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【町に出よう】

なんかいきなり暑くなってきた今日この頃。

そろそろ扇風機が恋しいデス。

昨日の一件のあと私は明日は朝早いからとすぐに寝室へと連れて行かれてしまった。

私のわがままゆえ多少なりとも罪悪感が募るが、それでも明日のことを思うとうかつにも胸を躍らせてしまう自分がおりそれを自戒するのに大変で寝れるのだろうか、と不安に思っていた。

が、気が付いてみれば眠ってしまったのか、朝日が顔を出していた。


時間的に私の横で寝ている母上達はまだ起きていないようだった。

普段であればもう一度眠りに入るかどちらかが起きるまで布団で待つのだが、もう一度寝るには今日のことを考え気持ちが高揚しすぎて難しそうであるし、待っているだけというのも妙に気持ちがそわそわしてしまうため私は母上達を起こさないよう寝具から抜け出すことにした。


一人静かに身支度を整え居間に行く。

とはいえ残りの時間をつぶす程何かすることがあるわけでもなく昨夜オババにもらった人間世界の歴史書をぱらぱらと開く。

別に人の居る町に降りるからといってあらかじめ予習、というわけでは決して無い。



ふと視線を母上が普段料理を作っている場所へ視線を向けるとそこに見慣れない黒い液体が入ったビンのようなものが置かれていた。

台所、という調理場に置かれているのだから飲み物ではあるのだろうが私はそれを今まで見たことが無かった為一気に興味が惹かれ開いていた本を閉じ台所へと足を運んだ。


ビンのふたを開け中の液体を覗き込んでみる。

ふわっと芳ばしさとその中にかすかに酸味のような匂いを感じる。

なんとも食欲のそそられる匂いである。

特にすることの無い状態の今この黒い液体の正体を知ることは丁度いい時間つぶしになると判断し、すぐにコップを用意しビンの液体を注ぐ。

丁度コップ一杯分注がれていくその黒い液体を眺めふと既視感を覚えた。

行儀は良く、とコップを手にテーブルへとついたときその既視感の正体に気がついた。

昨日の水晶球の中の魔力に似ているのだ。

無論あちらは魔力そのものでありこちらは液体と直接関係が有るものでは無いだろろうがそれでも似ているのだからまったくの無関係ということも無いだろう。

私はいくらかの期待を胸にそれをあおるように一口喉に流し込んだ。


うむ、もともと香っていた芳ばしい香りは鼻を抜けるとより一層・・・いっそう

「・・・、・・・・・・っ!!!???」


一体何が起きたというのだろうか、思わず持っていたグラスを乱雑にテーブルへ置き睨みつけてしまった。

口に入れた瞬間までは良かったのだがその後から口の中がゆがみそうになるほどの刺激が襲ってきた。

今更ながら、コレは本当に飲んでいいものだったのかと不安になってしまう。


と私の不安をよそに寝室のほうからなにやらどたばたと音がしたと思ったらなにやらあわてた様子で母上が居間にやってきた。

何事かとほうける私をよそに母上は私を見るなり目じりに涙を浮かべいきなり私に抱きついてきた。


「ルーダ!ああ、良かった起きたら居なくなっているから何かあったのかと・・・」


「そんな母上、大げさです」


とは言いつつも、昨日と同じ様に強く抱きしめる母上をなだめるようにそっと抱きしめる。

人間の母親というのも難儀な物だなと実感させられる。

しかし、それも悪くないと思ってしまうのは私が肉体だけではなく精神的にも人間に寄ってしまっているからかもしれない、とどこか他人事のように思ってしまう。



未だ私を離すまいと抱きしめている母上をあやすように背中を優しくなでているとまたもや寝室からどたばたと喧騒が聞こえ始める。

まぁこの流れを見るに父上も同じように


「だ、誰も!?あ、ああ、お前らここに・・・よかったぁ」


凄まじい剣幕、それこそ過去の私と戦っていたときよりもより険しい表情で寝室から出てきたと思えば私達を見るありその場にへたり込んでしまった。

我が親ながらにいささか子煩悩というかなんと言うか。

いや、他の子供の親の様子というものを確認したことは無いゆえ本当にそうかと問われれば確かでは無いが、少なくとも私からしてみれば父母どちらも甘やかしすぎのように感じてしまう。


二人が落ち着くまで抱かれるがままでいた私だがいい加減同じ姿勢でいるというのにも疲れてきた。

それに町に出るというのにこんな様子じゃいろいろと先が思いやられてしまう。


「あの母上、そろそろ・・・それに父上もお時間大丈夫ですか?」


私を抱いたままの母上と、その近くで力なくへたり込んでいる父上に声をかける。

と、いうより私としては準備はすでに終わっているのだから父上母上が起きてきたというのなら無駄に時間をつかっているよりはなるべく早くに外に出たいというものである。というのが本音である。


