第142話 診療所の出来事
扉を開け 中へ入ると サヤカだけではなく 他の鬼子達も 怪我人の面倒を見ているようで 中はバタバタしていた
アルマ
「なんや?ユウキ?そんなとこ立っとたら 邪魔やで?」
ユウキ
「あ!ごめん アルマも手伝っているのか…いや…ちょっと…サヤカを…」
アルマ
「サヤカ?ああ サヤカやな?ほら あそこや」
ユウキ
「……え?どこ?………うわ…すごい人集り…」
サヤカがいるであろう場所は たくさんの人が集まり 全く見えなくなっていた
アルマ
「随分 優しく接してくれるみたいで えらい人気やで…ってか そもそも 怪我なんかしてへんやろって奴もおるみたいや……うちも 最初 サヤカみたく 診察しとったんやけど すぐに 誰もこんようになった……なんでやろ…」
グミ
「……そらそうだろ……右手が麻痺しちまった奴を 全身麻痺させたら 誰も見てもらいたくねぇよ……」
ユウキ
「は?な…なにしてんの…」
アルマ
「いやぁ…うち 回復魔法系は 全然使えへんねん だから 毒を以て毒を制す って言葉あるやん? だから 麻痺したんやったら もう1回麻痺したら治るかなって」
グミ
「……治るわけねぇだろ…あれは 俺がもう少し発見が遅れてたら 本気でヤバかったんだぞ?ユウキ 気付かなかったのか?」
ユウキ
「……あ…あの時…グミが回復魔法を怪我人にして回っていた時か…」
アルマ
「うち 状態異常魔法なら 得意やねんけどなぁ…」
ユウキ
「……それで 雑用にまわったと……ハハ…それで エミリは?」
アルマ
「エミリは 裏庭で子供の面倒見とるで」
ユウキ
「なるほど エミリっぽいな」
アルマ
「それで サヤカに何の用事や?もしかして 第2鉱山か?それならもうちょい待って欲しいんやけど?」
ユウキ
「いや 鉱山に向かうって話じゃない ちょっと帝都の事でな」
アルマ
「ふーん…わかった ちょい待っとき サヤカ呼んできたるわ」
患者
「あ…あの…ここが痛くて……」
サヤカ
「はい ここですか?」
患者
「そこです!ああ………はっ!痛い」
サヤカ
「……うん…大丈夫ですよ 安静にしていれば すぐに痛みは引きますよ」
患者っぽい者
「あ!ぼ…僕も ここが……」
サヤカ
「はいはい……えっと…ここかな?」
患者っぽい者
「……あ…そこです…」
どうやら サヤカの周りは 比較的元気で かつ ただ単純にサヤカと触れ合いたいだけという 連中が集まっていた
アルマ
「……ちょいどき!サヤカ!ユウキが呼んどるで」
サヤカ
「ユウキが?でも ちょっと待って 患者がいっぱいいるから」
アルマ
「大丈夫や 後は うちが代わったるから」
サヤカ
「ほんと?……じゃあ アルマ 後 お願いね」
アルマ
「任しとき!」
サヤカ
「じゃあ 皆さん 後は こちらのアルマが見てくれるので そのまま 待ってて下さいね」
サヤカは 椅子から立ち上がり ユウキの元へ向かって行く
サヤカの座っていた椅子に アルマは ドカッと座る
アルマ
「………さて 後は うちが見たるで」
患者たち
「…………え……」
患者のふりをした者
「……あ…あれ?…き…急に 痛みが無くなった…」
患者じゃない者
「……あ…俺も…うん…大丈夫みたいだ…」
怪我人を装っていた鬼子達は そそくさとアルマから離れようとする しかし…
患者
「……あれ?…な…なんだ? これ?……透明な壁?」
アルマ
「……結界や…うちが見たるって言ってんのに 逃げようとしてへんか?」
患者たち
「…い…いえ…決して…ただ……もう 大丈夫かなって…ハハハ……」
アルマ
