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第三階層 水斬



「…ん?」

「どうした?」


桜郎は地面に落ちている紙を手に取った、どうやらそれはこの城の見取り図のようだ。


「……有り難い…」


見取り図があれば最上階へ行きやすくなる、なので俺は見取り図を見て、どうすれば戦闘を避けて最上階へ行けるか考えた。


「…………」


しかし、この城はどうやら今俺たちのいる二階からは同じ構造のようだ。


「…この上にある8個の大部屋全てに強いモンスターがいるとすれば……あと8回戦わなければならない……どうせ階段の前は壊されてるだろうしな…」

「戦は避けられぬか…」


そんな時に俺の脳裏に考えが過ぎった。あの悪神の事だ、おそらく俺たちがモンスターと戦っているのを見て楽しんでいるのだろう。


そして階段を完全に壊して先へ進めなくしないあたり、俺たちがモンスターを倒して最上階へ来るのを待っているのかもしれない。俺はその事を桜郎と蛇に言った。


「……何故だ?」

「…弱り切った俺たちが…目の前で眷属に殺されるザマを見たいんだろ……だとしたら悪趣味な野郎だ」

「ふむ…」

「モンスターも…俺たちがギリギリ倒せる程度の強さのモンスターだ…俺たちを直ぐに殺すつもりなら危険度SSSのモンスターでも召喚する筈だろ」


最上階で眷属に俺たちを殺させるつもりか、舐められたものだ。


「…悪神……歪んでおるな…」

「……逆に言えば…この先に待ち構えているモンスターは大した事ないという事だ」

「…………直ぐに殺さなかった事を…後悔させてやろうぞ」


俺たちは階段を登っていった、大した事ないといえど油断すれば死ぬ。気を引き締めていかなければ。



……



「やはり壊されているか…」

「しょうがない…この大部屋から通り抜けよう」


階段の前の廊下はやはり壊されていた。上の階のも、そのまた上の階のものも。


「…よし…開けるぞ…」


俺は大扉を開けて大部屋の中へ入った、中はさっきよりも広かったが、少し濡れているだけで何もいない。


「……油断するな…」

「ああ…」


蛇が桜郎を結界で包んだのを確認して、俺は大部屋の中心へゆっくりと歩いた。その刹那…


「……ッ!!」


触手のような形の水が飛び出してきて、水平に薙ぎ払いをしてきたので俺は横へ回避した。なんだこのモンスターは!?


「……水の妖か…」


水溜りが集まり、大きなスライムを形成した。スライム系か……


[スライムアーク]


危険度S

スライム系のモンスター、通常のスライムが大量の液体を取り込み、進化した個体。スライム系の中でも核の数が比較的多い。噴き出してくる水圧カッターは金属を容易く切断し、鞭状の触手は馬車を一撃で粉砕する。


「…スライム系は核を破壊しないと駄目だが……この数は…」


スライムアークの身体には15個の核があった。スライム系の中でも群を抜いて多いな。俺がどうやって倒そうかを考えている時、スライムアークは自身の体を巨大な鞭にして俺に振り下ろしてきた。


「ッ!!」


俺は間一髪避けた。大部屋にはバケツに入って水を思い切りアスファルトに叩きつけたような音が響いた。馬車を一撃で粉砕する威力、危なかったな。


「…だが……意外とすぐに攻略方法が浮かんだぜ…!」

「……ほう…」


蛇の近くへ行き、俺は作戦を伝えた。蛇は「任せておけ」と言った。


「………せいッ!!」


俺は作戦を伝えるとスライムアークとの間合いを詰め、核を狙って刀を水平に振った。するとスライムアークは核の数だけ分裂した。


「クソッ…マジか…!」


小さなスライムアークは小さな刃となって俺に襲いかかった。この数は、ヤバイな。受け切れない……!


「くッ……」


15発目の斬撃を受け流した俺はその場で怯んだ、スライムアークはその隙を見逃さず、直ぐに集合した。


「……ッ!!」


そして巨大な鞭となり下段薙ぎ払いをした。俺は何とか飛び上がって避けたが、スライムアークはそれを待っていたかのように、体をさっきよりも長い水の鞭に変えて、俺を粉砕しようとした。その瞬間……


「…………これなら斬れる…!」


蛇がスライムアークよりも上に飛び上がり、スライムアークを一刀両断した。スライムアークは鞭になる時に自分の体を細める。その時に核が一列に並んでいた。俺はそれを見て作戦が浮かんだ。


「……よし…!」


スライムアークの核は全て破壊された。するとスライムアークはその場で弾け飛んだ。


「………やったな…」

「ああ…」


俺の作戦は単純だ。俺がスライムアークを鞭状にさせて、蛇が真っ直ぐに斬る。鞭状になったスライムアークは自分の体を細めなければならない為、核を一列にする必要がある。


その時を狙って両断すれば一太刀で倒す事ができる。通常時に斬ろうとすると、核を斬られまいとバラバラに配置するので斬り辛いし、カウンターを喰らうかもしれないからか。


「倒したのか…?」

「…はい……」

「……それじゃあ…この調子で進もう」


水溜りを見る桜郎を呼び、俺と蛇は刀に付いた水を払って上へ進んだ。

















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