの身体は 人型ではなく 大きなモフモフの尻尾が特徴の真っ白に輝くキツネの姿そのものだった
アルマ
「な…なんや あの銀髪の兄ちゃん…姿が変わったで…」
ゴムド
「姿が変わった訳ではない あれがあやつの元々の姿じゃ」
アルマ
「…そ…そうなんか…」
一方 マルコはシェルに押し剝がされたが すぐに回り込み シェルに抱きついていた
シェル
「いい加減にしなさい!もう結界は作りませんよ!!」
それを聞いたマルコは 慌てて手を放す
マルコ
「わ!ごめんなさい!つい…懐かしくって…」
シェル
「……全く そういえば…あなたは昔からそうでしたね…さてと…」
シェルは マルコが離れたのを確認し 空に向かって遠吠えをする
すると 上空に小さな球体が現れ ゆっくりと回転しながらみるみる巨大化し 空に赤黒い半透明な球体を作り出した
ゴムド
「……相変わらず見事な結界じゃな これほど強力な結界 久しく見ておらん」
マルコ
「さっすが!シェルさんだ!この中なら どんなに暴れても問題ないですね!」
マルコは 喜び勇んで中に入ろうとする
シェル
「マルコ君!10分ですよ!私が声をかけたら どんな状況であれそこで終了です いいですね!」
マルコ
「わかってますよ!安心してください!」
マルコは 満面の笑みで シェルの作った結界の中に入っていった