「それを決めるんは うちや!黙って並ばんかい!」
患者たち
「………ひぃ…」
アルマ
「……うちは 回復魔法使えへんけど 大丈夫や… うちの理論『右が痛けりゃ 左を痛めたら 右の痛み無くなるやろ療法』を試したるで」
アルマは 指を鳴らしながら 不気味な笑顔を振りまいた
患者たち
「……え…そ…それって…余計 酷くなるんじゃ…」
その後 アルマが見ているエリアから 叫び声が木霊したが 結界のおかげで?外に漏れず 静かな拷問となっていた
サヤカ
「ユウキ!なに?用事って?」
ユウキ
「実は…」
ユウキは サヤカにアモンの話をする
サヤカ
「そっか…でも しょうがないよね…」
ユウキとサヤカが これからの事を話していると ゴムドと鉢合わせをする
ゴムド
「これはこれは ユウキ殿」
ユウキ
「あ!ゴムドさん!」
ゴムド
「ちょうど ユウキ殿に話しておきたい事がありましてな」
ユウキ
「俺に?はい なんでしょう?」
ゴムド
「今 第2鉱山に行って来たのですが 第3鉱山とは違い かなり複雑な構造になっているのです 第3鉱山は 数こそ多かったのですが ファレーナクイーンを守る為 ファレーナアントが集結しておったでしょう ですが 第2鉱山には 守る者がおらぬようで かなり 広範囲に散らばっているようなのです」
ユウキ
「そうなんですか…… やっぱり ファレーナアントを倒せる程の者が 沢山いりますね…それで 実は…」
ユウキは ゴムドに軍隊の応援が来る事を 告げる
ゴムド
「……そうですか…うむ…ならば もうわしは 必要ないですな」
ユウキ
「そんなことないです…それとですね 俺とサヤカは とにかく帝都に戻ってこいと言われて…」
ゴムド
「なるほど やはり ユウキ殿は 帝都で重要な役目があるのですな」
ユウキ
「いえ 別に重要な役目なんてないですよ でも 戻るということは 最後まで見届けられないので 出来れば ゴムドさんに 最後まで見届けてもらいたいんですが…」
ゴムド
「ハッハハハ!ご安心を 軍勢を連れてくるということは 秀でた将も来ますぞ わしが 出る幕はありませんよ」
サヤカ
「それでも!……ゴムドさんに指揮して頂いた方が…」
ユウキ
「そうです!ゴムドさんが見てくれるなら 俺たち 安心して帝都に戻れるんです」
ゴムドは 優しい笑顔で 首を横に振る
サヤカ
「………ゴムドさん…」
ゴムドは ゆっくりと頷いた後 ユウキ達に背を向け歩き出す
ユウキ
「…………」
ユウキとサヤカは 立ち去って行くゴムドの背を見ていた時 上空から 声が聞こえてきた
???
「………シシシッ…また そうやって逃げるのか?」
ユウキ
「………え?」
ユウキは 空を見上げる すると 老人の風貌をした者が フワフワと近付いてくる
サヤカ
「………あ…あの人は…たしか…ガムラさん?」
グミ
「………な!?…や…やばいぞ…おい!ユウキ!!あいつはやばい!!一度離れ…」
グミは ガムラを見た瞬間 得体のしれない闘気を感じ ユウキに注意喚起をする
ユウキ
「グミ 大丈夫だ 帝都の王の1人だよ 以前 色々とお世話になった人だ でも 一体 何しに?」
グミ
「……そ…そうなのか?……お前の周り…バケモンばっかだな…」
ガムラは ゆっくりと降り ユウキに近付いてくる
ガムラ
「…シシシッ…久しいのう…ユウ…」
ガムラが ユウキに話しかけた瞬間 ガムラは 上空に吹っ飛ばされる
ユウキ
「!!!え!?な!なんだ!?」
ガムラがいた場所には 今までとは比べものにならない程闘気を纏ったゴムドが アッパースイングをした姿だった