第151話 村長の家にて
アルマ
「………なぁ…あのじじぃ…一体…」
ゴムド
「……あいつは……いや…何でもない……とにかく 鉱山の復旧作業をせねばならん 出来るだけ良質な鉱石を譲ってもらうためにな」
ゴムドはそう言うと アルマの頭を優しくポンッと叩いた
アルマ
「……うん…わかった…」
ゴムドが何か言いかけたが アルマはそれ以上聞こうとしなかった
その頃 ユウキとサヤカは村長の家に 向かっていた
ユウキ
「……なあ サヤカ 帝都の直轄ってなんだろな?」
サヤカ
「さあ?名前通りなら 帝都の一部になるって事じゃないかな?」
ユウキ
「……それって この村にとって いい事なのかな?」
サヤカ
「……うーん…多分 いい事じゃないかな?帝都って いわゆる首都みたいなものでしょ?色々なことで 優遇されるんじゃないかな?わかんないけど…」
ユウキ
「そっか…でも 少しでも嫌っぽい素振りを見せたら 無かったことにしよう 強制するわけにはいかないからな アモンには 悪いけど…」
サヤカ
「うん そうね 嫌な事を無理に進めるのは良くないよ でも 簡単には断れないよね」
ユウキ
「だよな よく表情を見とかなきゃな」
そんなことを 話しているうちに 村長の家に着く
サヤカ
「……うわ…人がいっぱい…どうしたんだろ?…あ!ミナ!」
ミナ
「……?……あ!サヤカ!」
サヤカは ミナを見つけると手を振った それを見たミナは 満面の笑みで パタパタと走ってきた
ミナ
「診療所では ありがとうです 私もずっといたかったけど バタバタしちゃってて…」
サヤカ
「ううん 私も結局何も出来なかったし ほとんどグミちゃんがしてたしね」
ミナ
「あ!鬼神様もありがとうです」
グミ
「別に構わねぇよ お前ら程度に使う回復魔法なら なんの負担にもならねぇしな」
ユウキ
「だったら もっと強い回復魔法を使って上げれば すぐに 良くなったじゃないか」
グミ
「はあ?あいつら生命体だぞ?そんなことしたら 廃人になっちまうだろ!」
サヤカ
「え?どういうこと?」
グミ
「幽体なら 強い回復魔法を使えば 一発で回復できるが 生命体は そういう訳にいかないんだ 分不相応の強い回復魔法を使うと 下半身が動かなくなったり 体液の逆流が起きたりしちまう 最悪 生命活動も停止しちまうんだよ まあ スキアみたいに強い生命体なら 強めの回復魔法は使えるが 鬼子のような弱い生命体には 使えないんだぜ 基本 回復魔法は 生命体には補助にすぎない 回復するかしないかは 本人次第だ」
ユウキ
「そういうことか…だから すぐには回復しないんだな…」
グミ
「そうだ 俺がしていることは かなり繊細なことなんだぞ」
ユウキ
「はいはい わかったわかった それでミナさん」
ミナ
「はい!もしかして第2鉱山ですか?はい!大丈夫です!第1鉱山でも第2鉱山でも 全ての坑道は 頭に入っていますです!いつでも道案内できます!」
ミナは 両手を強く握り 鼻息を荒くする
ユウキ
「あ……それね……もう…終わったんだ…」
ユウキは 上を向き 遠い目で 空を見つめた
ミナ
「……終わった?……そ…それって…もう…鉱山には…行かないって…事ですか…」
ユウキは もの悲しそうに頷く
そんなユウキを見たミナは もうユウキ達が鉱山の問題には 関わらないと勘違いしてしまう
ミナ
「……で…ですよね……うん…大丈夫です!……後は…なんとかしますか…お気にしないでください…」
ミナは 泣きそうになったが ユウキ達にも事情があるんだと 顔を数度振り 笑顔を見せた
サヤカ
「?……あ!ミナ!違うよ! もう!ユウキの言い方が悪いのよ! 実はね…」
サヤカは ミナに 第1鉱山と第2鉱山のファレーナアントの殲滅が 終了したことを伝える
ミナ
「!!!え……ほ…本当に?……あれから ほとんど時間経ってないのに……」
サヤカ
「本当よ でも ファレーナアントがいなくなっただけで 他は手つかずなんだ 特に 第1鉱山は 長い時間閉鎖してたんでしょ?それで 鉱山内は随分と老朽しているみたい で その復旧には やっぱり人手がいるでしょ そのことで 村長さんに話があるんだけど」
ミナ
「……ちょっと信じられないけど サヤカが言うなら本当の事なんだよね 村長ですね!はい 分かりました!」
ミナは 人だかりを分け ユウキとサヤカと共に 村長の家に入る
家に入ると ロポス村長を中心に 鬼子たちが集まり 地図を広げ話し合っていた
ロポス
「それで?……良し わかった 引き続き任務をこなし………ん?おお!!」
ロポスは 鉱山関係の鬼子達と 慌ただしく会議をしていたが ミナたちを見つけるや否や 慌てて近づいてきた
ロポス
「こ!これはこれは!何とお礼を言っていいやら……こんな短期間で 第3鉱山の解放をして頂けるとは!」
ミナ
「ううん!それだけじゃないんだよ!驚かないで聞いて!実は もう 第1鉱山 第2鉱山も 解放出来るんだよ!!」
ロポス
「は?」
ミナとサヤカは ロポスに鉱山開放の経緯を話した
ロポス
「な…なんと……一体誰が……」
サヤカ
「1人は 第3鉱山の解放に尽力してくれたゴムドさんですよ もう1人は そのお友達さんが来てくれて 2人で協力して鉱山を開放してくれたんですよ」
グミ
「友達?………あの2人が聞いたら ブチ切れそうだな!」
ユウキ
「でも 両方ともなんだかんだ言いながら お互いを認めてるし 友達でいいんじゃないか?」
グミ
「そうか?ほぼサヤカが強制させたもんだろ?」
ユウキ
「それは 言っちゃいけないぞ グミ」
グミ
「……しかし あの時のサヤカは ヤバかったな!」
グミは わざとらしく身震いをする
ユウキ
「ククッ……まあ…確かにな」
ユウキとグミが コソコソと話していると サヤカにジト目で見られる
ユウキ
「う……」
グミ
『………やっぱり サヤカが一番こえー…』
ユウキは サヤカに睨まれるだけで終わるために ロポスに話しかけた