第109話 悪い知らせ
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サヤカ
「………うわぁ…ひ…広い…馬車の中とは思えない……まるでホテルの一室だわ……」
ハデス
「どうぞ お好きな席に お座り下さい」
ユウキは 見渡した後 奥の席に座る
ユウキ
「………おお…すげー…フカフカの椅子だな」
サヤカも ユウキの隣に座り その間に グミが浮遊する
ハデス
「さて 到着するまで 何か飲まれますか?ちょうど コールドラゴンの生き血が 手に入りましてね」
サヤカ
「い…生き血!?」
サヤカは 椅子をガタッと鳴らせ 強張る
ハデス
「ご安心を 絞りたてで 鮮度は 最高ですよ」
ハデスは そう言うと グラスをユウキ達の前に置き 真っ赤なワインのような生き血を グラスに注ぐ
グミ
「へー…コールドラゴンか……懐かしいな…」
グミは 器用にグラスを持ち 一口飲んだ
グミ
「………うん これは かなりの上物だな…」
サヤカは グミの反応を見た後 恐る恐るグラスを 持ち上げたが…
サヤカ
「………だ…駄目…む…無理…」
サヤカには 飲む勇気が出ず そっとグラスを置く
ユウキは サヤカの様子を見た後 このままでは せっかく用意してくれたハデスに 申し訳ないので グラスを掴む
ユウキ
「………くっ…」
グラスに入った生き血を見つめ 意を決して 一口飲む
ユウキの口の中に含んだ生き血が 熱を帯びているような えぐ味が 大暴れする
ユウキ
「………うぐ…」
ユウキの顔は みるみると青ざめる 今にも 吹き出しそうになるが それでも 口に含んだ生き血は 気合で飲み込んだ
サヤカ
「………どう?」
サヤカは 心配そうに ユウキを見つめながら 問う
ユウキは 半分 涙目になりながら サヤカを見つめ 首をゆっくりと横に振った
ハデス
「…………どうやら お口に合わなかったようですね……それなら…これならば 満足頂けるかと…」
ハデスは コールドラゴンの生き血を置き 自信満々で 奥に向かう
その様子を 未だに変な震えが止まらないユウキは 心配そうに見つめる
ユウキ
「……や…やばい…やな予感しかしないんだが……」
サヤカ
「……ええ…ハデス王とは 味覚が違いすぎるわ……」
ハデスが 奥から出てくると 両手で大事そうに ドロドロの液体の入った 半透明なビンを持ってくる
ユウキ
「!!!…い!?」
ハデス
「フフフ……さすがに驚きましたか?……そうです お察しの通り コンドルムの体液です」
ハデスは 新しいグラスを ユウキ達の前に置き コンドルムの体液を注ぐ
ユウキ
『…う…うぐ…な…なんだ…この匂いは……』
見た目も ユウキにはきつかったが 何よりも その液体から発する 鼻をつんざくアンモニア臭に思わず 逃げたくなる
サヤカ
「ハ…ハデス王 も…申し訳ございません もう飲み物は 結構ですので……」
ハデス
「……あ…そう…ですか……それは…残念です……」
ハデスは どうやら この日の為に用意したようで 全然気にいってくれなかったことは 明白なので 実は 本気で 落ち込んでいた
グミ
「お?なんだ ユウキはいらないのか?だったら 俺 もらっていいか?」
ユウキ
「いいぞ………ところで これらは貴重なもの?」
グミ
「ああ!もちろんだ!最高級品だぞ そもそも 中々手に入らねーよ 特にこのコンドルムの体液なんて まぼろしともいわれる一品だ さすが 王 だな!」
サヤカ
「………そっか…なんだか悪いけど…飲めないものは飲めないよ……あ…グミちゃん…わたしのもどうぞ…」
グミ
「お!やった!!」
グミは満面の笑みで ユウキとサヤカの分も 嬉しそうに 飲み干した
ハデス
「さて 帝都に着くまで 少しお伝えしたいことがあります」
そう言うと ユウキの向かいの席に座り 指をパチンッと鳴らす すると 馬車の中の空気が ガラッと変わった
