第174話 ゴムドの真名
ゴムド
「……やはり…来たか…」
マルコ
「いやぁ…素晴らしい統制ですね!」
ゴムド
「…何しに来たのだ?お主は ユウキ殿を帝都まで護衛する役目ではなかったのか?」
マルコ
「はい そうです ですが 居ても立っても居られなくてですね もちろん ユウキさんにはちゃんと許可をもらいましたよ」
マルコは すーっと地面に降りながら話す
ゴムド
「……それで?わしの質問の答えになっておらんぞ……雑談でもしに来たわけではあるまい」
マルコ
「いえ 時間があればお話しもしたいですよ 僕はここにきて日が浅い方ですから それに こう見えても 歴史に興味があるんですよ でも 出来れば歴史書に乗っていない逸話の方が聞きたいですね それを 生き証人であるあなたから聞けるなんて名誉そのものですよ ゴムドさん………いえ…拳武帝 ゴルドア様」
ゴムド
「……一体 いつの話をしておる そんな遠い昔の事など覚えておらん」
そんな重い雰囲気の2人の会話を 少し離れた場所で聞いていたヒガンと副長
ヒガン
「…………」
副長
「……ヒガン様?……一体 どうされたのです?そんな難しい顔をして?」
ヒガン
「………拳武帝…どこかで…聞いたことが…うーん…」
副長
「……あ…私 聞いた事があります…たしか…先々代の獄帝に仕えていた方と 同じ名じゃなかったでしたっけ?」
ヒガン
「そうだ 俺も思い出した……ここ 地獄を平定した三帝の1人だ…」
副長
「……ま…まさか ど…同一人物じゃあないですよ…ね…」
ヒガン
「……いや あの風格…あんな人物 そうそういまい…同一人物でまず間違いないだろう…」
副長
「ちょ!ちょっと待って下さい!じ…じゃあ…私をここに戻せたのは あの方のお力だったということですか!?」
ヒガン
「いや それは違う 前も言った通り ユウキ様が……」
ヒガンは ここまで言った後 ハッとした顔になり 時間が止まる
副長
「……?……どうされたのです?」
ヒガン
「……ちょっと待て」
ヒガンは ここで一度 ユウキとゴムドのやり取りを思い出す
ヒガン
『……あのゴムドという方は 三帝の1人 拳武帝 ゴルドア これは間違いあるまい…現にゴムド様は否定していない……
では 何故 そんな方があのユウキという方に服従している形を取っているのだ……もしや 獄帝の関係者か?……その可能性は高い なんせあのアモン王子と随分親しみ深いようだったし……
いや…待て…三帝は たしかに獄帝に仕えているとなってはいるが それは 便宜上だったという話だ 獄帝の命など聞かず 各々好き勝手に暴れていたと伝わっている
その中でも 荒ぶる悪魔と恐れられていたのが 拳武帝だ……伝承など多少盛る傾向があるが それでも そういう逸話が残っている時点で 多かれ少なかれそういった事があったのだろう…
そんな逸話が残っている方が 獄帝の関係者というだけで あのような服従する形を取るか?
……いや…するはずがない…ということは…考えられる理由は ひとつだ…
…ただ 単純にユウキ様が上ということだ…それも…圧倒的に!!』
副長
「……おーい…ヒガンさまぁ?」
瞳孔が開いたままのヒガンの目の前で 副長は 何度も手を振るが 反応が無いので 心配そうに覗き込んだ
ヒガン
「……お前…もしかして…とんでもない方に 復活してもらったみたいだぞ…」
副長
「え?それは どういった意味なんです?……あ…ところで ヒガン様 私にもちゃんとれっきとした名前があるんですよ?出来ればちゃんと名前で呼んでくださいよ…」
ヒガン
「おっと無駄話はここまでだ 身構えていろよ…何が起きるかわからんぞ…」
副長
「ええぇ…私の名前は 無駄話ですか!?……わ…わかりましたよ…また気付かない内に 消されたくないし…」
こうして ヒガンと副長は 何が起きてもいいように身構えた
マルコ
「さて 僕がここに来たのは もう なんとなく分かっていると思いますが もちろん 雑談をしに来た訳ではなく あなたと戦うためです」
マルコは ニコニコ笑いながらも 闘気は どんどんと満ちていく
ゴムド
「………そうか…ならば 断る」
マルコ
「………?…え?……な…なんで…」
ゴムド
「何を不思議がっておる わしは お主と戦う理由がない」
マルコ
「!!た…戦う理由がない!?……戦う理由がないから 戦わないと?」
ゴムド
「そうじゃ お主…わしを何だと思っておる…わしを戦闘狂か何か勘違いしておらんか?」
マルコ
「では……違うと?」
ゴムド
「当たり前じゃ!わしが 第一線から退いて どのくらい経っていると思っておる それに 今のわしと戦っても お主にはなんの実りも手に入らんぞ」
マルコ
「………むむ…それは…困った…」
ゴムド
「それより お主は ユウキ殿とサヤカ殿を守るという重要な任務の途中じゃろ まずは その任務をこなし 無事2人を帝都に送り届けたのち 然るべき時が来たならば 話ぐらい聞いてやろう だから 今は…」
マルコ
「……そんな機会なんてもうないんですよ……しかし……そうですか……ならば…仕方ありません…」
マルコは 頭が項垂れていたが 闘気が消えることなく むしろ 徐々に膨れ上がっていく
マルコ
「……あなたと戦う為ならば…少々強引にいかせてもらうしかない……あなたが…どうしても 戦わざるえない状況を作るしか……ない!!」
マルコは ゆっくりと顔を上げ グッと何かを覚悟した顔でゴムドを見た