第157話 目的地へ
鬼子の子供
「………うーん…ここじゃ遠すぎて 村長の声聞こえないなぁ…」
鬼子の子供
「だったら 聞こえるところまで前に行けばいいだけだろ デン」
5人の中で 一番大きな子が ひとつ前の茂みに向かおうとするが デンが手を掴み止める
デン
「ダメだよ ボグ こっち見られたらすぐ見つかっちゃうよ」
ボグ
「大丈夫だって 見つかんないって」
デン
「前もそんなこと言って すぐ見つかっちゃったじゃないか ほら リクも止めてよ」
リク
「ボグ ここでもほとんど聞こえないのに 少し前に行ったところで 大して変わらないぞ」
ボグ
「だったらどうしたらいいんだよ リク」
リク
「……そうだな…うーん…」
デン
「……ねぇ ほら あそこはどうかな?村長に近いし」
デンは 村長の立っている後ろの建物を指差す
ボグ
「……あそこ?……デン どうやってあそこまでバレずに行けるんだよ 大人たちの前を通らないと あそこまで行けないだろ?」
リク
「……いや…行ける…ほら あの裏手を通って行けば 村長以外死角になってる」
ボグ
「……ふーん…よくわからないけど…まあ リクに任せる とにかく早くしないと話が終わちゃうぞ」
3人の鬼子の子供たちの会話を隣で聞いていたエミリは 子供たちの性格分析を始めた
エミリ
『……このボグって子は 典型的な猪突猛進型だね 考えるよりも 先に行動しちゃうタイプ 良くも悪くも真っ直ぐな子だね 弓の練習もずっとしてたし…』
デン
「じゃあ リクが先頭だね よし リクの言うように右から回って行こう!」
ボグ
「おい!デン!なんでオレが一番後ろなんだよ!」
デン
「ん?それは 一番後ろが一番大事だからだよ」
ボグ
「一番大事?」
デン
「そうだよ 行軍では 一番後ろは 殿 といって 一番大事なんだよ」
ボグ
「……へーっ…そっか…一番大事か…よし!任せろ!そのしんがり?ってのはオレがする!」
デン
「うん 任せたよ ボグ」
エミリ
『このデンって子は ひらめき型で3人のまとめ役ってところかな?で 先頭にいるリクって子は ボグと真逆で理論から入るタイプかな なんでも一度頭で考えてから行動する感じ ただ…』
リク
「さて 行こうか………わっ!!」
デン
「あぶない!」
デンは 目の前で転びそうになったリクを さっと手を掴む
リク
「あ…ありがとう デン」
エミリ
「ちょっとどんくさいんだよね 弓の練習も 最初は 全然上達しなかったし…でも いきなり 理解したと言って みるみる上達していったんだよね 気が付いたらボグ君と同じくらい上手くなってた……フフッ…この3人 凄いデコボコだけど 上手くデンがまとめてる 中々いいトリオだね』
ボグ
「じゃあ エミリお姉ちゃん ちゃんと付いてきてくれよ それから エミリお姉ちゃんでけえから くれぐれもバレないように低くしててくれよ」
エミリ
「うん 了解 任せて」
エミリは 元々狩猟をしていた人物だ 気配を消す事など容易いこと それにエミリは 念には念を入れ 子供たちに気付かれない様に 気配を消す魔法を全体に使っていた
そして 3人の鬼子の男の子は ワクワクドキドキで 目的地に向かった
鬼子の女の子
「……ねぇ…エミリお姉ちゃん…」
エミリ
「どうしたの?レムちゃん?」
レム
「…こんなコソコソしなくても エミリお姉ちゃんが村長に話せば なんとかなるんじゃないかな?」
もう一人の女の子
「レム そんなことエミリお姉ちゃんはわかってんの わかってて付き合ってんの」
エミリ
「まあまあ カルちゃん ここは黙って男子3人に付き合ってあげましょ」
カル
「……全く…いつまでも子どもなんだから…」
エミリ
「………」
やはり 女子とはどの種族でも 大人なんだなぁと つくづく思うエミリであった
それから 数分後……
リク
「………よし 後は ここを抜ければ目的地だ」
デン
「……でも…さすがに…ここは…」
リク
「……上から見た感じだと…こんなに開けてるように見えなかったのに…」
リクとデンは呆然とする そこは ちょうど草木が無く さらに 村長の目線の先だからだ しかし この1メートルほどの間を抜けなければ 裏手の建物に行けなかった
ボグ
「……いや…大丈夫だ もうここは猛ダッシュで走り抜けようぜ」
リク
「ダメだ 見なよ ここはちょうど日陰で少しぬかるんでる こんなとこ走ったら 足音ですぐにバレてしまう ここまで来て足音で見つかるなんて 目も当てられない」
ボグ
「じゃあ どうしたらいいんだよ!」
リク
「だから 今考えてる ちょっと待て」
ボグ
「そんな時間ないだろ 話しが終わちゃうぞ!」
リク
「わかってるよ!そんなこと言われなくても!」
デン
「しーっ!2人とも声が大きいよ それにそんなこと言い争っても仕方ないでしょ」
ボグ
「分かってるけど 早くしないと…話が終わちゃったら 意味がないだろ?」
デン
「………うーん…あ!そうだ!」
デンは何かをひらめき エミリの元へ寄っていった