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『傷ばかりの初夏に忘れた釦』
ゆっくりと切りひらき結ばれたリボンは
第二関節まで結んでひらいて開架しゆき
秋の精霊が沈む瀞におきわすれてひとつ
二兎おうアドレナリンうずをまく廃螺旋
三つ首のソクラテス四面楚歌カタパルト
不死鳥属枯殺ふしょうぶしょう五十三次
惟神の石榑をほうりなげて黒髪青黛の君
情詩を矩形にのべてアイロンで孵化して
押し花にして傷ばかりの初夏に忘れた釦
かぞえうたは円環を描きウロボロスの鮪
しらないひとに付いていく核弾頭の下闇
刃こぼれしていく後頭部にうずめた懐春
あさきゆめみしくれなゐの棘を組織して
ばらいろの粘膜をきりきざむ一寸法師の
わたくしが君に碇をおくった冬は昔の海
LOVE
其れだけのはなし