表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ

ゴールデンウィークに本格的に入る前にプロローグだけ投げときます。

気に入ったらなんかブックマークとかよろしくお願いします。

「どうしてこうなったのだろうか・・・あの時私は確かに勇者の一行に倒されたはずなんだがなぁ・・・」


世界を支配していた魔王が勇者によって討たれてから約六年。


魔王が魔族全体の統括していたがその実、人間に対しての存在は脅威としてではなく抑止力として存在しており随所での争いは少なくはなかったものの、それでも殺伐としたものでもなかった。


しかしそれがなくなったことにより世界は混沌へと落ち込んでしまっていた。



魔王は最終決戦時、この場所で討たれるのも世界の意思かと静かに受け入れた。


しかし、気がつくと眼前は光りに包まれ、目が覚めたときにはなぜか人間として生まれなおしていた。

それも自分を打ち倒した勇者の子供として・・・





時は遡り、六年前


「魔王様、もうそろそろ此処に勇者一向がやってまいります・・・私以外の四天王も・・・」


「討たれた、か。皆良い者だったのにな・・・惜しいものよ、たかが私程度の我がままに付き合ってくれなんぞせねば・・・貴殿ももう行くといい。ここで終わるはもう私だけで十分さな」


「それは違います魔王様。魔王様のおかげでここ数年は人間界も魔界も平和でしたが・・・人間の固定観念も横暴さを極めてしまいましたから・・・」


数十年連れ添ってきた側近と残り少ない時間を過ごす。


おそらく私は此度の戦いで命を落とすことになるだろう。

未練があるとすれば、それは人魔統一し世に仮初とは言えども人間にとっても魔族にとっても在り来りな平和をもたらしたかったことぐらいだが。

まぁ、それは次代の者にでも託すとしよう。

今の私の役目は一つの時代に終わりを告げる礎になることのみ。



「・・・魔王様、やはり私も残って」

「ならん、貴殿までいなくなってしまっては私がいなくなった後の魔族側の統制がなくなってしまうだろう?」


「っ・・・魔王様も最後に酷なご命令をなされる。では私は自身の使命が終わりしだい魔王様の元にはせ参じるとしましょう・・・・・・では、また」


『また』か、その時はお互いあの時は、などと笑い話でもしたいものだ。


側近が転移を使い城から去ったのと時を同じく王の間の大扉が開かれる。


問題なく時間までピッタリの予想通りだ、前口上はすでに考えている。

勇者のパーティーは魔法使いに拳闘士、女僧侶に剣士の5人

さぁ、最終ステージを始めよう



「お前が魔王だな?」


現れた5人の人間の先頭に立ついかにもと言った風の奴が問うてくる。

私は思わずくつくつと笑いをこぼしてしまう。

あまりにも予想通りの展開に我ながら計算能力の高さに感心してしまう。


「いかにも、私が魔王エルスルーダだ勇者諸君」


私の一言に一層身を硬くする勇者達。

向き合う空間に室内にも関わらず風が巻き起こる。

お互いの魔力同士がぶつかり空間を震わせている。


数で劣るため出方を伺っていたが、それは勇者達も一緒かとこちらから仕掛けることに。

ゆっくりと掌を先頭の勇者に向け歓迎の意もこめてそこそこ魔力をこめた爆炎弾を放つ。

あたり一面は激しい炎に包まれ広い室内が黒煙で埋め尽くされていく中、その炎と煙を割って一迅の風が私を切り裂かんと向かって来た。


しかして、その一閃は私の常時展開している対物理・魔法障壁に衝突し激しい光と暴風を放つのみに留まる。

が、その暴風のおかげで煙ははれ視界が明ける。


無論その一閃を放ったであろう勇者達は私の辺り一面を燃やし散らす爆炎を受けたにも関わらず無傷で構えを取っている。


なかなかに、ここまで来た猛者だけはある。

いや、正直それぐらい出来なくては話にならない。など思いつつも素直に関心しておく。


とはいっても勇者達の実力は把握済みで、この展開は予想範囲内でありすべて概ね予定通りに進んでいるのだ。


あえて言うのであれば、ここに来るまでに私の配下と戦ったせいか多少地力が向上していたことぐらいが想定外だった、と言うところだろう。