「はっ、そうだ準備しないと」


「あ、ああっ、そうよ今日は皆で町に行くのだものね・・・ルーダもしかしてそれで?」


父上は私の言葉を聞くなり身支度を整えようと水場へ急いでいったが、なぜか母上だけは言葉では準備をしなければ。という風をかもし出すも依然と私を離そうとはしなかった。

それどころか、なぜ今日に限って私が布団を抜け出したのかを明らかにしたいようだ。


どこまで子煩悩なのか、一体何が母上をそこまでしているのか気になるところではあるが聞くのも何か面倒な気がするのは勘違いでは無いだろう。

とはいえ聞かれたことには返答しないことには母上は放してくれそうにも無い。


「ええ、まぁ。今日が楽しみで目がさえてしまったもので」


「もう、そうならそうで起こしてくれればよかったのに。本当に心配したのよ?」


私の返答を聴いて納得したのかようやく私を離してくれた母上だが、心配したとは軽く言っていたがあれは目は本気だった。

事実、準備のために台所へ立った母上はしきりに「誘拐とか、家出とか・・・索敵に印でもつけとか無いといけないかしら・・・」とつぶやいていたのを私は聞き逃してはいなかった。

これから母上の過保護には気をつけないといけないい、なまじ魔法のあまり種類の無い父上より本職の母上の方が何をされるかわかったものでは無いから気をつけるに越したことは無いだろう。



父上の身支度が終わり居間に来たころには簡易的な朝食の準備を母上は終えていた。

それを手伝いに為にテーブルに運ぶ際に私もすっかり忘れてしまっていた物の存在を目にする。

あの黒い液体である。

しまった、と思ったときにはすでに母上は残りの食事を手にテーブルまで来ていてしまっていた。


「あら?コレは・・・?」


「あ、えと、その母上」


私と視線を同じくする母上の私は思わずしどろもどろとしてしまう。

咄嗟のことで思考がうまく働かなかったが私としたことが我ながら愚行をしてしまったと、後悔は先に出ないものである。

まぁ、この場合もっともの愚行はあらゆる可能性を考慮することをも忘れ好奇心に負けてしまったことなのだろうが。


「ルーダこれ貴女が出したの、飲んだ?」


「え、あ、その、申し訳ありません。台所にあったので飲み物かと思いつい、し、しかしほんの一口ですし、特に体に以上もありませんし・・・どの様なものか確かめなかっ」

「え?いや、いいのよ?ルーダ?これ飲み物で違いないし、ただ子供の貴女にはまだ早いかと思ったのだけれども、おいしかった?」


「えっ?・・・い、いえ酸味やら苦味やらでもう口の中が・・・強いて褒めるとすれば香りくらいなもので、薬の類では無いのですか?」


まさかこんなものが本当に飲み物だというのだろうか、子供には早いということは人間の大人というのは個のような物を嬉々として飲むというのか?下手をすればいづれ私も飲まされるというのか?

そんなはずは、と母上に一縷の望みとも言える『飲むは飲むけれど、必要時に限る』そう、良薬口に苦しである可能性を母上に問う。


「ん?いいえ、コレはコーヒーって言ってただの飲み物よ?」


なんと言うことだろう、今までが私好みの食べ物飲み物しか口にしていなかったということか。

いや、少し考えれば気づけたことであろう。

前生では料理というものに触れていなかった分、今生では食したもの全てが新鮮で考えないようにしていたのかもれない。

美味しいのがあるのなら美味しく無いものも当然のごとくあるだろう事に・・・。


「でもまぁ、一日経っちゃってるしそれにこのままじゃあ大人のお母さんでもちょっと飲みづらいかなぁ」


ん?母上は今なんと!?

もしや、この暗黒飲料物が何かすることで美味しくなるというのか?

い、いや、安易に好奇心を奮い立たせるものでも無い、先はそれで痛い目を見たのだからここは自重しておくべき。

だがしかし・・・


「おし、準備完了だぞ」


「あら、じゃあパパも大丈夫みたいだしご飯食べたら出ましょうか」


「おう、そうだな・・・?どうしたルーダ?」


私がコーヒーを睨みつけ悶々と考え込んでいるうちに準備の終えた父上がやってきた事でいよいよ町に出る時間が迫ってきた。

いや、朝早くからこの時を待っていたのだが、ううむ、コーヒーのことも気になって仕方ない。

・・・よし、物事には順序というものがある、今回は町に出ることに意識を向けるべきだ。

うむ、そうしよう


「いえ、父上何も、早くいただきましょう」


「?おう、そうだな」


父上は百面相な私に首を傾げて見せたが、早く。とせかすことでうやむやにする。

さぁ、今一時はコーヒーのことなど忘れ、目の前のことに集中しなくては。

そう思い、私は母上の用意してくれた朝食を口に運びそこにあった飲み物で喉に流し込んだのだった。



っ!?苦いっ!?なっ、コレはコーヒー!

しまった、そういえば結局片付けてはいなかった。

あわてる私を見て驚く父上に状況を説明する母上、二人は私を見て面白そうに微笑んだ後そろってこういった。

「やっぱりルーダもまだまだ子供だな(ね)」


二人の言葉に恥ずかしさからなんだかいたたまれなくなった私は、うつむき黙って食を進めるのだった。

・・・前途多難である。

皆さまも熱中症や脱水、日射病にお気を付けください。

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