第162話 帝都兵 到着
ユウキ
「……あ…そっか…本来 兵は戦闘がメインだもんなぁ…いざ来てみたら 復旧作業してくれって言ったら 納得出来ないって思うのも仕方ないか…」
ゴムド
「そのことも多少ありますが それより 復旧作業がこの村という事の方が 問題なのです」
ユウキ
「この村?」
ゴムド
「はい ユウキ殿は全く気にしていないかもしれませんが この村に住む鬼子という種族は この地ではかなり地位が低いのです」
サヤカ
「身分が低いってこと?……やっぱりそういうのあるんですね……だから あの時 村長さんが心配していたんだ…」
ゴムド
「そうです この地では 強者が絶対というものが根強く残っております 戦闘能力が極めて低い鬼子はどうしても軽んじられるのです それを踏まえた上で 兵たちに復旧作業をしてもらわねばならないのですが……ユウキ殿 あなたならどうしますか?」
ユウキ
「……そうですね…ここは しっかりと理解してもらって お願いするしかないんじゃないですか?」
ゴムド
「……たしかに 個々ならば その方法でも良いかもしれませんが 今回は約3千です この状況で お願いでは納得出来ない者が必ず現れます」
サヤカ
「……だったら 報酬を良くするとか?」
ゴムド
「それも一つの手ですな ただ 今回は後々の事も 考えねばなりません」
ユウキ
「?」
ゴムド
「帝都兵は 特にプライドが高く 自分たちより身分の低い者を卑下する傾向が強いのです 此度は上手くいったとしても 後々 報復しようとする者が出てくるかもしれません」
ユウキ
「……報復…ですか…では どうしたらいいんでしょうか?」
ゴムド
「はい その為に お二人にその椅子に座って頂いているのです」
サヤカ
「この椅子?」
ゴムド
「その椅子に座る者は この中で 最も身分の高い者の証明になり そして 足元に敷いてある黒い絨毯 こちらは 最も強者である証明になるのです」
ユウキ
「は!?」
グミ
「いいじゃねぇか あながち間違っちゃいねぇし」
ユウキ
「別に俺は身分が高いわけじゃないし ましてや戦闘だっててんで強くなんてないぞ」
ゴムド
「ご安心を あのガムラとまともに話しが出来るだけで充分 それに ユウキ殿は アモン王子と直接会話ができるのでしょう? この2つだけで お釣りがでますぞ」
サヤカ
「それで 私たちは この椅子に座って 一体何をしたらいいんでしょうか?」
ゴムド
「何もしなくて良いです」
ユウキ
「え?何もしなくていい?」
ゴムド
「……強いて言うならば 出来る限り無表情でいて頂きたい」
ユウキ
「…無表情…か…」
ゴムド
「……ユウキ殿…サヤカ殿…お二人には そぐわぬやり方かもしれません……しかし わしには この方法しか知らんのです…どうか…ご了承を…」
ゴムドは 非情な顔で 空を見つめた
グミ
「……なるほどな まあ…それが手っ取り早い」
サヤカ
「……どういうこと?」
グミ
「簡単に言えば 恐怖で縛っちまうってことだ」
ユウキ
「……いわゆる 命令 するってことか……」
ユウキは 正直あまり乗り気ではなかった だが ゴムドの言った報復という言葉 このことが頭から離れなかった もし ここに住む鬼子たちに危害が出てしまっては 元も子もない それに 兵をどう扱えばいいのか 今のユウキでは見当もつかなかった
サヤカ
「……ユウキ…ここは黙って ゴムドさんの言う通りにしよ こんなことどうしたらいいかわかんないし…」
ユウキ
「…そう…だよな……ゴムドさん すみませんがよろしくお願いします」
ゴムド
「おまかせあれ」
ゴムドはそういうと ゴムドの体格に合う大きく太い大剣を出す それを足元の地面にザクッと刺し 兵の到着を待った
そして…
ユウキ
「……来た……うわぁ!…や…やっぱり 3千ともなると 凄いな…」
3千の兵の行軍が間近に迫り ユウキの目でも目視確認できた
サヤカ
「ユウキ!顔!顔!」
ユウキは 興奮した様子を隠せず つい顔が緩んでしまう
グミ
「クックク…ユウキには無表情なんて出来そうにねぇな!」
ユウキ
「な!なんだと!言ったなグミ!見てろよ 俺の完璧な無表情を見せてやる!」
ユウキは ムスッとしながら グミを睨む
グミ
「……言ったそばから もう駄目じゃねぇか…」
グミは 睨んでくるユウキを見て ため息をつく
グミ
『……最悪 俺が少し強めの圧をかけりゃ 大丈夫だろうがな…』
そして ようやく ヒガン率いる3千の部隊が ユウキ達の前に降り立った
ヒガンは 降り立つや否や すぐに膝をつき 頭を下げる 3千の兵も また同様 全員膝をつき 頭を下げた
ゴムド
「…………」
ゴムドは何も言わず 地面に突き刺した大剣を握ったまま 何も発しない
長い静寂の中 時折風の音が聞こえる さほど 時間は経っていないが ユウキには とても長く感じ 息苦しくなっていく
そして 重い静寂の仲 ついに ユウキはキョドりだしてしまい 周りを挙動不審に見渡した
幸い ヒガン率いる兵たちは 皆 頭を下げたままだったので ユウキのキョドり姿は見られなかったが
グミ
『……じっとしてろ ユウキ』
グミは見兼ねて ユウキに直接語る
ユウキ
『……あ!グミ!なあどうしたらいいんだ?これは 俺が何か言ったほうがいいの!?』
グミ
『何もしなくていいって言ってたろ?この時間も大事なもんなんだ』
ユウキ
『そ…そうなの……わ…わかった…』
ユウキは グミの言葉で少し冷静を取り戻す
そして 長く間を空けたゴムドは ゆっくりと地面に突き刺していた大剣を上げ また 勢いよく地面に突き刺した その瞬間 大剣から 風を切り裂いた音が鳴り 村の広場全体を包む
その一陣の風は 強力な恐慌を纏っており 一部の兵は体制を維持するので やっとの状態となった
ゴムド
『………ほぅ…さすが…帝都兵だ…ある程度抑えたとはいえ わしの風を受けても 体制を維持出来る者のほうが多いとはな………あまり…ユウキ殿の前ではしたくはなかったが…致し方ない…』
ゴムドは覚悟を決めた顔をした後 ゆっくりと歩を進め ヒガンの元に行く
ヒガンの目の前に来たゴムドは ゆっくりと右足を上げ けたたましい音とともに 頭を下げているヒガンの頭を踏みつけた