第132話 アルマの能力
ユウキ
「な…なんて 数だ…」
ユウキは 右手に持っている木剣を 力強く握り直す
その時 ふと ユウキはアルマの事が気になり 後ろをチラッと見る
アルマは 緊張感なく 両手を頭の上に置き 足を交差させていた
もちろん アルマは武器を構えるような素振りもしない そう 誰が見ても これから戦うとは思えないのだ
ユウキ
「お!おい!アルマ!来るぞ!何か 武器はないのか!?」
アルマ
「ん?うち 戦えへんもん」
ユウキ
「はぁ!?な!何を言って!」
アルマ
「ほらほら ちゃんと前向かんと ほら 来よるで」
ユウキ
「なんで!戦えないのに 先陣に来たん……え?」
ファレーナアントは ユウキ達を一斉に襲うため 取り囲みながら 一気に加速して襲い掛かってきたが ある一定の距離まで 近付くと ファレーナアントは 明らかにスピードが落ちる
グミ
「ハッハハハ!こりゃ 楽勝だな!」
グミは目の前にいるファレーナアントを 小さな手で 叩き落とす
ユウキも 目の前で動きの遅くなったファレーナアントを 木剣で叩き落とした
ユウキ
「なんで?急にこいつら 動きが遅くなったんだ?」
グミ
「へー!アルマは加護持ちか!」
グミは ファレーナアントを叩き落としながら話す
ユウキ
「加護?」
アルマ
「せや うちを攻撃しようとする輩は 強制的に遅延がかかるで」
グミ
「それだけじゃないだろ!随分 身体が軽く感じる 特に速さは 大きく上昇しているな!」
グミは やる気全開で バシバシ叩き落としながら答える
アルマ
「うちの味方には 全ステータス1.1倍 速さは1.2倍の補正がかかるで」
ユウキ
「よっと!そうなの?俺も上昇してる?あんまり分からんのだが?」
ファレーナアントの遅くなった攻撃を避けながら 答える
グミ
「お前は そういうステータスは低いからな そこまで恩恵はないだろ うーん 快適!身体が軽いぜ!」
アルマ
「そのかわり うちは戦えへんけどな」
ユウキ
「充分だ!ステータス上昇は 俺には分からないけど 近付いてくる敵が これだけ遅くなるのは 凄い能力だ!」
アルマ
「やろ?もっと褒めてええで」
ユウキ
「でも 動きが遅くなっているだけで 止まっている訳じゃないからな ちゃんと警戒してろよ アルマ!」
アルマ
「大丈夫 大丈夫 それでも うちを攻撃しようとする輩は………」
1匹のファレーナアントが アルマの視界外の背中から 遅延がかかりながらも 尻尾の先端についた毒針を刺そうとする が…
アルマの背中に触れた瞬間 ファレーナアントは硬直して止まる その後 軋む音を立てながら 尻尾から 徐々に白くなっていく
アルマ
「………石化するんや」
ファレーナアントは 全身が白くなった後 地面に落ちる そして 落ちた衝撃で3つに割れてしまう その後 形を維持することなく砂と化した
ユウキ
「ええ!?す…すげぇ…」
アルマ
「ってことやから うちのこと気にせんで 前向いて気張りや」
ユウキ
「ああ!よし!これなら余裕だ!ドンドン来い!」
ユウキとグミは 向かってくるファレーナアントを バタバタと落としていく しかし…
グミ
「……まずいな…いくらなんでも こんなに早く警戒されるとはな…」
ファレーナアントは 初めこそ 勢いよく一斉に襲い掛かってきたが 最初の群れを難なく全滅させたことにより 警戒を強め 襲ってこなくなっていた
グミ
「……ちっ…1匹も襲いに来なくなっちまった………なぁ アルマ 電撃もダメか?」
アルマ
「あかんで どの属性魔法でも使ったら 鉱石の質が 変わってまうからな」
グミ
「……ちっ…めんどくせぇ…」
アルマ
「とにかく もうちょい数減らすで ほら ユウキ 行ってき」
ユウキ
「行ってこいって?………どこに?」
アルマ
「はぁ?見たらわかるやん 天井や はよ飛んで叩き落としてきてや」
ユウキ
「……あ…俺……飛べないよ?」
アルマ
「またまた…つまらんで そんな冗談」
グミ
「嘘じゃないぞ ユウキは飛べない」
アルマ
「……う…うせやろ…ゴムドのじじぃがビビる存在やのに…」
ユウキ
「それはわからんが とにかく 俺は飛べない 魔力も全然ないしな!」
ユウキは 腰に手を当て開き直る
アルマ
「……ま…まぁ…ええわ… 全然数減らしてへんけど もう 襲い掛かってこうへんやろ…他の連中呼んでくるわ」
アルマは 入って来た入口に戻り 扉越しにゴムド達に呼びかける
アルマ
「もう入って来てええで」
ゴムド
「??……反応が多いぞ…アルマ どういうことじゃ?」
アルマ
「あかんねん めっちゃ警戒されて 天井から降りてけえへん…」
ゴムド
「……妙じゃな…ファレーナアントは 縄張り意識が強い…もっと攻撃的になってもおかしくないのじゃが…まあ…よい…とにかく 入ってみようかのう と…その前に……ミナ殿」
ミナ
「え?はい?」
ミナは トコトコとゴムドに寄る
ゴムドは ニコッと笑い ミナの頭に手をかざす すると ミナの身体が淡い白い光に 包まれる
ミナ
「わ!こ…これは?」
ゴムド
「ちょっとした結界じゃ こういうのは苦手なんじゃが 無いよりマシじゃろう しかし わしらの中心にいるようにな」
ミナ
「ありがとうございます!中心にですね 分かりました!」
ゴムドは 孫を見つめるような優しい笑顔で頷く
サヤカ
それじゃあ 中に入りましょうか ………って エミリ?」
エミリは 伏し目がちに小さく不気味に笑う
エミリ
「……フッフフ…天井に張り付いている…か…これで 全然目立っていない私に 脚光が……あ…サ…サヤカ う…うん!な…なんでもないよ 分かった!行こう!」
そして ゴムド達は ユウキ達の待つ大広間に入って行った