第161話 新たな地図の完成
リク
「そうですか わかりました この紙に書けばいいんで…わぁ…こ…この紙…」
リクは受け取った紙を眺める リクはこれまでこんな上質な紙を触る事はもちろん 目にした事さえ無かった
エミリ
「どうかした?リク君?」
リク
「い…いえ な…なんでもありません…」
リクは 平静を装いながら そっと机の上に紙を広げ エミリから受け取ったペンを見る 細かい装飾の入った見たことのない材質だ ペン先も リクにはわからない鉱石の様なものが付いている 誰が見ても高価なペンを 震える手で握り直し ゆっくりとペン先をおろす 触れたペン先だけ黒い点が はっきりと写る
リク
「…………」
リクは 何事もない顔で ペン先を上に伸ばし線を引いて行く もちろんリクはこんなペンを使った事などなく 真っ直ぐ引いているつもりだが たどたどしい線となる
リク
「………わぁ…」
しかし リクにとってこのたどたどしい線に感動する たった一度で かすれる事も 薄れていくことも無く書けたことに 思わず声が出てしまうほどだ
リクがそのたどたどしい線に感動していると ふと右側から目線を感じ 出来る限り首を動かさず 横目で見る すると エミリと目が合い エミリにニコッと笑いかけられる
リク
「わ!……あ…い…いえ なんでもありません…」
リクはすぐ冷静なふりをし 机に広げた紙に目線をおろした
エミリ
「フフフッ…」
エミリは 大人ぶっているリクに 自然と笑顔がこぼれた
そして…
リク
「………良し…これで半分…」
リクは 慣れない手つきで 一生懸命に書いていく
エミリ
「はい リク君 分からない箇所は 後2箇所ね こことここ 書き出してくれる?」
リク
「はい わかりま………え…」
リクは顔を上げ返事をしたとき 目の前に置かれたエミリの書いた地図が目に入る
リク
「こ…これって…今…書いたんですよね……こんな正確に……しかもこんな短時間で…」
エミリ
「どうしたの?……あ…もしかして ちょっと雑だった? でも わかればいいでしょ?リク君も 丁寧に書く必要なんてないからね 私がわかればいいんだからさ」
リク
「こ…これが…雑……くっ…わ…わかってますよ…」
こうして 慣れない手つきでリクは一生懸命書いていく はじめこそたどたどしくふらふらした線だったが エミリのペンの持ち方をチラチラ見て 見様見真似をするようになってから みるみる上達していき 次第に描く線も 真っ直ぐに引けるようになっていく もちろんエミリに比べたら天と地の差があるが 最後の一枚は 子供が書いたとは思えないほど完璧な出来だった
リク
「……で…出来た…」
エミリ
「ん?出来たの?……どれどれ…」
エミリは 最後の一枚を受け取る
エミリ
「……リク君…あなた…製図の才能あるよ…」
リク
「…冗談言わないで下さい エミリお姉ちゃんの書いたものに比べたら 全然ですよ…」
エミリ
「冗談じゃないよ 私がここまで書けるようになるには もっと時間がかかったよ」
リク
「……いまは そんな事いいでしょ それより早く完成させないといけないのでしょ?」
エミリ
「あ!そ!そうだった!」
エミリは 我に返り リクの書いた地図をザッと見た後 ペンをくるっと器用に回し 一気に書き上げていった こうして 新たな第1鉱山 第2鉱山 第3鉱山の地図が完成した
ちょうど その頃 広場では……
ゴムド
「おっと そうじゃった ユウキ殿 何度もすまぬが 1つよろしいですかな?それから サヤカ殿にも」
ユウキ
「はい なんでしょ?」
ゴムドは ユウキの了解を得た後 周りを見渡し 少し奥に歩き出す
ゴムド
「……うむ ちょうど少し高台になっておるし……ここがよいな」
ゴムドは独り言を呟きながら 高台に 真っ黒に染まった絨毯をひき その上に 赤く染めた立派な椅子を2脚出す
ゴムド
「ユウキ殿 サヤカ殿 申し訳ないが この椅子に座って頂けぬか?」
ユウキ
「この椅子に?」
サヤカ
「なんだかすごい立派な椅子だね……なんだか 格式が高そう……」
ユウキとサヤカは よくわからないまま ゴムドに言われた通り椅子に座る
ゴムド
「それから鬼神よ お主はユウキ殿の膝の上におれ それで充分 圧が かかろう」
グミ
「俺もか?……えー…ユウキの膝の上?……うーん…お?」
グミは 嫌々ながら ユウキの膝の上に乗ろうとしたが パッと振り返る
グミ
「別に ユウキじゃなくてもいいだろ?圧さえかかりゃ」
ゴムド
「うむ それは別に構わん」
グミ
「へへへ…それなら…サヤカの膝の上にしよ」
グミは ポンッと飛び サヤカの膝の上に乗る
サヤカ
「……へー…グミちゃんってほとんど重さがないんだね 乗っているのがわかるくらい」
グミ
「ああ 重さがあってないようなもんだからな」
ユウキ
「おい グミ!」
サヤカ
「まあまあいいじゃない ゴムドさんもいいって言ってるし それに 私 グミちゃん触るの結構好きなんだよね この何とも言えないプニプニ感」
サヤカはそう言うと 膝の上にいるグミをこねくり回す
グミ
「お!おい!触るのはいいが 引っ張んなよ!」
サヤカ
「えー…いいでしょ 別に……ん?へー…結構 部分部分で固さが微妙に違うんだ…」
グミ
「だから 引っ張んなって!」
サヤカ
「うん!やっぱりここが最高だね!」
サヤカは グミの発言を無視し ほっぺた辺りをムニムニする
グミ
「お!おい!グニグニすんなって!お…おい!ユウキ!なんとか言ってくれ!」
ユウキ
「…せいぜいグニグニされてろ それで ゴムドさん これは どういった意味で?」
ゴムドは 少し考えた後 ゆっくりと口を開いた
ゴムド
「……此度の派遣 少なからず納得出来ぬ者もいると 思われるのです…」