私の予想では今の一撃で多少なりとも魔力の消費を、と考えていたのだがほとんどの魔力消費もなしに容易に防がれあまつさえ反撃を許してしまったのだから。


兎にも角にも、その一瞬、一撃をもって私と勇者達との最終決戦の幕が開けることとなった。



お互いの攻防は熾烈を極めていた。

勇者達は見事なコンビネーションでもって私を攻めて来る。

徹底された後方支援の僧侶と魔法使い、その支援のおかげか私の強撃に怯むことなく仕掛けて来れる3人の勇士。


なるほど、お見事、流石だ。としか言えないものである。


お互いに攻め合いをしているはずなのにこちらは小さいながら傷がふえる一方、向こうは僧侶もいるお陰かダメージを受けてもすぐに回復する次第である。


こちらは攻撃を防ぎつつ隙を見て回復するしかないと言うのに。

救いがあるのは魔法使いの防壁を持ってしても私の攻撃は防ぎきれないということぐらいか、防御の差がそのままダメージ量の違いに繋がりまだ戦いが続けていられる。


「ふむ、なかなかやるじゃあないか」


思わず感嘆の声を漏らしてしまう。


「喋っている暇があるのかっ、邪悪の化身めっ!!」


その言葉に反応して勇者が声を上げ、1人突き進んでくる。

おや。と思うのもつかの間背後から二つの気配、拳闘士と剣士が同時に攻めて来る。


とっさに、ではあるが後方へ多重物理防壁を展開、前方の常時展開型の防壁が勇者の一撃に破られないよう魔力を込め強度を上げるのを怠らずに後方にも意識を向け随時多重防壁を展開し3人の挟撃を防いでみせる。


空間感知魔法と魔力感知魔法、そして自慢ではないが私の高速演算のなせる防御技術であろう。

現に勇者達も攻めあぐねているせいか苦々しい表情を隠さずに出している。


正直な話、別段ここまで意地汚く耐える必要がある訳では無い。

ここに勇者が来た以上どちらかが倒されない限り人と魔族の争いは止まらない。

が、私自身あまり殺生を好まない故、勇者達が来たのなら倒されてもいいと、それでしばらくは争いが収まるのならそれでも良いと思っている。


しかし、ただただ何事もなく私が殺られてしまうのでは人間が持っている魔族全体の認識が、恐れるに値しない弱い存在なのだと思われる可能性がある。

そうなると人間の中でも愚かな思考の持ち主はその傲慢さを増長させ魔族を滅ぼさんと大規模な戦争を仕掛ける恐れも少なからずある。


それは私の望むものではない。

故に少しばかり苦戦を強いて、魔族とは恐ろしいものである。

と勇者達に思わせる必要があった。


だが、予想以上に勇者達が強いものだから加減も難しく思わず崩すことの難しい防御技術を見せることとなってしまったのはかなりの想定外だった。


決め手に欠けお互いが様子を見ている状態で、何とかギリギリ負ける。という状況に持っていきたいところなのだが、どうすればいいかとここに来て大きく悩むことになろうとは、な。

などと考えているとそれは訪れた。

連携重視で単体で攻めていてはジリ貧だと見越した勇者達が最初に現れたように一つにまとまっていく。

恐らく何らかの複合技でも仕掛けてくるのだろう、とは予測できる。


だが、それはこちらに取っても好機であり、ここで一つの高威力の魔法をぶつけつつ、わざと隙を見せようと私は画策する。

となれば善は急げ。である。


集った勇者達に向け片手を上げ掌中に強大な魔力を込めていく。

するとその魔力は光をも飲み込むほどの黒い球体へと変化していく。

その魔力量に驚きの声を上げる勇者のパーティーメンバーの魔法使い。

さらに私は掌の純粋な魔力に火炎に変換した魔力をも込める。

それは膨張すること無く一点に集中、圧縮され続け黒い球体から直径5cm程の光球へと姿を変える。


それを見てまた一層防壁を強固な物へと変える魔法使い。

さすがは勇者の一員である。

一目でこれがどんなに恐ろしいものかを理解したのだ。

だが安心するといい、威力は調整し君たちであれば多少のダメージはあれど死にはしないだろう。

そう心の中で私は呟き、その光球を勇者達へと向けて放ったのだ。



超神星(プロヴィデンスノウヴァ)

