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プロローグ ある英雄の物語
かつて、この世界を救った勇者がいた。
彼は愛した。
異なる世界からやってきた彼は、生まれ故郷よりもこの世界を愛した。
魔王を倒し、世界を救ったあとも、彼は元の世界に帰ることなくこの世界に留まった。
彼は老いた。
そして、彼の老いとともに、世界も少しずつ変わっていった。
彼の働きで平和になった世界に、徐々に争いの火種が現れた。
彼は憂いた。
再びこの世界が戦火に見舞われようというときに、立ち上がる力すら残っていなかった。
彼は考えた。
自分がいなくなったあとも、この世界を救う術を。
そして、彼は"それ"を『創作』した。