ユウキ
「ん?……この雰囲気……これは…」
グミ
「……結界だな…それも かなり強力だ…」
ハデス
「どこで 誰が聞いているか分からないのでね」
グミ
「……ふんっ 今の所 てめぇが 一番怪しいんだよ」
ハデス
「ハッハハハ 手厳しいですね…さて まず 悪い知らせから お話しましょう」
ユウキ
「悪い話?」
ハデス
「ええ ユウキ殿達が 世界樹へ行っている間に 第4の塔が 占領されました」
ユウキ
「!!………守れなかったのか…」
グミ
「………なぜ 取返しにいかない?俺は 封印から解放されて間もないが 天使共に蹂躙されっぱなしってのが わからねー…むしろ 個々の力は お前ら地獄側が 遥かに上だ なんで そこまで弱気なんだ?」
サヤカ
「うん それ 私も不思議に思ってた…」
ハデス
「……天使側に 情報が流れています それも 王クラスしか知りえない情報さえも……」
ユウキ
「そ…それって つまり…王の誰かが 情報を流しているということ?」
ハデス
「それは はっきりとわかりません しかし 何らかの方法で 情報が流れているのは事実 そして もし 王の立場の誰かが 戦場で 天使側についたら それに呼応する者は必ず出ます そうなれば 塔の奪還などすることは不可能 それだけじゃない そんなことになれば 元々 それほどまとまりがない連中です もう アモン王子の命など 聞く者も 減ることになるでしょう」
ユウキ
「……負ける戦いは 絶対出来ないってことか……」
ハデス
「ええ………今まではね」
サヤカ
「今までは?」
ハデス
「そうです ユウキ殿が 持ち帰って頂いた 世界樹の実 それさえあれば 戦いに負けたとなっても 天使側に呼応するものは減りますし 逆に 参加を見送っていた部族長は アモン王子の要請に答えるものは増えるでしょう」
サヤカ
「こ…これに そんな力が……」
サヤカは 世界樹の実を取り出し 見つめた
ハデス
「!!!そ…それが 世界樹の実…ですか…」
ハデスは サヤカの持っている世界樹の実を 目を大きく開き 見つめた
ユウキ
「……ハデス王 ひとつ 聞きたいことがあるのですが…」
ハデス
「………!あ…はい なんでしょうか?ユウキ殿?」
ユウキ
「……俺たちの存在は 時間が経てば 復活することを知っていますか?」
ハデス
「復活?……ああ なるほど…ええ もちろん知っていますが…しかし 我らは それを復活したと考えていません 姿は 同じかもしれませんが 中身は 全ての記憶を失っていますからね…別人という認識です」
サヤカ
「で…でも 姿 形は 同じなんですよね…だったら…」
ハデス
「……そうですね サヤカ殿の気持ちは分かりますよ ですが 見ての通り 我らは多種多様 見た目など正直どうでも良いのです それに ここでの経験により 生まれた出で立ちとは 全く違う姿になる者も 多数いますので」
ユウキ
「………そういうことか でも 中には 数百年待っても 会いたいと思っている者も いそうですけど……」
ハデス
「もちろん いないとは言い切れませんが…そういった感情は 少しずつ 風化していくものです…残念ですが…」
サヤカ
「で…でも!…これが あ…!!」
ユウキは サヤカの太ももにそっと手を置く
サヤカはそれに気付き ユウキを見ると ユウキは 小さく顔を横に振った
ユウキには どうしてもハデスを 信用しきれなかった 偽りを言っているとは思えないが 全ての事を 包み隠さず 言っているとは思えなかった
まだ ハデスに世界樹の実の効力まで 話す必要はない それに そんな効力が本当にあるのか確証もないからだ
ハデス
「?……どうかしましたか?サヤカ殿?」
サヤカ
「い…いえ なにも…」
ハデス
「そうですか?……では 次は 良い知らせです」
続きが気になる方 高評価よろしくお願いいたします