そう名付けた超魔法は私のオリジナル魔法であり、数種あるうちの絶技の一つである。

最初に作ったのは重力魔法の檻、その中に莫大な量のエネルギーを込め、それを同時に圧縮もすることで逃げ場を無くし1箇所に集められたエネルギーは威力を増して行く。

そしてそのエネルギーが臨界点に達すると重力の殻をも破り、光の粒子となり触れるもの全てを崩壊させていく、と言っものである。

檻の強度、それと込める火炎エネルギーによって威力の調節がしやすい為、1番使い勝手のいい大技である。


その光球は魔法使いが展開した対魔法防壁に触れた瞬間当たりを眩い光に包み込み衝突地点から半径2mの範囲を瞬く間に分子レベルで崩壊させていった。


正直耐えきれるであろうレベルでそれを放ったのだが、その結果を受け少し後悔している私がいた。


見た限りでは強度の高い防壁だったため魔法使いが展開した防壁からそちら、勇者達側へはそこまで酷い崩壊波はいっていないであろう、と思っていたのだが。

衝撃で室内は土埃が舞い、視界が塞がれきちんとどうなったかは見れないが私が常に発動している空間・魔力感知魔法から確かに五つあったうちの三つの反応が完全に消えたのである。


なんということだ、思わず自分の感知魔法を疑ってしまう。

しかし確認すれば確認するほど反応が無いことが明確になるだけであった。


ここに来て今まで概ね計算通りに運んで来た展開が全て瓦解してしまったことに頭の中がグルグルと混乱を始め上手く考えが纏まらなくなってしまう。

この状態でどうやって自身の敗北まで持っていくのか、と言うよりここまで不殺を念頭に置いて生きてきた今までの私の人生がパーだ。

ではどうする?ここまで来たらいっその事敗北ではなく恐怖で世を支配してしまった方が?とも頭を過ぎってしまう。


しかし恐怖による支配は長く続かないというし、どうしたら良いのか。

ではここに来て、わざとらしく負けてみるか?それとも次回に持ち越すという手も・・・それでは時間がが掛かってしまうか。


などとグルグルグルグルと思考を巡らせていたところ、背中から腹部にかけて鋭い痛みが走る。

何事か、と背後に視線を向けるとその答えがわかった。


消えてしまったと思っていた3人の内の剣士が私の体に剣を突き立てていたのだ。

そして、その剣士を見た瞬間何故反応が消えたのかも理解出来た

なんてことは無い、空間感知をすり抜けるために透過魔法(ステルス)魔力感知を誤魔化すために感知妨害(ジャミング)を併用していただけである。


両方とも視覚認識してしまえば意味の無い魔法である。が、その唯一の欠点も私の超神星プロヴィデンスノウヴァによって一瞬の死角を作ってしまったわけである。

なんだか考えてみれば当然の戦術ではないか、焦りすぎだ私。


だがつくづく私の計算の外を行ってくる頼もしい勇者達である。

そも、そうでなくては勇者とは呼ばれないのかもしれないが。


しかし、いつまでも刺されたままとも言えないので剣士に反撃を試みると驚くことに剣士の命とも呼べる剣を手放し私の近距離攻撃範囲から離脱したのだ。

恐らく何かしらの考えがあってのことと予測、ということは他の2人ももちろんどこかに潜んでいるわけで。と、視界の端で何かが掠めた。

拳闘士がその拳に激しい力を溜め今にも解き放とうと構えている。


視界に捕えられたことで透過・阻害魔法は意味をなくしその事で私は余裕を持って回避行動に映ることが出来る。

だが、それでも気づいたのが遅かったのかだいぶ無理な体勢、体をひねり空中で仰向けの体勢での回避になってしまう。

そして視線が上に言ったことで最後の1人、勇者をその視界に捕える。


部屋の屋上近くまで跳躍しその剣に凄まじい雷エネルギーを溜め込んでいた。

