8/41
『半壊していく綴じ環』
齲蝕されたボールペンは虹の聲で矢を撃つ
対空内に約まるテガミは体内時計を網羅し
根を張りつつ貼り付ける暗黙知にさわやぐ
輸送すべき半死体は紙のツノをはやした己
輸液すべき予知夢は冷凍血液以前の不毛さ
其ればかりの縹渺つるみはてた葛を祓う晩
おしころした文身すら半壊していく綴じ環
左脚と右脚の舞踏が多元宇宙の緑陰を紡ぐ
ヒルナミンを罫線上にかまえ照準を躱わす
ちまなこの流れおちる先は小溟いギヤマン
四面硝子漬の皮膚が花序をわすれてゆく故
あたたかい湯に浸かり鋲螺を洗うまた胎芽
シャワー室はあかい水鳥で糢糊といっぱい
ペダンティックに眠る人間ハナビ刃傷沙汰
無影症となり凹凸を落葉させゆく自壊構造
だれの色をうつしているのかと鏡片を劈く
被葬のわたくしは春のひかりを彫琢する迄
すべての影に烽火していくだろうそれも愛
LOVE
其れだけのはなし