第167話 兵たちと和解
それを見ていた兵たちは 隣同士とコソコソと話し出す
兵
「………なあ…お前…どうする?」
兵
「どうするって…お前はどうするんだよ」
そんな話を所々で話し出す そんな中 奥にいる1人の兵が勢いよく手を上げ叫んだ
兵
「ユウキ様!私も手伝わせて下さい!!」
それを皮切りにどんどん手を上げる兵が増え 気が付けば ほとんどの兵が手を上げていた
そして 初めにユウキに物言いに出た兵が 前に出て来る
それに気が付いたユウキもまたその兵に歩み寄る
兵
「………ユウキ様…」
ユウキを目の前にした兵は その場で片膝をつこうとするが ユウキはパッと手を出し止める
兵
「!!」
兵は顔を上げ ユウキを見つめる ユウキは何も言わず笑顔で頷いた
兵
「……ユウキ様…私は……いえ なんでもありません ぜひ 私も手伝わせて下さい」
ユウキは その言葉を聞くと ニコッと笑った後 椅子が置いてある高台に戻り 3千の兵を見渡す
3千の兵は 各々手を上げ 所々でユウキ様と声を上げている兵がたくさんいる中 ユウキは 精一杯 声を張り上げた
ユウキ
「みなさん!ありがとうございます!ですが 無理はしないで下さい!嫌々するなんてつまらないですし 本当に手伝いたいと思っている方だけ お願いします!」
ユウキは 3千の兵に向けて 深々と頭を下げた
グミ
「…………ちっ…」
サヤカ
「どうしたの?グミちゃん?舌打ちなんかして?」
グミ
「……一応…ユウキは俺の主人だからな…どんな事情があるにしろ 頭を下げている姿なんて…見たくない…」
サヤカ
「そう?私は誇らしく見えるよ?無駄に偉そうにしているより全然いいじゃない?」
グミ
「……俺が本気を出せば こんな奴ら一匹残らず消し去れるんだ!………そんな奴らに…なあ…そんな奴らに頭を下げる事が 誇らしい事なのか?」
サヤカ
「そうよ ほら ユウキの顔を見て ……すごく嬉しそうに見えるでしょ?」
サヤカに言われ グミは改めてユウキを見つめた
グミ
「…………いや…やっぱり わかんねぇ!!」
グミは プイッと他所を向く
サヤカ
「…ほんとは わかってるくせに」
グミ
「わかんねぇよ!!」
サヤカは 不機嫌そうに他所を向くグミを見て微笑んだ
サヤカとグミがユウキを見ている時 ゴムドもまた 兵士たちが 未だユウキの名を呼び盛り上がっている情景を見ていた
ゴムド
「………やはり わしの考えは古いのか……あれほど乱れた感情を持っておった兵士が…まとまるとは……」
アルマ
「…せやな じじぃの考えは古くて堅いんや もっと頭を柔らかくせな」
ゴムド
「うお!ア!アルマ!いつからそこに!?」
アルマ
「さっきの魔力の爆発があった時や 慌てて飛び出してきたのに 誰も見向きもしてくれへんかった……うちとあろうものが 出るタイミング大失敗や…」
ゴムド
「……あの時か…しかし アルマ 見たのであろう?」
アルマ
「ああ 見たで……でも あれは…あれは一体なんなんや?」
ゴムド
「……わからん 新しい事など もう 起こらんと思うておったのに ここに来て わからん事ばかりじゃ…」
アルマ
「…そっか…でも ほら…あのじじぃ…なんだったっけ……えっと…そうそう ガムラってじじぃならわかるんちゃう?なんか博識っぽいし」
ゴムド
「ふん!あいつに聞くくらいなら 知らなくよいわ」
アルマ
「……ハァ…じじぃ同士のいがみ合いなんて 見苦しいだけや…なんの需要もないで…」
ゴムド
「うるさい!ほっとけ!それはそうと 早く復旧作業に取り掛からねばならん ユウキ殿の威厳があるうちに」
アルマ
「……ん?…あ…なるほどなぁ…そういうこと……敵対心は微塵も感じんから 心配はないやろうけど……でも 相当なやり手やな…うちじゃ底が見えへんで…」
アルマは 遠い空を見ながら呟く
ゴムド
「………うむ 相当な実力者じゃ…今のわしならば……勝てんな…」
アルマ
「!!そんなにか!?」
ゴムド
「まあ お前の言う通り敵対心は皆無じゃ さてと……」
アルマ
「で どうするんや?ユウキがいなくなったあと?」
ゴムド
「無論 最後まで面倒をみる しかし ユウキ殿の行動はわしには出来ん そんな柄じゃないしの ここは サヤカ殿の助言を借りよう」
アルマ
「サヤカの助言?」
ゴムド
「まあ 見ておれ」
ゴムドは 振り向かず 手を上げ ユウキに向かって行った