第135話 ユウキの選択
ほぼ同時に ミナとゴムドを襲いかかっていた2匹は サヤカとエミリを襲ったように 列を作って 突っ込んで行く
先頭のファレーナナイトは すでに手を槍状に変化させて 両手を前に出し 回転しながら ゴムドに突っ込んで行くが…
ゴムドは 左手で髭を触りながら 全く気にする事無く 右手を振り上げ 回転しながら突っ込んでくるファレーナナイトを真っ直ぐ正拳突きをする
槍状に変化したファレーナナイトの両手は まるで ガラス細工をハンマーで砕いたように粉砕し そのまま 身体さえも 粉々に砕け散った
しかし 後方のファレーナナイトは 仲間のそんな様子を気にする事無く ゴムドの横をすり抜けて ゴムドの後ろにいる ミナに向かって行こうとするが…
ゴムド
「……残念じゃったな…わしを出し抜くのは ちと実力不足じゃ」
ゴムドは あっさりと左手で ファレーナナイトの頭を掴み そのまま壁に向かって投げた
超スピードで 壁に叩きつけられたファレーナナイトは 先頭のファレーナナイト同様 バラバラに砕け散った
ちょうどその時 サヤカとエミリを襲っていた1匹が サヤカに槍を構え突っ込んでくる時 アルマが叫ぶ前に ゴムドはすぐに気付き サヤカを守るべく ゴムドは すでに動き出していた
ゴムド
『…ほう なるほど…先頭のファレーナナイトは壁の役目か…』
ゴムドは 両足に力を込め サヤカを襲い掛かっているファレーナナイトを 打ち砕くべく 右手を振りかぶる
ゴムドはこの時 充分間に合うと思っていた しかし ファレーナナイトが サヤカに一定の距離に近づいた時 魔力を帯びた黒いオーラが サヤカの身体を覆うのが ゴムドは感じてしまう
その異常な魔力で ゴムドの身体は 強制的に止まってしまった
ゴムド
『な!なんじゃ!あの魔力は!?……う…動けぬ…い!いかん!間に合わん!!」
ゴムドは それでも動こうとするが サヤカの周り発する異常な魔力のオーラで動けなかった そして 動けなかったのは ゴムドだけではなかった
ハデスの命で サヤカを守るため サヤカの影に潜んでいた者も 動けずにいた
???
『な…なんだと…こ…この…わたしが…動けない…だ…と…』
両者とも 動く事ができず ファレーナナイトの槍が 無情にも胸を貫く
しかし 貫いたのは サヤカではなかった
サヤカに槍が触れた瞬間 強制的に 転移が発動し ユウキの胸を貫く
ユウキ
「うお!ビ…ビックリした……あ…そっか…」
ユウキは 突然自分の胸にファレーナナイトが現れたので かなり驚いたが 1番驚いているのは サヤカを貫いた筈のファレーナナイトだ
ファレーナナイトは 何故 ユウキを刺しているのか訳がわからず かなり混乱する
グミ
「……残念だったな もし 攻撃したのが サヤカじゃなかったら 結果は変わっていたかもな……相手が 悪すぎたな」
グミはそう言うと ファレーナナイトの胸を貫く
ファレーナナイトは 困惑の中 赤く光った眼から光を失い 動きは止まっていった
その様子を見ていたゴムドは ファレーナナイトと同じように 大混乱する
ゴムド
「な…なにが…どうなったんじゃ…鬼神!どういうことじゃ!説明せい!」
グミ
「見たまんまだ この2人は 普通じゃないんだよ…それ以上説明しようがねぇ…」
サヤカ
「私が 攻撃を受けたりすると ユウキが全部身代わりになっちゃうみたいなんです 何でか?って聞かれると 私もユウキも良く分からないんですけどね…」
ゴムド
「み…身代わり?意図的ではなく…勝手にか?そ…そんなこと 聞いた事ないぞ…」
グミ
「ちなみに ユウキは何も無効には出来ないが 今の所 何を受けても体力は減っている様子はないし 状態異常もかかっているのに 無意味という訳が分からない奴だぞ」
ゴムド
「……それは なんとなく分かっていたわい…しかし…もはや わしの物差しでは 図る事は出来んのう…」
アルマ
「じゃあ サヤカは全くダメージを受けへんってこと?……なんや それ?訳が分からんなぁ…」
グミ
「そういうもんだと思うしかないぜ………ん?そういや 俺の周りにいた2匹は どこに行った?」
グミは辺りを見渡すが どこにもいなくなっていた
エミリ
「……あ!天井にいたファレーナアントの群れも 全部いなくなってるよ?」
ユウキ
「……もしかして…逃げた?」
グミ
「…そんな奴らじゃねぇよ さっきの戦い方見ただろう?仲間を犠牲にすることに なんの躊躇もしない……自分自身さえもな…おそらく 奴らの中心部…そこに集結してるんだろう…」
ユウキ
「……そうか……」
ユウキは 立ち止まり考える
ユウキ
「………向こうからしたら 俺たちは 縄張りを荒らす侵略者…という事なんだろうな……」
グミ
「………俺は どっちでも構わんぞ?」
ユウキ
「………え?」
グミ
「どっちでも構わんが どっちもは もう無理だ…」
ユウキ
「………だよな…」
グミ
「………ひとつ教えといてやる 量産型のファレーナアントは 朽ちるまで何も飲まず食わず ただ 縄張りを広げるために活動する しかし ファレーナアントの大元 こいつはそうじゃない…」
ユウキ
「………?…!!ま…まさか…」
グミ
「……ミナが言ってたろ…村の者が村から離れていっているって……離れちゃいないんだ…未だ…鉱山にいるんだよ…大元の栄養素としてな…そして この規模……俺の予想じゃここが…本丸だ 第3鉱山が最後じゃない…1番最初に被害を受けたんだ…第3鉱山の被害報告が遅れたのは 発見者が 村に戻る事が出来なかっただけだ…」
ユウキ
「……それじゃあ…村の人は…」
グミ
「……さぁな 行ってみないとわからん ただ 奴らも必死ってことだ 種族同士の戦いなんて どっちが間違っているとかないからな 見方によっちゃどっちも正しい」
ユウキ
「…………」
グミ
「……俺の知っている事は 何だって教えてやる ただ 選択はお前が決めろ 俺は それに従う」
ユウキ
「……どっちが正しいとか間違っているとか この考え自体が違うんだな…その時の立ち位置によって変わる……なら…俺は…経緯はどうあれ ミナ側に立ったんだ…それだけが真実だ……」
ミナ
「………ユウキさん…」
ユウキは ミナに笑顔を見せる
ユウキ
「……グミ…分かった ……ファレーナアント 全てこの鉱山から……排除する!」
グミ
「分かった! 任せろ!」
グミは ユウキに向かって大きく頷いた
ユウキは ファレーナアントの種族としての行動は 理解できた そして 鬼子と呼ばれるオロス村の事情も分かる ユウキはもしかしたら住み分けが出来ればと考えたが もはや 両種族の規模を考えると そんなことができる状況ではなかった
鬼子たちを移住させるなど 色々考えを巡らしたが ユウキは 最終的に ファレーナアントを全滅する選択を選ぶ
ユウキは天を仰ぐ すると ユウキの頭の中で アモンの顔が浮かぶ
ユウキ
『………そうか…アモンは いつも こんな苦渋の選択をしているんだな……』