剣で刺されるぐらいでは死なない私でもさすがにあれは無理だな。と笑ってしまうほどのエネルギーである。


それにしても剣士が簡単に剣を捨てた理由もこれでハッキリする。

要は避雷針の役割を作るための布石。そして拳闘士、恐らくわざと私に見つかる様に位置取りしたのだろう逃げ道を塞ぐ為に。

素晴らしいコンビネーション、予想外と驚くのは奴らの地力の高さではなく数々の死闘の末培ってきたそのコンビネーション能力だったのだ。

私は満足し、なんの抵抗もなく、その勇者の一撃を。



受ける所まで紆余曲折あったがようやく来たのである。

ここまで全く予想外の連続展開ばかりで頭の中がパンクしそうである。

正直私でなければパンクしているぞ。


ここまで大掛かりな賭けは初めて、いや、そもそも賭け事はしたことないのだがね。

とはいえ概ね私の理想通りの展開になったとも言える。


簡単に負けてやることも、少し力を見せてから負けることも何ら問題は無い。


問題は無いのだがそれだけで終わらせてしまえば全力では無いにしろ私と渡り合えるレベルの勇者という兵器を人間の私欲の肥えた者に無傷で返すことになってしまう。


それは人間にとっての抑止である魔王がいなければ魔族が滅ぶのも遠い未来ではないだろう。

そうはならないためにも、勇者達に特大級の呪いを少しばかり贈ってあげようと思いたったのだ。

"罪悪感"という名の呪いを。



勇者の攻撃に合わせ私も魔法を展開する。

開くは初歩の初歩、相手に思念を送る意思共有魔法テレパス

それに少しばかり映像として記憶を見せるだけでいい。


見せるは我々魔族にも人間と同じように家族があり、親がいて子供がいるということ。

所詮は人間と姿形が少し違うだけで大きな違いなど無いに等しいのだ。


そして彼ら人間の勝手によって親を無くした魔族の子供がいること。

その子供ですら情け容赦なく惨殺されている、ということ。

それだけでいい、そして初めから私が彼らを殺すつもりなど無いという事さえ伝われば、心優しい勇者様の事だ自身たちの奢りに気づいてくれるだろう。


勇者達が変われば全ての人間が変わる。そうは思わないが勇者達が変われるのなら少なからずいつの日かは人間と魔族の共存は夢ではないということの希望にもなる。


所詮自己満足に過ぎないのかもしれないが、どうせくたばるのならそんな希望的観測の中で逝きたいものである。

まぁ、恥ずかしい話、結局私は責任という枷から逃げることを選んだだけなのだがね。


だが私はその希望はある、そう信じ意思共有魔法テレパスを勇者にむけ放つ。

それと同時に激しい雷撃が私の体を貫き、刺さっている剣を中心に私の体を焼き、焦がし散散らしていく。

眼前を走る雷の奔流に目がやられたった数センチ先をも見ることは出来なくなり、体の崩壊とともに視界に暗闇がかかっていく。


ああ、もう無理か。

そう思った時、霞む視線の中に後悔した様な顔をした勇者が見えた。

ああ、それだけで十分だそれだけで私は笑って逝ける。


私は激しく焼かれ焼失していく中、最後の瞬間を笑顔で持ってこの世から消え去った。




こうして世界に混沌と邪悪を蔓延らせていると恐れられていた魔王が勇者達によって討たれ、各国がこれを機に魔族掃討を謳うも勇者達がこれに否定的に出ることで掃討は行われることは無かった。

かくして、世は静寂の時代を迎え、死して尚も事は魔王の理想通りに進んだのである。


その後、最大の予想外の展開を迎える事になる以外を除いては。

ゴールデンウィーク開けたら本格的に投稿していきます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